吹憐の投稿作品一覧
-
もしも世界が箱の中なら
貴方小さな螺子になって
どこまで転がっていくの
どこまで転がっていくの
黄昏色の屋根へのぼって
わたし遠くを見渡すから
名前を呼んだらこたえて
どんな果ての涯にいても
わたしの声が 貴方の声が
それぞれの耳に届くまで...螺子巻きオルゴォルチカ
-
甘い話を鵜呑みにして
齧りついた貴方の中指
苦い真紅の一滴で
酔いの回るあどけない私
好きでしょう?
騙し騙されどうせならば
腐りかけの甘さを試そう
生え揃わない牙の疼き
貴方の肌にうつしてみるの
良いでしょう?...Puppet play
-
祝祭の歌が聴こえる
窓を開けて
遠からぬ人の帰りを
待つのは誰
花売りは靴の音響かせて
三階のカナリアと笑う
“フィルネーラ”
“フィルネーラ”
おいでよ
思い出が手招くこんな日は...花の祭
-
水泡の刻むノイズ
緩やかな忘却の
不確かに歌う人魚
記憶を食む白い腕
Fantasy in the morning.
In the morning.
Morning.
灰ガラス映る迷夢
もどかしい循環の
薄い膜に包まれて...F.I.M
-
鉄塔の上に立って
目を閉じて耳を澄ませば
聞こえてくる
眩暈のような優しい声
気の遠くなるくらいに
待ち続けて待ち惚けた
なんて嘘さ
ずっと支度をしていたんだ
ゴーグル越しの夜空
何も怖くはない...新世界へ
-
ガラスの王様
あなたを見つけてよ
太陽の眠る前に
迷宮の奥で
足を痛めている
僕の記憶に伝えて
石の唄と
草木の朽ちる薫り
時の彼方に
綻びていくあなたの手を...水底の国
-
群青纏って ぼくは行こう
あの鉄線の向こうまで
柔らかく冷えた 夜気を吸って
あの鉄線の向こうまで
黎明の匂いがする
姿は今夜も見えはしない
湿気た睫毛 すり合わせて
泣けないわけじゃない
泣きたくはないだけさ
膨れる夜 羽織っていく...塵になる夜
-
本当のことを訊かれたら
きっと泡になって
僕は消えるんだ
春色の指で謎を解く
怖いもの知らずに
君は笑うけど
まやかしの鍵を握らせて
心臓へ導く
僕を嘲笑ってよ
開かないことに安堵して...Mr.April
-
飴色に縁取った窓
蔓草で覆い
真鍮の月を飾ろう
夢見る真昼のこと
枯渇びた色のランプ
精霊の番
どちらも同じ枠の中
絵画に変えて愛でる
退屈は君を微睡ませる
緩やかな毒となるようだ...まほろ夜
-
天井裏のロミオが
逢引に夢中なんだ
街角のジュリエットは
文通で恋をしてる
十字路の先に暮らす
秘密の伯爵だって
どうにもならないような
初恋に溺れている
踊ろうか
何時ぞやの夢の中みたいに...ニゲラ
-
雨降らしの住んだ
扉が今は朽ちてる
渦巻き足の椅子
夕映えに歩いていく
あの思い出を曲がって
そしたら君の家だね
揺らめく幻のような眩み
たおやかな色で埋まる
眸の呼吸に世界は泣いて
ああ夢の覚める音が...Kadan
-
古びた僕の
ブリキの熱が
君を焦がして
やまないようだ
形はいつか
壊れて崩れ
それでも君を
記憶しようと
足掻く
枝葉のような...J
-
一人じゃないとか
手を繋ごうとか
本当はもうそんなこと
どうだっていいの
優しい嘘とか
醜い真実
同じに見えて仕方ない
あなたもそうでしょ?
いっそ両手両足の先から
電流を流すみたいに...愛を、心臓に届くほど愛を
-
水中分解していくピアノ
36の追想と
52のシグナルたちが
手をほどいて 散った
思い出は水溶性のスコア
黒鍵の上で踊って
叩くように奏で上げた
題名もないのに
揮発性ブルーの雨が降る
愛していたよと呟いたら 消えた...Pandora
-
深呼吸の透明度を
一と数えるとき
君を例えることに
一体どれだけの時間を要するだろう
拡散してくリフレイン
≪涙が出そうだよ?≫
目にも見えない雨と
僕を抱いて巻き上げる空気の渦の中
呼んでいる声は
いつも瞼の裏に...クオルレリア
-
神様の夢はあまりに綺麗で
覗いた僕が悲しくなった
美しいほどに遠ざかるものも
目にしていたいと思うのは何故
歓迎の歌が雪崩れ込む
記憶の海は砂漠と似ていた
許さなくても赦しているから
僕じゃない僕を愛して
夜の帳に抱かれた腕が
誰かの涙で重くて...水無月午後より透明な
-
月光に似たサイン
溶けていく砂糖
何物でもない明日
僕を語る君
シナモンと林檎色
陶器の微睡み
欠けるまではかじる飴
触れて滲む夜
きらきら光る指輪を入れて
見えなくなるまで煮よう...antique
-
散々愛して思ったことは
なんだやっぱりこんなものだ
皮肉にもそれに気づいた朝に
君は素足で珈琲を淹れた
午前七時と夜更けの夢が
煙になって混ざって消える
そこにあるラヴソング
拾ってよ
折れているかもしれないけれど
そしたら綺麗に貼りつけて...エレジスト
-
気泡の弾けた瞬間に、零した言葉は消えてしまった。
遠くで誰かが奏でるオルガン、どうりで目覚めがいいや。
ああほら、どこかが呼んでいる
リイロウリイロウ、朝だよ。
片足立ちで歩いてゆこう、絵空事だって試すよ。
泡沫はそこに存在しているだけでいいと、気づいてしまえば簡単で、君もだろう?
夢見の悪い夜でも...オリオンテール
-
もしも貴方が望むのなら
この両目など
塞いでみせよう
もしも貴方が願うのなら
この両手ごと
すべて差し出そう
肩を寄せて笑うことさえ
厭う貴方の望みならば
今 空が裂け
雨が降り...ある世界の子守歌【楽師様決定】
-
ハイネの心臓は赤く
歪な林檎でできている
熟れて崩れる寸前に
もぎ取る約束をしている
影さえ作れないほど白い
小指を切って どこへやろう
嘘吐きハイネ 樫の木ハイネ
しなびた林檎を捨てられないで
あの子の記憶の中でしか
生きていやしないのに...ハイネ
-
あなたのいない夢を数えて
眠ろうか、遊魚。
途方もなく広い海の中
この耳を塞ぐの
蒼い鼓動が鳴いている
どこかの夜と共鳴する
あなたの声を探すほど
この灯火は揺らぐ
冷たい指でいいから
心の奥を抉って...ユメウヲ
-
君が探してた月の結晶も
石の女王も 魚の翼も
すべてが螺子を巻き戻されて
生き返った世界が
此処だったらどうしようか
朝の光に焼き尽くされた
さよならが燃えている
すべてが嘘であったとしたら
きっと僕は旅立つ
あの絵本の歌った...螺旋の外
-
演じた喜劇の数は
僕を包む
悲劇の七と二分の一で
夜更けの舞台で今は
壊れかけた
時計のように佇むのです
ら らら ら ら
幕引きはいつも僕の
足音まで
滑稽なワルツがお約束...屋根裏のピエロ
-
踝の蒼い蝶が飛び立って
庭先の木が実をつけた
転がる前に摘み取れと云うのに
この腕を払うのはなぜ
玉のような午後は
飲み込むたびにつかえて
ひどく緩やかに落ちていく
瞼と空の太陽
色褪せた芝の上に
転がる檸檬のような...サイミンレモン
-
ベランダの星屑
君に飾ってもいいよ
祝祭の夜の名残
きらきら煩くて
目についたから拾った
それだけの理由だから
靴箱の翡翠も
君が飾ったらいいよ
あちらは聖誕祭の
ブローチが壊れて...暮れひかる街
-
君があまりにゆっくりと
この線を歩いていくから
僕はさよならが言えない
もう腕は届かないのに
君があまりに清潔な
さよならを残していくから
僕は涙も流せない
すべては汚れのようで
この感情の裏も表も
途端に醜く見える...ライン
-
がらんどうの繭
君は揺すって
私ここで眠っていたの
薄紫に笑う
頑なに閉じた
貝殻みたい
浅い色の目蓋が二つ
きらきらけらけらと
目を覚まして
夢の話をする朝...ヨスガラのうた
-
瓶詰めの神様
もう一つ
季節を作ってよ
これから生きる日が
ありふれてしまわないように
永遠の束の間
もう早く
時間を回してよ
独りきりの夜に
決まった夢ばかり見ている...光の骨
-
楽観主義者の慟哭も
時には川になって
素足を濡らしていくから
地図は変わり続ける
私はそれを指の先で
一粒だけ掬って
瞼に塗って泣いたふり
太陽が出て乾く
知らない日々を数えて
明日は何処へ行こう...花咲く谷
-
街明かりが眠り
名もない国のパレードが
影を従え堂々巡る
列車は彼方へと
猫を担いでオルガンを
弾かせに行った
そんな話さ
意味のない音は溢れ
君を踏んで
踊り明かすのだろう...我楽多夜行【曲、動画有】
-
優しい膚だと誰かが言った
綺麗な目だとも誰かが言った
このままでいようと思うから
安心してねと笑って 嘯いた
冷たい膚だと誰かは言った
濁った目だとも誰かは言った
瞬きする間にいなくなるよ
忘れておいてと笑って 声もなく
泣いてみたってそれも嘘で
涙に色なんてないし...カメレオ
-
雨傘に純白の
鯨を飼い始めて
少し高い音まで
聞こえるようになった
爪先に紅色の
珊瑚が根づいてゆく
私の呼吸には
無数の泡が 揺らぐ
肺を昇れ
七色の海月...海になる
-
あの長い川がすべて
凍る夜なんてないから
向こう岸へは行けない
貴方にだって逢えない
それでよくて
黒髪だけが伸びきって
すっかり影絵のように
変わり果ててしまって
嗚呼なにが悪いの
この目にも唇にも...左岸の華
-
昔々の箱庭語り
貴方の求めた飴細工
全部綺麗なまま閉じ込めて
硝子のケースに蒼ライト
鳴らないピアノと歌うミシン
貴方の首元 銀細工
甘い香りの錯覚さえも
ついに真実だって微笑う
その横顔が凍りつくほど
仄白くて...リトリロ人形劇