吹憐の投稿作品一覧
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低下してゆく体温ごと
カラーボックスの中で
抱きしめているような
覚束ない目覚めに
私の膚の下では
幾千の兵士たちが
今、善悪に割り振られてゆく
形のない朝日の指先で
楔のない言葉の奔流で
淘汰されてゆく...黎明
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お芝居じみた手拍子ひとつ
ぱんと鳴らして歩く背に
いつぞや貰ったかの花ですと
絵筆を滑らせ微笑いがお
散り散りになってゆくのでしょう
五枚連ねた花弁でも
支える緑の腕は細くて
こうして枯れゆくことだから
からんかころり
嗚呼ふり向いた...飾り紫
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干渉的な月の明かりを
ひどくゆっくり跨いだ
誰も彼もが眠る頃
そんなの存在しない
導きの星に繋がれて
歩いた大河の夜は
きっと思い出にできない
散らばっていく群青
お眠り
あやす声が優しいから...羽化する貴方
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ドミノを倒す大役は
たぶん絶世の美少女か
国を救った英雄か
或いは奇妙な因果のもとに
僕かもしれない
君かもしれない
運命ってなんだっけ
たぶん小鹿を倒すより
簡単ですよと人は言う
予知夢を忘れたほうがまだ...インストーリー
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メアリー・ロッタは言ったのさ
所詮はすべて夢だって
ほどけた繊維の真ん中で
レイロウレイロウ泣いている
それなら僕等はどこへ行く
君は答えてくれないで
レイロウレイロウ泣いている
瞼を下ろして泣いている
有耶無耶な旋律で
生糸を震わせて...昼と満月
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パステルブルーの天蓋に
僕らは白馬を描いて
そこに地形を創った
小さなお城も置いて
蹄の音が聞こえてくる
草のない道をかき分け
やがてたどり着くだろう
君は外れの丘まで
リドリ、星屑を掲げておくれ
どこへいようと見つけられるように...リドリ
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卵形のフラスコで
バランスとって泣いている
あの子が欲しいな、恋しいな
沈めてしまいそう
水を溜めたフラスコで
片足立ちで泣いている
あの子が欲しいな、愛しいな
溺れてしまいそう
試験管一本挿して
中にピンクの色水...海月の涙【曲つきました!】
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欠片も残さずに抱いて
放り投げてくれないか
とびきり世界の彼方まで
飛ばすくらいのつもりでさ
無重力 息をしている
大気は僕を吸っている
月面で踊る誰かのピエロ
後ろ歩きで何を見たんだい
パーティーグッズの派手なオレンジ
君にはあまり似合わない...月面落下
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太陽の見える場所でさ
話がしたいんです
他愛ないことでいいんだ
例えば明日の天気
砂浜に届く位置でさ
話をしたいんです
面倒なことは言わない
例えば風の気配
浅いところを泳ごうか
少しの間...浅く潜る
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君と繋いで三年経って
右手は蝶になりました
どうです綺麗な色でしょう?
爪の先だけコバルト
君と結んで重たくなった
言葉は石になりました
どうです此処らで一休み
背中合わせて観察
小指の櫻色 蹴って
飛び去った影に埋もれてく...碧彩標本
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銀河に興味はなかった
手の届かない景色と
もうそこにない星屑
僕には必要ない
深海に空はないんだ
厚く積もった砂漠は
触れるほど綺麗じゃない
特別ほしくもない
全部、全部知っていたから
僕は幸せだったよ...スターダストガーデン
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その指先からこぼれる音の
ドレミとソラシが大嫌い
努々忘れず歌いなさいと
優しく諭しているようで
すべてを知った顔ならしないで
そういう貴方は大嫌い
爪先立ちして踊りなさいと
私を笑っているようで
ムラサキ・リップ
またキスをした...ムラサキ・リップ
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私の中で膨れる空の
青さに目眩がするという
白紙の本とこぼれたインク
爪に染み込むただ群青
言葉を変えて例えるならば
落下してゆく気球のよう
ほどけた髪と濡れた蝋燭
息も接げずにただ煌々
とびっきりの冷たい海に
この手を投げ出して...Image
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その鎖をほどいたら
世界が終わってしまうよ
それは大袈裟だけれど
少なくとも、僕は悲しむ
両手に吊るした糸で
結びたかったものは何
ばらばらに揺れるだけだ
そんなことは言わなくていい
弾けてしまった泡の形を
描き出せないことや...白磁のジャック【曲つきました!】
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あなただけが知らない私に生まれ変わることができたら、いいのに。白昼のゆめを纏ってひらく、目蓋をいま翼に変えてしまえたら。
どこでもない世界からこぼれたその水泡を核にして、私は。私とわたしの愛するあなたを包み込むための、柔らかな皮膚になる。
醒める剥製
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地球が逆さになったって
あなたは歩いているように
僕が逆さになったって
あなたは愛してくれますか
ウサギが歯形をつけたって
あなたは笑っているように
僕が歯形をつけたって
あなたは接してくれますか
ILOOLOO
不完全な熱の羅列...リスキー
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千一番目の街角で
逢えたら、いいね
もしそれが叶ったなら
花を贈るよ
時計の針が回る前に
ドミノを、摘んで
あの波を止められたら
それは冗談
クオルク
歩くのが速いと...クオルク
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とてつもなく眩しい波がくる
白々しいんだ、と
真っ直ぐに投げ出した腕と
冷たいアクアリウム
触れてしまったその指先から
吸い上げられていく
光る鱗と昨夜の夢
弾けた綺麗な嘘
頭角を潜めて
眠ったふりをするんだ...不可視の国
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砕けた星が喉に刺さって
ひどく掠れた声になる
青い螺旋の先で見たのは
そんな寂しい夢だった
雲にまみれた明かりの中で
君は笑っているんだと
信じて幸せだった僕に
雨が注いで貫いた
手向けたはずの蕾から
噴き上がる薔薇の桃色に...空の白
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それはとても優しい声で
私のことを撹乱して
あなたのほうが無実だと
そう言ってしまいそうになる
微笑んだならそれが合図
夜の匂いに誤魔化されて
あなたはきっと無罪だと
言ってしまいそうになる、そう
もしこれがゲームだったなら
敗北で終わりにできたのに..."Indigo"
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君の言葉が綺麗な理由を
いつからか、僕は探している
夜明け前に見た星空と
零れ落ちそうな丸い月
君の言葉が冷めない理由を
いつだって、僕は探している
楽譜を忘れたあの曲と
まだ途切れない林檎の皮
曖昧な境界に
並べ立てられた憂鬱が...朝がくるまで
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大きな約束は
してくれなくていいよ
貴方の呼吸を
乱すつもりはないの
とてつもないような
話は必要ない
私の微熱は
うつらないままでいい
溜め息で侵された
部屋に花を飾るのは...Background music room【曲・動画有】
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安心したいのなら
牙を抜けばいい
爪を剥げばいい
その剣で、すぐに
気を休めたいのなら
角を折ればいい
羽を削げばいい
今ここで、すぐに
怯える必要はどこにもないだろう?
この手は何も持ってなどいない...冥王
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偽りの 時計をもう止めていい
風上に夜が降りてくる
藍色に掠れて 見えなくなった
大気に投げ出した呼吸
封鎖して 破裂した
脱け殻の行き先を
もう誰も知らない
それで良いけれど
まやかしは此処に
一つも存在しない...星影ユーフォリア【曲つきました!】
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浮遊する音の色
転がる硝子の
壊れない秘密
からり鳴らす
三日月の背に 踊る指を立て
羽を描いて また消してはもたれる
浮遊する靴の底
繋がる星座の
微笑みを過ぎて
遠く高く...ら・ら・ら
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夏になれば枯れる
小さな草むらで
貴方は今日もまた
ピアノを弾いて
雨が降れば消える
物語を抱いた
私をそうしてまた
微笑うのでしょう
優しい歌を奏でる
その手で貴方は...空の鳥籠
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銀河に投げた
輪のなかを
静かにくぐる
ひかりの目
掬うみたいに
見透かして
呼吸の震える速度
睫毛の揺らめく影と
忘れなかった思い
わたしの手を引いて...蒼と眩む
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どうせ凍えてしまうのならば氷の玉座の上で
きみを膝に抱いて道連れに、笑う彫刻になろう
いつか壊れてしまうのならば尚更きつく掴んで
触れた膚に痣を刻んでは、共に季節を嘆こう
アゼル、世界の白を集めてきみに贈れたら
そんな夢を視たんだ
叶うはずのないお伽噺だと思いながらも、手を伸ばして
アゼル、すべての...アゼル
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あたしね 羽よりナイフが似合うし
花束なんていらないけど
世界の真ん中で朝まで
踊るなら ワルツがいいの
あなたが 薔薇を一輪胸に挿し
その手を差し出してくれても
重ねる指は爪を立てる
それでもね ワルツがいいの
道端 路地裏 町外れ
潜り込んだらドレスに着替え...スカルと純潔
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満月の夜に飲む
一粒の真珠を
慟哭の色だなどと
笑わないでほしい
杯に浮く星は
静かに息を止める
貴方の知らない場所で
私は溺れだす
謳おう
この足を下ろす先が...月下遊泳
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永遠を瓶に詰めたら
どんな色をしているの?
そしてそれを飲み込んだら
一体何が変わるの?
泡沫を掃いて捨てたら
どんな音を立てゆくの?
そしてそれを集めたなら
一体何ができるの?
あなたには
永遠を噛んで食んだら...fin
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紙飛行機の離陸地点
黙想する窓辺
例えば何のことを、と
問われれば言葉もなく
誰かの影を踏んだ
揺らめかせて苦笑した
唐突に冷めていった
ぬるい指先が好きだった
夕暮れに犬も鳴いた
振り返って思考した...透過
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木洩れ日を纏い
月の虫は何処へと
向かうのだろう
還るのだろう
約束を嫌う
花の背に手を鳴らし
轍は永く
何処へと向かう
優しい緑の鐘で
この朝を鳴らして...往来の森
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君が忘れた僕の名前も
今は灰の中で
目覚めを待つ、そんな顔をするから
僕も笑える
錆びた寝顔で朝日を浴びる
夢は杞憂だけど
視界を待つ、わずかな隙にさえも
溶けて蕩ける
特別な鍵で閉ざされた
扉を開けたくて...デイブレイク・テラー
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絡み合った鋼を解くように
安らぎが肺に溜まってゆく
貴方の腕に
抱かれて眠る正午
啄むように浅く刺さる棘
晒した足につく傷がもし
化膿したなら
抜け出す必要もない
喩えようのないほどに
わずかな毒で...私は翡翠