リオンの投稿作品一覧
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先ほど分かれた双子の姉弟、リンとレンのことを思い出していた。
いくら過去に行ったからといって、あんな中世ヨーロッパのような(と、言うのはアリスの偏見だが)世界に飛ぶなんて。今は文明も進化し、アレくらいの子供は殆どが携帯電話を持っているのが普通だし、まして子供を捨てるなんてことをしたらすぐさま逮捕...Fairy tale 7
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しばらくは体中どこも動かなかったが、そう強い薬ではなかったらしく、次第に身体は動くようになってきた。力も、いれる事ができる。寝起き程度の感覚だ。
その目に映るのは、ただ恐怖の色のみである。破れたドレスと乱暴にはずされたコルセットと下着…、そして、領主の手のは鋭いナイフが握られている。その切っ先は...Fairy tale 6
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数日に一度、新しい少年がやってきて、数日に一度、少年が一人、どこかへと消えていく。そのたび、領主様が少年たちの下見にやってくる。少年たちも、こころのどこかではこの領主が恐ろしいということに気がついているのだろう、自分の近くに領主がやってくると、どこかぎこちなくしているのがわかる。その中で、れんはこ...
Fairy tale 5
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少し歩いた。
レンの言いつけでアリスは単独行動をとっていたが、あまりくらい森の中は君のよいものではなかった。一体どれほど歩いたのだろう。歩いていく中で、アリスは多くの情報を得た。時折歩いてくる狩人たちが話している声を聞いていたのである。
情報をまとめると、この辺りを納める領主様は珍しいくらい狂...Fairy tale 4
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「ちょっと、おきてよ、ちょっと!」
朝早く、ドルディーの元気な声にアリスが目を開くと、ドルディーは随分待ったという風で腰に両手を当ててふくれっつらになって、怒っていることを体全体で表そうとしていた。
「もう、起きるの、遅すぎ!もう八時よ!」
アリスに言わせれば、『まだ』八時である。ああだ、こうだ...Fairy tale 3
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レンガの塀に沿って歩いていくと、よく似た少年と少女がレンガの塀の上に座り、何かを話しているらしいのが見えた。
華やかな金髪にパッチリと開いたチューシャにつけているらしく、少年のほうは紅い紐で少し長い程度の髪を結んでいる。
「何を話しているの?」
フレンドリーにミクが話しかけると、少女のほうはき...Fairy tale 2
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ある晴れた日の昼下がり。
ミクは姉と共に本を読んでいた。しかし、その本と来たら難しい言葉ばっかりで、十六歳のミクには理解できないものがあまりに多すぎた。次第に、木陰の木漏れ日の暖かさと頬をなでる風の涼しさに、夢の世界へと引き込まれていった…。
ふと目を覚ますと、姉のほうも眠ってしまったらしい。...Fairy tale 1
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ずかずかと人ごみを掻き分けてレンがリンの手を引いて進む。
「…レン」
「…」
不安そうなリンの声が聞こえていないのか、耳を貸さないだけなのか、レンは答える様子がない。
「ねえ、レン」
「…」
「レンっ…」
「リン」
いきなり口を開いたレンの声のトーンは異常に低く、まるで全く知らない人のように声...またいつか、桜の木の下で 10
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「――ありゃ。レンとはぐれちゃった。どうしよ、レン、この辺り来た事ないんじゃ…」
レンの手からはなれ、リンが慌てだしたときにはもう遅く、リンは人のながれに乗ってレンとはぐれてしまっていた。大変だ!いや、普通なら年上でしかも男のレンを心配して後戻りまでしたりはしないのだが、どうも数年前からこの辺り、...またいつか、桜の木の下で 9
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…正直な話。
バレンタインデーなんてやってられない。
…と、思う。
「チョコなんてつくれるかぁぁあああああ!!!」
そういって、リンはそこにあった材料を全て投げ出すようにして、姉のメイコに泣きついた。
「メイコ姉、無理だよぉ…」
「そりゃあ、いたチョコをまるまんま鍋に放り込んだアンタには到底...双子番外、
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「レン」
「うん?」
ふと振り向いたレンの優しげな笑顔に、リンは思わず呼吸までも止めてしまった。
「どうしたの、リン?」
「あの…この間、掃除をしていたときに…見つけたの」
そう言って、小さくたたんだルーズリーフを手渡す。何なのか、理解できないレンはそれをぼけっとしたまま受け取り、ゆっくりと開い...またいつか、桜の木の下で 8
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ふと、見上げた空は赤々と夕焼け色に染まり、そこに一筋、限りなく黒に近い灰色のラインがみえた。――黒煙?
その方向には、たしか――
「桜が…っ」
燃えている――?
「!!」
桜のところまで来て、リンは立ち尽くした。真っ赤に燃える炎の中、巨大な墨の固まりと化した桜の木が今にも折れてしまいそうにな...またいつか、桜の木の下で 7
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強風の中、小さな花束は飛んでどこかに行ってしまいそうだ。
花束をフェンスに立てかけるようにしてしゃがみこみ、軽く手を合わせてそっと目を閉じて、心の中で呟く。
「リン、毎日あってるのにこんなときにばかりかしこまるのもおかしいけど…」
目を開く。
「…君に会いたいんだ」
今度は声に出して言った。...またいつか、桜の木の下で 6
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大体、何が間違っていたのかといえば、初めて出会った相手に動揺してわけの分からないことを口走り、挙句の果てには泣いてしまったことだ。
「あぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああああああ」
わけの分からないことを口は知っただけならまだしも…。思わずレンは奇声を上げながら頭をぐしゃぐしゃと引っ掻き回し、ベッ...またいつか、桜の木の下で 5
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「レン、大丈夫、顔色よくないよ?」
心配そうにリンがレンの顔を覗き込むと、レンは優しく微笑んで安心して、とでも言うように言った。
「うん、なんでもないから平気だよ。気にしないで」
「そう?なら、いいんだけど」
「掃除、手伝ってくれてありがとう」
「いいんだ。別に。テストが終わって暇だし、それに、こ...またいつか、桜の木の下で 4
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「…リン」
ふと、レンがたずねた。笑顔でリンが答える。
「なぁに、レン?」
「今度、誕生日に、何かプレゼントとか、欲しいもんないの?」
今とは違う少しぶっきらぼうな言い方が、少し大人ぶった少年という風のレンの姿によく似合う。
「うーん、そうだなぁ…」
しばらく考えるように頬杖をついてみせると、...またいつか、桜の木の下で 3
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正直、俺は『普通』じゃないと思う。
毎日何もせずにただぼうっと桜の木の下に寝転がって、綺麗に咲いた桜花と果てしなく広がり続ける青い空を眺める毎日。誰でも生きるために働き、金を稼いで汗水たらしているというのに、時折自分が何のためにここにいるかのすら忘れてしまいそうになる。
最近、毎日のように来る...またいつか、桜の木の下で 2
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私、鏡音リンはごく普通の中学二年生である。
跳びぬけて学力が高いわけでも、超人的な運動能力があるわけでも、まして魔法が使えるわけでも、特別武術の有段者であるわけでも、相手を飛び上がらせるような凄い料理を作れるわけでもない。ごくごく普通の女子中学生。あえて言うなら、人より少し歌がうまいのと、少しだ...またいつか、桜の木の下で 1
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-終末-
まだ、意識は朦朧としたまま。
記憶の糸を手繰り寄せて、何があったのかをしっかりと思い出さなければ、と考えをめぐらす。次第に曖昧だった記憶がはっきりしてきた。
「…そうだ…」
確か、神威を呼び出して、神威がなかなかこないからってリンが見つけたという人影を確認...記憶屋・心屋 10
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-依頼者-
息が詰るような闇夜の沈黙に支配され、レンはベッドに倒れこんだ。
「なんなんだよ…」
隣の部屋にリンが戻っていったのか、ごそごそと音が聞こえてきて、レンはその音を掻き消すように思い切り布団を被った。枕を頭に押し付け、すべての音をシャットダウンする。
も...記憶屋・心屋 9
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-傍観者-
例えば、物事を直接経験した当事者よりも第三者の方がうまくことを解決できるとか、実は実際よりも正しいことを考えられたり。
例えば、第三者の間違いは当事者には分からなかったり、第三者だと思っていた奴が犯人だったり。
例えば…。
これが、実は第三者ではなく身内...記憶屋・心屋 8
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-密告者-
犯人。
犯人。
誰。
誰。
誰。
まさか、リンが?
そんな考えが脳裏をよぎり、あまりにこっけいな考えだと、レンはふっと笑いを浮かべて歩いていた。
「玩具が持ち主を裏切っていいはずがない」
玩具は裏切らない。所詮壊れる玩具は持ち主をしっかり...記憶屋・心屋 7
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-第三依頼人-
パソコンの前で自問自答を繰り返す。
画面がちゃんと表示されないわけでも、ペンタブが使えないわけでも、音楽が聴けないわけでもなかった。目の前に表示された画面は対して派手なわけではなく、枠の中に表示された文字は、記憶屋に向けて書かれたメッセージだった。...記憶屋・心屋 6
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-喪失-
しばらくその場に音はなかった。ヒュウ、と風が無神経に三人の間をすり抜けてどこかへながれていった。
「…制裁…」
「はい。それをこなさないと依頼完了にできないんです。それで、制裁の方法を決めていただかないといけないんですが」
「本人に選ばせるなんて、嫌なことす...記憶屋・心屋 5
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-殺人者-
離れていく君は悪魔か死神か、そうでなければ気が狂ってしまったピエロ――幼いころの優しかった君はどこかに消えて、今そこにいる君は違う君。君はいつからか心から笑うことをやめ、怪しげな微笑をもって他人を蔑むことが多くなった。そんな君が怖くて、でも、君が離れて...記憶屋・心屋 4
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-欲望-
ふっと気がつくと、辺りは真っ暗で、人っ子一人見当たらない。どうやら、自分以外の生き物はこの辺り――少なくとも自分の視界に入る範囲内には――誰もいないようだ。
確か、自分は生徒に呼び出されて教室に行って、あのミクとか言う子供のことを言われて、それからわけ...記憶屋・心屋 3
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-第一依頼人-
依頼人の名は、『初音ミク』。二人と同じ学校に通う、二人より二つほど学年が上ではあるが、レンの部活の先輩と言うこともあり、それなりに面識はある。
漫画研究会――通称、漫研のアイドル的存在であり、多少腐女子であることでも有名な美少女である。一見楽観的で悩み...記憶屋・心屋 2
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-記憶と心-
貴方の忘れたい記憶を、高値で買い取りましょう。
貴方が手に入れたい記憶を、安値でお売りしましょう。
DVDで、永遠に貴方のほしい記憶だけを。
貴方の心、鑑定します。
鑑定量は貴方の『光』の感情。
貴方の心の値段、私が鑑定いたします。
「ねえ、知っ...記憶屋・心屋 1
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満ち足りた。
今までの物足りなかった心の中の空間が、たった一度歌を歌っただけでこうも綺麗に満たされていくものではない。
満足?
違う。
不満?
満たされてはいる。
じゃあ、何?
分からない。手から、口から、心の奥底からあふれ出すような不思議な感覚と比例するように流れ出す音たち。
音...恋をしたのは君じゃない 10
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頭がぼうっとする。
このところ、何をすることもなく、だた空中を眺めながら息すらも止めてしまいそうになるような虚無感に襲われる。今までもっていた、大きな何かの存在が、あるいは何かの行為をしなくなったからか、白い壁に溶け込んで消えてしまいそうな、そんな恐怖感がありもしない妄想を見せる。
何をしてい...恋をしたのは君じゃない 9
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「――ああ、またきてくれたんですか。ありがとうございます」
少しだけ仕事をして入った収入の三分の二をかけて買った小さな花束を、ベッドに横たわる包帯だらけのレンに見せた。柔らかな笑顔が返ってくる。
「キレイな花ですね」
――他人行儀な敬語。病院生活で覚えたことは、ただ二つだけ。敬語と優しいつくり笑...恋をしたのは君じゃない 8
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「…も、もう…勘弁…じで」
カラオケボックスのソファの上にだらんとまるで垂れ下がるように(本当に垂れ下がったわけではない)して、リンは倒れこんだ。
「問答無用!立て!!」
「喉がつぶれちゃうよ――っ」
半泣きになって、無理やり立ち上がるように持ち上げられ、マイクを押し付けるようにされたかと思うと...恋をしたのは君じゃない 7
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「…ふぁ」
大きなあくびを一つ。
それと、小さなパンを口に投げ込んだ。
ふわりと香るココアの香り。そして苦味のあるコーヒーの芳ばしい香りがその小さな一室を満たし、レンに軽やかな目覚めを与える。
「あら、レン、おはよう。…新しくコーヒーを考えたのです。飲んでくれますね?」
「うーん…。とりあえず...恋をしたのは君じゃない 6
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コーンスープを両手で持って雨にぬれて冷えてしまった手を温めつつ、辺りを軽く見渡した。台本を手に持って傘を差してはいるが、寒さで手がガタガタと振るえ、もう台本を確認するなどといっていられる状態ではない。
それにしても、辺りはひどく暗い。数メートル先には大量の車のライトが眩しく見えるが、雨に歪んで、...恋をしたのは君じゃない 5
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また、今日も屋外での撮影。
じりじりと熱い…なら、氷でも持ってくるのだが、今回はそうも言っていられない状況だった。何せ、外は大雨。シーンとしては、雨の中傘もささずに幼いころに離れ離れになった恋人が、再開して強く抱きしめあう、と言うものだ。…しかしこの雨の中では、二人ともかぜを引いてしまう。主要な...恋をしたのは君じゃない 4