吹憐の投稿作品一覧
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紅の魔女が息を止めた
朝に生まれた鳥は
星屑を道標に
氷の森へ消えゆく
何処までも遠く続いてゆく
石畳を踏みしめ
裂かれた時の狭間で
眠れる君を探そう
“誰がため、誰がため”
愛し続けた調べ...氷の魔女
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頭にお花が咲いちゃった朝
私のご飯はレトルトケーキで
真っ逆様に下ろしたフォークが
苺を貫くのを、見ていました。
窓からおいでと約束したのに
待てど暮らせどあの子は来ないし
また夜がくれば名前も忘れ
プラスチックをかじる、そんな予定。
心が伝線してくのが見える
紫の縦縞模様...満月がやってくる
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万華鏡に降る雨が
模様を乱していく
どうか安らかに眠れ
誰かが残した言葉
眩暈のするような赤
染め替えていく青に
緩やかに狂う呼吸
速度を落としていった
光を受け止める膚は
滑らかに雨を逃がす...水底の虹【曲・動画有】
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空想を歩く爪先は重力を断ち切って
君の咲かせたあの花だって潰さずにゆける
優しい子供に生まれ変わるよりもっと近い過去の中で
合わせた鏡を潜るみたいに僕らは遊泳するのだ、嗚呼
惑星が呼んでいて
遠からず朝が来るはず
アネモネの赤に染まる
楽園みたいに澄んだ窓辺
ここには生まれなかった君がいつだって棲ん...深淵、或いは横顔
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いつも大切な言葉ごと
遠くへ投げ捨てているの
思い出が風化するほどに
浮き彫りになるものがある
きっと大切な言葉ほど
遠くへ投げ捨てているの
誰かに届いてしまったら
寂しく迷わせてしまう
素肌に綴った文字で
そう言って微笑った...ローレライ
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薄荷の花束のような
仄白い目覚めに
君が滲ませた朱鷺色
息が詰まりそうだ
何物にも代えられない
子守唄がどこか
深い森で泣いているよ
そんなお伽話
カナリアが逃げた朝に
君と帰りたい...月光ピューレ
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ロクガツココノカ
零れ落ちて
あの湖の淵で
逆さの王国
緑のキシ
奇跡の鱗を見た
絹を広げた右の手に
翡翠の指輪
憶えているんだろうか
とても鮮やかだったこと...君の見なかった夢
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この指千切って貴方の指と
爪の花咲かせる夢を視たい
薄紅に張り裂けてゆく
易しい日々の隙間に
灯火にさえならないような
蛍を人知れず飼っている
誰かへ見せるつもりもなくて
短い命を眺めている
揺らめきは橙に移ろい
いつしか言葉を焼いた...蛍火
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カムパネルラ
君を流星に喩えよう
独りだって追いつけない
カムパネルラ
カムパネルラ
君は対岸に燃え墜ちて
青く白く光る夜空
仰ぐように
歌った
歌った...金銀砂銅
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あれから君は今でも
まっさらに生きているようで
傷一つ残せなかった僕は
そんな報せに笑う
糸を絡めては解く
綾取りのような日々だった
結び目はそこにあったと思う
但し僕の目の中
雨上がり、草の上で
揺らいだ影のような...Ruby
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私の影を切り取って
青い瓶に詰め込んだら
少しは静かになるよ
君の寄越した歌だって
もう歌わないさ
壊れたオルゴールみたい
同じところを繰り返す
そんなことももう辞めて
綺麗な造花になろうか
その窓際にて...灰の王
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街を渡る飛行船は雲の白に溶けて
昨日の雨など忘れたみたいに麗らかな様子
青いだけの空なんて興味ないって言って
それだけで君がそこにいるような、そんな気ができるの
完全を見透かされたら
きっと逃げ出してしまう
少女は唱えた らいらいら
誰も知らないはずの魔法
だってたった今作ったんだもの
この反射から...カラクリミューズ
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大切なものほど手放したくなる午後にきみの手を離す、わけもなく
雨粒に泣き顔をみた気がしたんだよ、なんてありきたりすぎてありえない
嘘でも構わないから今度観覧車に乗って二人きり
てっぺんから空へ飛んでいこうねと笑った、そんな鈍色の哀よ
悲しみを名乗るには、こころが暖かすぎる
遠近、くるってまた針の上
...トゲノモリ
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あの水泡がはぜるまでに
十数えられたら
明日は晴れる
この珈琲が冷める間
本を読みきれたら
飴を食べよう
ささやかなまじないを
夜毎かける
あの秒針がまわる間
息を止められたら...(((non title)))
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灰になるほど君が僕を
愛してたとは到底思えない
赤くくすんだ指輪の下
慣れないものを探し迷い歩く
途方もないほどに
広い
荒野で傘を差して佇む
目に映るものがすべて渇いて見えた
最初からどこにも君なんていなかったのだ
そんな錯覚が強く...あめふらし
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終わりの始まりを知った日
砂時計を投げ捨てて
膝を抱えて泣いた
標識のない町で
迷子になることもできない
朱鷺色の羊がいる
記憶の奥深くに
誰かが置いた土産
話しかければ逃げ出す
寂しがり屋の悪魔に...夜へと至る
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隙間などない言葉で
この胸を埋めてほしい
鍵穴が視えるのなら
回すよりも塞がせて
詮索の進む先に
辿り着く焼け野原が
惨めだと思うのなら
貴方が薊を植えて
一生の頼みがある
限りなく透明な...花の鎧
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こんな綺麗な町のどこへ
あの思い出を捨てたらいいだろう?
砂の粒さえ煌めくから
僕は立ち竦んでしまう
キュラキュラ レリア
エルザントーレ
君の残した銀の影で
あの子供は遊ぶのだとしても
キュラキュラ レリア
エルザントーレ...天使の住んだ町
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何ができるのだろう
愛すべき君がため
何を言えるのだろう
苛むような夜に
何が作れるだろう
求むべき君がため
何を守れるだろう
忘れ難い日々に
錆びてこぼれる爪で
空白を切って...歌う残像
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爪先で回す地球儀の
冷たい海が肌に染みる
新しいはずの花束は
どうして懐かしいのだろう
ひどく凍える雨でもないのに
こんなにも今日は
抱きしめてくれないか
そう呟いた
溢れ出してしまわないように
星は明るく月は丸く...されどこの夜は掌にこぼれる
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罪の意識はそこにあった
三日月のような痣に
指を這わせることを恐れ
数えあぐねていただけ
捻れたままで絡んでいく
針金は螺旋になり
上り坂を匂わすような
長い階段を造る
息を切らして立ち竦んだ
世界が反転して...June bride
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その窓辺には蔦が絡んでいて
だから鍵は開かないのだと
噂で聞いたあの人が
今日は海風を浴びている
その眸には影がかかっていて
いつもどこか寂しいのだと
誰かに聞いたあの人は
今日は穏やかな日のようだ
碧く震える海の上で
その人はいつからともなく一人...灯台守
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題名のない別れにも
起点はあったのだと
探すことにさえ飽きた
五月の夜に
道端へと誘うような
誰かの笑い声を
今晩夢に見るから
そう呟いた
肖ったあの糸は
どこへ消えたのだろう...Angel
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生まれたてのとき指の形を
近くで見るのが好きだった
互い違いに組み合わせるだけ
それだけ続ける僕ごっこ
天蓋なんてなかったからね
隠れる場所もなく
いないいない ないないのばあ
それだけさ
カステラ仕込んだベッドに埋もれて
見上げた夢だってねえ?...エル・ドラドの夜
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針金吊し無精卵
真綿で包んで揺さぶった
月光浴の十日目に
ようやく返事も聞こえ出す
昨日の夜は夢を見て
さぞかし幸せだったろう
そろそろ目覚めの頃合い
その眼を光に晒すなら
この指の隙間から
世界を覗くといい...エンゼルキット
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あのとき交わした言葉
全部嘘だったの
あなたが幸せならば
それでいいだなんて
どれほど指切りしても
上の空だったの
明日を約束したら
その先が見えない
いつか瞬きをしたら
すべては泡沫に変わり果てると...窓の海
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迷子について考えるとき
紅茶に檸檬を付け足して
楽しむふりして目を閉じる
君の心を見ないように
ばいばい、誰かが手を振った
黄昏滲んだ窓際で
刺繍をほどけば夜が来る
君の背中も見えなくなる
今、針を落としてしまったら
地面に穴が空いて...Escape
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研ぎ澄ましたのは爪ではなくてその名を囁く声、それだけだった
切り立った硝子の壁のように其処に塞がれた影をなぞって
冷たい檻から逃れたいなら機会は何度だって訪れていて
さようならを云うのが怖ろしかったのは誰の所為とも言えない
何処に忘れてきたのだろう
魔法のように何も思い起こせない
幾度の夢から覚めて...氷園
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A
かき集めた瓦礫の温度と
手のひらに合うおぼろげな雨を
僕らは無色に例える
水晶の向こうで羽ばたいた
鳥の背中に太陽が溶ける
僕らを無色に喩える
B
再生のピリオドで歌う
息の根が騒ぎ出す...夢とバラッド【曲、動画有】
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水溶星のこぼれた跡をなぞって
きら きら 、
回るオレンジを眺める
欠片になった誰かが伝え損ねた
どれ どれ 、
揺れるオーナメントのよう
こんなに綺麗になってしまって
馬鹿だね
この世界が美しかったのは
きみが汚くあったからなんだと...Az
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カノン、君の愛した歌を追いかけて
こんなに遠くまできてしまった僕を笑ってよ
君が応えてくれないのなら
地図を捨てて歩いてきた意味がない
エンドロールと些細な嘘で
外れた螺子を探してる
「それはそれは小さなものだ」
「だからこそ僕には必要だったのさ」
煉瓦の海で凍った足を
溶かせる場所はここじゃない...カノン【曲、動画有】
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惑星が傾く
蛍光の茜色
貴方にはきっと見えない
視えてなどいない
静寂が嘯く
対角に辿り着く
この足を絡め取るのは
緑のざわめき
叫べなくなる前に
何処か遠くへ...ワンダーゴート
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その部屋の窓を鮮やかな花と
賛美歌の楽譜で埋め尽くしてしまいたかった
君の瞼に揺らめく晴天を
僕の手で美しく彩れたならば良かった
ご覧、時守がそろそろ目を醒ます
ラリマー
嘘泣きはいつのまに辞めたんだい
そんなことを訊くのは後にしておくれよ
両手は君を捜すことに忙しくて
今だって他に何も抱けない...ラリマー
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霧に沈む町を進もう
繋いだ指を誰にも見られないで
音の枯れた朝を渡ろう
西へ流れる風がざわめいている
朽ちかけたあの看板に踊る
幼きエトワールに告ぐ
世界中が跪くような
祈りなんて僕にはできないや
束ねきれずに零れてしまった
その一片をこの目は追ってしまう...明けのパレード
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干渉されることのない
空っぽの窓辺で二人暮らそう
オレンジ色して褪せていく日を
指折り数えながら
誰にも邪魔をされないで
ガラスのカップも二つきりでいい
注いだ水から透ける光を
絵の具でなぞりながら
混じり気のない話をしたくて
息を溶いた...雨を渡る