周雷文吾の投稿作品一覧
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13.
まずい。
いや、なにがまずいって、半年も更新を途絶えさせてしまったことだ。いや違う。半年どころではない。違う違うそうじゃない。また話をなにも進めないままに一話を費やしてしまったことだ。
確かに、読者の皆さんが考えている通り、実際にはグミが泣き出した直後なので、半年とか一体なにを言って...Japanese Ninja No.1 第13話 ※2次創作
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12.
「じゅるるるるっ、ずびーっ、もぐもぐごくん。じゅるるるるっ、じゅるるるるっ!」
翌日、昼休み。
巡音学園の食堂にて、私の目の前に座るその子――るかは、周囲に醤油トンコツのスープが飛び跳ねるのもお構いなしに、すさまじい勢いで麺をすすっていた。しかも、かれこれ三十分ほどその騒々しい音をエン...Japanese Ninja No.1 第12話 ※2次創作
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11.
シュパン、という空気を切り裂くような風切り音が耳に届く。
その特大の十字手裏剣は、私、グミを通り過ぎ、袴四人衆の隙間を抜けて、裸マフラーへと迫ったかと思うと――
「甘いと、そう言ったはずだ」
そうつぶやきながら、裸マフラーはその風魔手裏剣――あくまで、るかがそう主張しているだけなのだ...Japanese Ninja No.1 第11話 ※2次創作
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10.
「覚悟ッ!」
私の背後にいたるかが、およそ三メートルほどの距離を、予備動作なしで一足飛びに跳んだ。この馬鹿の身体能力には、やはり侮れないものがある。とても残念な事実だ。
どこから取り出したのかはわからないが、るかはいつの間にか握りの先に短い両刃の刃がついた、いわゆるくない手裏剣というや...Japanese Ninja No.1 第10話 ※2次創作
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9.
怒られてしまった。
いや、誰にってそれはもちろん書き手にだ。
同じ演出を繰り返さないようにと抗議したのだが、そうなってしまった原因はむしろ私の方にこそあったのだと逆に怒られてしまった。
すなわち「グミの部屋で、るかを尋問するのにそんなに時間がかかるはずではなかったから」ということだ...Japanese Ninja No.1 第9話 ※2次創作
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8.
「お嬢様。危惧した通りの事態にございます。第七話は文庫本換算で約十二ページ、つまりは今までで一番の文章量を費やしているというのに、なに一つとして話が進んでおりません。わたくしといたしましては、今後のことが心配で心配で仕方ありません」
「なにを言っているの。こいつが洗いざらい話すと言っているの...Japanese Ninja No.1 第8話 ※2次創作
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7.
「さて、とりあえずは事情聴取といきましょうか」
――引き続き、グミの部屋にて。
一応あの袴四人衆には犯人が捕まったからと伝えて、探索は中止してもらった。そのまま解散させようとしたのだが、万が一に備えてと、皆はグミの部屋の前で門番よろしく待機している。
メンバーは変わらず、私とグミ、それ...Japanese Ninja No.1 第7話 ※2次創作
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6.
「お嬢様、落ち着いて下さい。敵はまだ倒れてはおりません」
感傷に浸っていた私を、グミの声が現実へと急激に引き戻す。
「なっ」
まさか。そんな声をあげてしまいそうになるのを必死にこらえて、私は慌ててベッドを見る。するとそこには、私の偽物が両手で身体をかばった体勢のままで固まっていた。
生...Japanese Ninja No.1 第6話 ※2次創作
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5.
「さあ、その両手をどけてごらん」
「あ、あの……巡音先輩、あたし、まだ心の準備が……」
「大丈夫。私に全てを任せてくれればそれでいいの」
「で、でもでも、あたしなんかでいいんですか? 寮内には、あたしよりももっと素敵な人は沢山いるのに……」
「あなたは、私では不満?」
「い、いえ! そ、そん...Japanese Ninja No.1 第5話 ※2次創作
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4.
私は気を取り直して(さっきのやり取りを無かったことにして)立ち上がる。
「グミ、奴はどっちへ?」
「申し訳ありません。詳細を確認する余裕がありませんでした。ただ、外に出た様子はないかと思われます。なにか根拠があるわけではありませんが、そうでなければ書き手としても話を進めることができなくなり...Japanese Ninja No.1 第4話 ※2次創作
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3.
「全員、武器構え」
静かに、我ながらなかなかに澄んだ声で、私は言う。呆然と立ち尽くしたままだった袴四人衆は、私の声に慌てて竹刀と薙刀の切っ先をあげ、紫とピンクの変質者に向ける。
「遠慮はいらないわ。あれを滅殺、いえ、殲滅しなさい。毛髪一本、血液一滴、肉片一つ、決して残してはなりません」
『...Japanese Ninja No.1 第3話 ※2次創作
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2.
「行くわよ」
低く、静かにつぶやいてドアノブに手をかけると、私は袴四人衆の返事を待たずに脱衣室のドアを開けた。
皆の緊張感が高まるのがわかる。
細く開けたドアの隙間から、中を覗く。
――気配は感じられないわね。
私はそっと、ドアを開けすぎないようにして、まずは一人だけで脱衣室に入る...Japanese Ninja No.1 第2話 ※2次創作
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1.
午後七時三十八分、巡音学園椿寮女子棟。そこは、まさに戦場だった。
「グミ、状況報告を」
「はっ。今より五分前、三〇九号室の初音嬢が脱衣室にて敵影を確認した模様でございます。その初音嬢が、縞パンのみの扇情的な姿で飛び出してきたところを、その場に居合わせたわたくしが保護いたしました」
「そう…...Japanese Ninja No.1 第1話 ※2次創作
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THE PRESENT the first half of side:C
「ん、ん……」
ベッドからそんなうめき声が聞こえてきて、ルカは背後を振り返った。
「あれ、俺……ルカ?」
自分がなぜルカの部屋のソファで寝ているのか理解出来なかったのだろう。カイトは身体を起こすと、暗い部屋の中で立ち尽くし...ACUTE 10 ※2次創作
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INTERMISSION2 M-mix
「……。そう、そういう、こと」
自分の部屋に座って、会話の途中で唐突に通話の切れたケータイを冷ややかに見つめ、ミクはぽつりとそう言った。
(まさか、ルカはあれで誤魔化しきれたとでも思ってるのかしら)
ミクの前では約束を守っているふりをして、彼女の見ていない...ACUTE 9 ※2次創作
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INTERMISSION1 L-mix
「はぁ……」
なんとか寝たままのカイトをソファに横たえて、ルカはため息をついた。
(私、いったいカイトの何なんだろ)
カイトが好きだったのは、ミクだった。ならばルカは、一体カイトにとってどんな存在だったというのだろうか。
自分よりもミクの方が好きだったと...ACUTE 8 ※2次創作
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FLASHBACK6 after-side:B
「もしもし」
てっきりカイトからの着信だと思っていたルカは、ミクから電話が来たということに少なからず動揺していた。そのタイミングの良さ――ある意味では、それはタイミングが悪かったのだと言えるかもしれない――に、言い知れぬ不安を抱く。
『ルカ? 今、電...ACUTE 7 ※2次創作
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FLASHBACK5 L-mix side:B
「はぁ……」
ため息をついて、ルカは留守番電話サービスにつながったケータイを切った。
その見る者を魅了せずにはおられないほどに美しく整った彼女の表情は、ウェーブのかかった長い髪に隠れているせいで窺うことは難しい。だが、艶やかな髪の隙間から見えるその...ACUTE 6 ※2次創作
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FLASHBACK4 K-mix side:B
気付けばかなりの時間、そのバーでウイスキーを飲んでいた。
時計を見て、慌ててカイトはそのバーを出てきたのだ。
それから、酩酊感に足下をふらつかせながら、まだ雨の降る中カイトはルカの家へと向かっていた。
(ルカのやつ……怒ってるかな。遅くなったこと...ACUTE 5 ※2次創作
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FLASHBACK3 before-side:A
昼間よりも夜の方が賑わっているような、そんな繁華街の道に一人の少女が立っていた。
背中に大きなリボンがあしらわれた漆黒のワンピースに、特徴的な長いツインテール。まだ幼さの面影が残るその少女には、色鮮やかなネオンと雑多な喧騒に包まれ始めた夜の繁華街...ACUTE 4 ※2次創作
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FLASHBACK2 M-mix side:A
雨に濡れながら、ミクは走っていた。
雨が降るなどとは思っていなかったこともあり、傘など持ってきていなかったのだ。だが、彼女が走っているのは雨のせいだけではなかった。雨が降り出した頃、まだミクの目の前にいた男の姿を捜していたのだ。
彼女のその長い髪...ACUTE 3 ※2次創作
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FLASHBACK1 K-mix side:A
逃げ出してきてしまった。
たまたま入ったビルの三階にあったバーで、適当に頼んだウイスキーのグラスを見つめながら、カイトはそう後悔した。
一口そのウイスキーを喉に流し込むと、カッと焼け付くような痛みすら感じる。ウイスキーの旨さなどカイトにはいまいち...ACUTE 2 ※2次創作
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THE PRESENT ≒ side:C
凍えるほどの冷たい部屋に、三人の男女が立ちすくんでいた。
それは深夜、ちょうど日の変わる時刻だった。“その”瞬間、まるで時が止まってしまったかのように三人の動きが止まる。部屋の中で動く物といえば、せいぜい時計の秒針くらいだろう。室内ではその時計の針だけが...ACUTE 1 ※2次創作
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瞳を閉じる。
心臓がバクバクなっている。
――本当に?
本当に、そんなことあるのかしら?
だって私は、ワタシ、ハ――。
……。
……。
うつむいて、首をふる。
そんなこと、もう、関係ない。
私にできることは、ただ一つ。そう、たった一つだけ。...on stage
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10-3.
[ごめんね。本当は、電話で話すべきじゃないってわかってるんだけど――時間がなくて]
「そんな……そんなこと」
懐かしいその人の声音に、愛が隣りにいるってわかってても泣き出しそうになった。
[俺……もう、大学にはいないんだ。退学届も出して、あのアパートも引き払った。今は大分の実家で旅...ロミオとシンデレラ 42 ※2次創作
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10-2.
「め……メグ?」
学校帰りなんだろう。神崚高校の制服に学生鞄を持ったその友人は、いつもどおりの、よく通る元気な声で私の目の前に立っている。
「そうよ。私が偽者に見える? ほらほら、あたしに会えて嬉しいでしょ?」
正直に言って、嬉しいとかよりも、なんで愛がここにいるのかわからずにポ...ロミオとシンデレラ 41 ※2次創作
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Tranquillo cantabile
10-1.
あれからどれくらい経ったのか、もう時間の感覚なんて無くなってしまっていた。
でもたぶん、一週間とか、それくらいなんじゃないかと思う。けれど……もう、そんなことどうでもいい。
だって、もう私は海斗さんに会えないもの。
海斗さんの力に...ロミオとシンデレラ 40 ※2次創作
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Presto
9.
三人組がパトカーで連行されて、私と海斗さんも別のパトカーで警察署にやってきた。
あの三人組がどうなるのか、私は何も聞かなかった。聞きたくなかった。……聞けなかった。
しばらく事情聴取を受けて、もう用事はすんでいる。なのに、私はまだ帰れなかった。
それは、私の捜索願...ロミオとシンデレラ 39 ※2次創作
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8-2.
身体をベンチに抑えつけられ、口にハンカチを押し込められた。私は、逃げ出すことも悲鳴を上げることもできなかった。
「おい、暴れてんじゃねーよ。もっと抑えろ。服が脱がせねー」
金髪の手が私の身体をはい回る気持ち悪い感触がした。
「……んんっ。んっ! んー!……」
イヤだ。
止めて。...ロミオとシンデレラ 38 ※2次創作
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Tempo primo
8-1.
また、逃げ出してしまった。
しばらく無我夢中で何にも考えられずに走ってから、しばらくして落ち着いてみると、ひどい罪悪感にさいなまれた。自分が海斗さんにどれだけひどいことをしたか、思い出すのすらつらい。
だって、海斗さんのせいじゃないんだもの。海斗さんは...ロミオとシンデレラ 37 ※2次創作
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7-3.
初めてのデートは、ものすごく楽しかった。
私は乾かした制服を着て、海斗さんと駅の近くのお店を見て回った。
海斗さんに申し訳なくなってしまうくらい、何着も洋服を買ってもらった。さすがの海斗さんでも下着売場だけは「ちょっと、外で待たせて」って言ったけれど、その他はずっと海斗さんと一緒...ロミオとシンデレラ 36 ※2次創作
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7-2.
翌日。
寝たのが遅い時間だったせいか、海斗さんが目を覚ましたのはもう十時を過ぎた頃だった。
寝ぼけたままの海斗さんの腕の中から何とか抜け出して、海斗さんの要望通りにコーヒーをいれる。
実は私は一睡もできなかった。恥ずかしくて、緊張しすぎて眠れなかったっていうのもあるけど、寝てし...ロミオとシンデレラ 35 ※2次創作
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Moderato
7-1.
雨でずぶ濡れになった身体をシャワーで暖めて、私は海斗さんに貸してもらったジャージに腕を通す。
そのジャージは、海斗さんのものなんだから当たり前なんだけど、かなり大きかった。
裾と袖を何回も折り曲げて、私のサイズに合わせてみたけど、全体的にぶかぶかなのと、シャ...ロミオとシンデレラ 34 ※2次創作
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6-6.
海斗さんの家に着くころには、私は何があったのかをほとんど説明し終えていた。
私のケータイの通話記録とメールの内容を全部調べられていたこと。パパとママが「海斗さんに会うな」と言ったこと。ママが海斗さんにあの電話をしたこと。
まだしとしとと降り続く雨は、私の気持ちを抑える役にはたたな...ロミオとシンデレラ 33 ※2次創作
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6-5.
「ちぇー。未来ちゃんにカイの情けない話を教えてあげようと思ったのに」
「お前……な」
息を整えて、私を見る海斗さんの瞳は、不安で揺れていた。
怖かったのは、私だけじゃ――ないんだ。でも、私は独りじゃない。私には、海斗さんがいる。私を連れ出してくれる、ロミオがいる。
「未来ちゃん――...ロミオとシンデレラ 32 ※2次創作