安酉鵺の投稿作品一覧
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鍵を開けて貰い、火の様に熱い緋織を抱えて家に入った。矢鱈片付いた家はどこか生活感が無い。
「緋織ちゃんのお部屋、確か2階だったわよね?」
「暑い…暑い…痛いよぉ…。」
意識はあるが目が虚ろで息も少し弱くなっていた。来留宮と真壁も状態の悪さに青ざめている。一先ずリビングのソファに寝かせ相談した結果救急...いちごいちえとひめしあい-74.隠された言葉-
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少し眠ってしまったらしく、軽く頬を叩かれて目が覚めた。ゆっくり目を開けると旋堂さんの姿があった。金色の髪に一瞬緋織かと思った訳だが。
「酒抜けたか?」
「多分…すいません。」
辺りを見回すと解散したのか人影は無く、旋堂さん以外は片付けをしている雉鳴弭だけが動いていた。起き上がった俺に気付くとトコトコ...いちごいちえとひめしあい-73.残念な美人-
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そう遠くない自分の家に戻ってから車に乗ろうとした時、私用携帯が鳴った。緋織からだった。
「もしもし?熱で倒れたって聞いたけど…。」
「もしもーし!あの!来留宮です!」
劈く様な声に何故お前が出る?の疑問と共に若干の怒りを覚えたが、倒れた本人が電話に出られないのだと合点が行った。話をまとめると一之瀬が...いちごいちえとひめしあい-72.泣きじゃくるまま-
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玄関のセキュリティを見た時に引き返せば良かったと今更思う。コンビニの袋と普段着が激しく似合わない、と言うか格差を感じる瞬間。躊躇う私に気付いた雉鳴さんが手招きをした。
「彩花ちゃん、どうしたの?ほら、おいで。」
「いや、その、凄いマンションだなぁと。」
「まぁ、貰い物だから、気にしないで。」
マンシ...いちごいちえとひめしあい-71.爆弾を平気で投げる-
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俺は実に納得が行かないで居た。そもそもファミレスとは食事をする場所、即ちある程度落ち着ける場所でなければならない。しかし現状は何かが間違っていた。
「うっわ、何あの美形集団、撮影か何か?」
「あ、あの子知ってる!ほら、このサイトの女の子だよ、前写真ダウンロードしたもん。」
「金髪の巨乳ちゃん居なくね...いちごいちえとひめしあい-70.公衆の面前で-
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部屋中に綺麗に並んだぬいぐるみを見て不覚にも少し和んでしまった。あぁ…限定版うさうさグッズがあんなに一杯…キャラメルハニーうさうさなんて見るのも初めて…。ふかふかそうだなぁ…。私はうずうずする手を抑えつつチラリと一之瀬…じゃない、間さんを見た。来留宮先輩に事情を説明しつつ何かフォローしてるっぽい?い...
いちごいちえとひめしあい-69.うさぎ天国-
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よく、漫画や映画なんかにあるベタなシチュエーションに、家に行ったら豪邸で門から玄関まで5分掛かります。なーんてのがあったりするけど…。
「普通!」
「何を期待した?何を?」
「豪邸とか?」
「あー、そう言うのみたいならまた今度ね…取り敢えず入っ…ああ、引くなよ?」
家に入る前に敷居の高い前振りされた...いちごいちえとひめしあい-68.落ち着かない部屋-
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どう言う訳か嫌な予感程よく当たる。盗み聞きは良くないけど、緋織ちゃんを誰かと2人きりにするのはどうも気が引ける。あの子は何と言うか…危なっかしい気がするのよね…。そして隠れて見ていたら案の定泣かされちゃってるし、強いんだか弱いんだか解んない子だわ。
「はぁ…何してるんですか、緋織ちゃん泣いちゃってる...いちごいちえとひめしあい-67.瞳の奥で-
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素材・桜と海と
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ドアが閉まる音に飛び上がりそうになった。どうして良いか解らず本能的に来留宮先輩を見遣った。
「じゃあ、私これで。」
「つれないねぇ。」
「聞かせたくない話みたいですし。」
「ま、待って下さい先輩!こんな所に置いてかないで下さい!私が頭から食べられちゃったらどうするんです?!化けて出ますよ?!」
「俺...いちごいちえとひめしあい-66.悪趣味ですから-
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解散場所に着いてから、皆は複雑な表情でバスを降りた。それぞれの顔に不安や焦りが見て取れる。
「警護は警察とも連動するから、そんなに怖がらなくて良い。」
「余計物々しいです。」
忙しない雰囲気の中、真壁さんは荷物を持ち上げると、軽く皆に会釈をしてスタスタと行ってしまった。
「ひお、一応会社で説明あるみ...いちごいちえとひめしあい-65.反転-
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バスの中で皆がそれぞれの鍵を見詰めていた。胡散臭そうな目で、或いは不思議そうな目で。
「この鍵多分GPSみたいな物が組み込まれてる、それから支給された携帯との相互認証も。」
「嘘?!そんな高度な技術で出来てんの?!」
「鍵を落としたり盗まれたりしたら大変だからね、支給された携帯と一定距離離れた場合は...いちごいちえとひめしあい-64.玉葱とトマト-
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マグガフィン
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旅行先から戻るバスの中、朝早かったせいか寝息を立てている物が殆どだ。昨日ギリギリに完成させたイベントの企画をサイトに更新しようとした時だった。
「え…?」
『認証パスワードが違います』と言う赤い文字が表示された。打ち間違えた訳ではおそらく無い。しかもこんなエラーにこんな文字は入れてない。試しにもう一...いちごいちえとひめしあい-63.マクガフィン-
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明日の朝には出発と言う事でお土産を含めた荷物をまとめていると、ひおが戻って来た。
「お帰り、大丈夫?ひお。」
「うん、寝不足が原因だったみたい。」
ひおは笑っていたけど、やっぱりちょっと元気無さそうだった。心配になってぎゅーっとひおを抱っこしてみる。
「頼りないかも知れないけど、出来る事あったらちゃ...いちごいちえとひめしあい-62.最弱ナイトの選択-
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救護テントに付いたのは連絡を受けてから15分程経った頃だった。ベッドの上で座っている緋織とその脇に瀬乃原彩矢の姿が見える。こちらの姿を認めて輝詞が口を開いた。
「館林さん、早かったですね。」
「緋織の様子は?」
「貧血みたいです、今は落ち着いていますが彩…瀬乃原さんの話だと急に具合が悪くなったみたい...いちごいちえとひめしあい-61.複数の光源氏-
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日が落ちて辺りが暗くなり始める頃、私達は人ごみの中を歩いていた。星舞祭りの名前通り、あちこちに星型のランプが灯っていて綺麗だった。と、前から急に人の波が押し寄せて来た。
「わっ?!ちょっ…?!すみません、通して…!」
声も空しく私は輝詞さんとあっさりはぐれてしまった。何とか人ごみを抜け出したけど、何...いちごいちえとひめしあい-60.無数の目-
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<A>
抜け殻の君は紡ぐ いつもの作り笑顔で
<B>
培われた仕草 洗練されてく嘘
煌びやかな部屋で 打算の花が咲いて
<2A>
相槌すら同じでも 見透かされず君は
<サビ>
触れられて肩を寄せて
目の前の人を見詰めて...歌詞【SpiderPrincess】
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意気込んだ佐藤女史が突然に提案した企画のお陰で、最終日だと言うのに俺を含めたチームの皆は仕事に追われる羽目になった。確かにここの所目立った動きも無いし何か挟めないかと言う意見は出ていたのだが…。
「ラフ稿上げました、チェックお願いします。」
「お疲れー、暫く掛かるから輝詞君も休憩して来て良いよ。」
...いちごいちえとひめしあい-59.ヘタレ一刀両断-
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最終日なのに私は殆ど上の空だった。テレビや映画みたいな場面を目の当たりにして動揺していたのと、悩むのも性に合わなくて緋織ちゃんに聞こうと思ったんだけど中々チャンスが無かった。なので…。
「何で緋織ちゃんにキスしたの?」
「いや、直球過ぎるでしょ、君。」
暇そうにしていた真壁さんを捕まえて聞いてみる事...いちごいちえとひめしあい-58.才能の無駄遣い-
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私は今日も美術館に居た。彼に会う為に。
「本当に綺麗…。」
そっと手を触れるとすべらかな手触りが心地良い。店の中央に光を受けてキラキラと輝く、非売品と書かれた美しいアンティークドール。それが彼だ。店主は何度頼んでも譲ってくれず、こうして店に通い続けていた。毎日毎日通う内、私の中に恐ろしい欲望が湧き上...影人形
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甘杉コイ
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何だか色々あった温泉旅行も最終日、正直ちょっと回りがイチャイチャしてて鬱陶しかった。
「若葉、若葉、この近くに隠れ家的和風カフェあるんだって!」
「行かない。」
「えっ…そぉなの…?あ、じゃあこっちの和菓子の…。」
「行かないって言ってるでしょ!」
自分の声にハッと我に返った。彩花が呆然とした顔で私...いちごいちえとひめしあい-57.動けない-
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<A>
歩き続けなきゃダメなんて 一体誰が何時決めたの
転んだら痛いでしょ だから止まっても許してよ
<B>
銀色に光るシェ-カー 中身は昨日までの私
思い切り振って良いですよ どうせ飲み干してやるからさ
<2A>
陰口は反則だとか 一体誰が何時決めたの
頭にきたら言っちゃうでしょ カウンターを叩い...歌詞『MagicShaker』
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甘杉ジジ
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ハロウィンGUMI
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素材・ハロウィンナイト
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窓から差した朝日が眩しくて目が覚めた。まだボーッとしてる頭で起き上がった時、手にサラサラした物が触れた。何これ?取り敢えずなでなでなで…と。
「んー…?もう朝…?」
サラサラした物はだるそうな声と共にむくりと体を起こした。色素の薄い髪が日に透けてキラキラしてる。そこで初めて私の思考は戻った。
「お早...いちごいちえとひめしあい-56.戦利品-
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響さんは緋織ちゃんと2人で話がしたいと言ったので、私と館林先生は少しの間時間を潰す事にした。と言っても今更外出する訳には行かないし、かと言ってあまり2人をそのままにして置いても良くないので温泉へ入って来よう、となったのだ。
「ぷはー!やっぱりイチゴ牛乳だよね!」
「甘そうだな。」
「えー?美味しいよ...いちごいちえとひめしあい-55.何気にチェック-
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素材・霧の森(山火事)
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素材・森
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侑俐が祭りに来ない、と言う話を聞いて何と無く嫌な予感がしていた。正確にはまずい事になっていそうな予感だ。流石に夜通し祭りに居る訳にも行かなかったので日が変わる前には旅館に戻って来たのだが…。
「なぁ、浅木、お前はどう思う?」
「緋織ちゃんがベッドで熟睡してますね。」
「で、侑俐はソファで寝てる…。」...いちごいちえとひめしあい-54.拷問な条件-
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言葉も無いまま真壁さんをじっと見詰めていた。暫く視線を泳がせていたが、観念したのか少し距離を取ってベッドに座った。
「その、さっきは本当に悪かった…。」
「教えてくれませんか?」
「え?」
最初は込み入った事情とか、それこそ身の上話なんて聞くつもりは無かった。気まぐれか遊びだと思ってたから。だけど私...いちごいちえとひめしあい-53.ジレンマ-
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しふぉんを送った後、皆もそれぞれ自分のパートナーを呼んで星舞祭りに行こう、と言う流れになった。だけど、私は何となく行く気になれなかった。しふぉんが七海さんと楽しそうに居るのを見たら凄く羨ましくなるのが、蔭澤先輩が侑俐さんと居るのを見たら嫉妬してしまうのが堪らなく嫌だったから。部屋に戻ってからふとテー...
いちごいちえとひめしあい-52.衝動-
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中々に美味しいお昼御飯の後、私達は部屋に戻って来た。3人部屋でメンバーは私、萌香さん、菫さん。同じ大学生でまとめた結果らしい。荷物をそれぞれ整理して置いてあったパンフレットなんかを眺めていると、チャイムが鳴った。
「はーい?」
「あ、あの…倉式です。ちょっと、相談したい事が…。」
意外な名前に私達は...いちごいちえとひめしあい-51.甘酸っぱい!-