アナザー:ロミオとシンデレラ 第五十三話【エンチャンテッド】
リンは家のことがあるので、つきあうといってもあまり派手なことはできない。とはいえ、できる限りは一緒に過ごしたい。俺はリンと相談して、昼食を一緒に食べることにした。急に二人きりになるのにはクラスの目があるので、初音さんとクオも一緒だ。クオは当初むくれていたが、数回でなれた。それになんだかんだ言って、昼食中は結構楽しそうに初音さんと話をしている。
これも相談して、月に一度、日曜にデートすることにした。回数が多いとごまかすがの難しくなるからだ。行き先なんて公園や図書館でもいいから、もっと会いたかったが、状況が状況なので贅沢は言えない。
リンは出る度少し不安そうだったけど、俺と一緒にいる時は概ね楽しそうだった。
三月に入って二度目の日曜日、俺たちはデートで映画館に来ていた。場所は都心のシネコンである。リンは物珍しそうに辺りを眺めていた。
「わたし、映画館って入るの初めて」