†B†の投稿作品一覧
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3月7日。
PM6時20分
「私……もうすぐ死ぬんだ。ゴメンね、デル」
ハクの口からそんな言葉を聞いた。
信じられなかった。
あまりに突然すぎて、言葉を失ってしまった。
「私の寿命、あと一ヶ月もたないかもしれないんだ。思ったより病気が深刻化してて手術もできないらしいし」
ハクは微笑みながら、そう呟い...三月の雪 3/9
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『もう10年は降ってないんじゃないかな。多分、今年も降らないよ。せめて――』
何故か、さっきハクが言っていた言葉の続きが気になった。
一体何を言おうとしていたのだろう?
デルは病室を出ると、病院のロビーにある自動販売機の横のソファに座ってその事を考えていた。
考えれば考えるほど知りたいと言う感情は強...三月の雪 2/9
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3月6日。
PM6時10分
「305」と書かれたナンバープレートが、扉の脇の壁に貼りついている。
ナンバーの下には、黒いマジックで「弱音ハク様」と書かれていた。
その病室の患者の名前であり、中学の時からの友達の名前でもあった。
デルはその病室の扉を軽くノックすると、片手に持った分厚い雑誌の束を抱え直...三月の雪 1/9
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3月6日。AM6時40分。
ピピピピッ、ピピピピッ……、という定期的かつ機械的な目覚まし時計のアラーム音とともに、条件反射のように目を覚ます。
朝の静寂の中、音を発するものは目覚まし時計を除いて何もない。
そして、病院の狭い個室の中ともなると、その音は壁にぶつかって跳ね返り、やけに大きく響いているよ...三月の雪 ―プロローグ
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翌日。
「う~、腹痛ぇよぉ~」
会社の机に顔をつけて、脱力感オーラを身にまといながら、さっきから同じ事を繰り返すカイト。
その傍らで、ハクは仕事を片付けながら、時々ちらりとその様を見ていた。
会議はなんとか無事に終えた。
しかし、先輩は会議から帰ってくるなり、超特急でトイレに向かったらしい。
どうや...先輩と私とお月見と エピローグ的な
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おちょこに入った原液のウォッカ。
私はそれをグイッとあおり、一気に飲み干した。
「……はぁ」
自然と溜息が洩れる。
お酒を飲んで、少し落ち着いたのだ。
「満足か?」
「……はい」
認めざるを得なかった。
明日は会議があるから、今日はお酒は飲まないようにと決めていたのだが、やはり私は誘惑に負けてしまう...先輩と私とお月見と 3 【終】
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「見張るって……何だか監視されてるみたいで嫌なんですけど」
「監視されてるみたい、じゃなくて、監視するんだ実際。明日は重要な会議なんだし、お茶くみ役のハクが二日酔いだったら、絶対惨事になるに決まっている。ハクの株は大暴落だ。それでもいいのか?」
「お茶くみなら私じゃなくても出来ますけど」
「いいや、...先輩と私とお月見と 2
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PM7:00
「おっ、ここのコンビニ、ダッツ安売りしてる。これは買い時だな」
カイトは、アイス売り場のアイスを無差別にかごに放り込む。
「あの、先輩、そんなに食べたらまた腹壊しますよ?」
「平気平気。俺の胃袋は意外と頑丈なんだぞ」
そうでもないでしょう、そう突っ込みたくなったが、止めた。
こんなのに...先輩と私とお月見と 1
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「またお腹下したんですか?懲りない人ですねぇ。アイスに限ったことじゃありませんが、食べすぎは体に毒ですよ」
溜息をつきながら、私は呆れた目でルカは目の前に座る患者を見上げた。
「性分なので」
「その一言で片づけないでください。全くもう……。次から気をつけてください……って、言っても気をつけませんよね...先輩と私とお月見と プロローグ:キャラ紹介代わりのコメディ
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このコンビニは色々とおかしい。そして、それに順応してしまっている自分もおかしい。
いや、正確には順応というよりか、諦めみたいなものだが。
ほぼ毎日、こんなところでバイトしていたら順応せざるを得ないというか。
まず何がおかしいのかと言うと。
――――店長がおかしい。
「挨拶の角度には三種類あってね、時...コンビニ店員の日常 【コメディ?】
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パチリ。
仰向けに目を閉じていた彼女は、静かに目を開けた。
「ここは……、どこ…?僕は……――?」
暗くて何も見えない……。白い明りはあるが、それは本当にわずかなもの。これらの明りがなければ、本当にここは闇に包まれるだろう。
「お、アンタ、目覚めたのかい?」
遠くの方で声がした。そこにいたのは、彼女...ネジと歯車とプライド 2 【終】
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「ちっ、また失敗作です。これで二つ目。どうしますこれ?」
ベルトコンベアーで運ばれてきた人形を手にとって、若い作業員らしき男は言った。
帽子を深々とかぶって、地味でくすんだ緑色をした作業服。その服の右胸には、「C factory」と黄色い糸で縫われた文字。工場なんかでよく見かける、模範的な服装だった...ネジと歯車とプライド 1
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「一秒でも早く」ハクの病院へとデルは走った。
病院とデルの働く会社は同じ市内にあると言えど、走るとなるとかなりの距離がある。
デルは複雑に交差する道を何度も曲がり、時につまずいた。だがそれでも痛みを感じている暇などない。というより、今のデルの心は「早くハクの病院に着く事」。ただそれだけだった。
空に...三月の雪 6 【終】
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PM0:00
休憩時間。仕事を一段落したデルは大きなあくびをして椅子に深くもたれかかった。
デルのする仕事は主にパソコンを使うもので、一日中デルはパソコンの前に座ってカタカタとキーボードを叩いている。一日も座っていたら肩がこるんじゃないかと思われがちだが、それがもう慣れてしまっているデルにとっては、...三月の雪 5
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AM4:00
ハクはその日、いつもよりも早く目が覚めた。
ふと窓に目を向けると、そこから見える外はどんよりとした灰色の雲が空一面を覆っている。昨日は雲一つもない晴天で、満月もよく見えたのに、今日は一体どうしたんだろう?
ハクはベッドに付属されている小さなテーブルに置いてある新聞を取った。昨日ハクが一...三月の雪 4
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ハクが集中治療室に運ばれてから、もう2時間は経っただろうか?
自分では病室でずっと待っているつもりだったのに、デルの足は無意識に集中治療室へと赴いていた。
大きい鉄の扉の上には、『使用中』というランプが点滅している。という事は、まだハクは治療を受けている最中なのだろう。
気を紛らわそうと、近くの自動...三月の雪 3
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no logic
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翌日。
デルは会社勤めを終えると、急ぎ足でハクの病院へと来ていた。急いだとはいえ、もう時刻は夜の8時を回ってしまっている。
デルは今、ハクの病室の外まで来ていた。
「ハク?入るぞー?」
「うん。」
か細い返事が中から聞こえた。それを確認すると、デルは病室の扉を開けて中へと入った。
入ると、ハクは何や...三月の雪 2
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「はぁ……。」
その盛大な溜息が、沈黙の薄暗い病室を満たした。
「どうしたんだ?溜息なんてついて?」
窓際に立って煙草を吸っていたデルは、そのまま傍らのベッドに向き直った。
そこには溜息をついた女性、弱音ハクがその上半身だけを起こして、何やらうつむいていた。
「ううん、なんでもないよ……」
「何でも...三月の雪 1
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晴れ渡る空。雲一つさえない澄みきった青。
街ではミンミンとあちこちで蝉が鳴く。
去年にも増してそれはうるさく聞こえる。
前に聞いた時は、このうっとうしい鳴き声でさえ快く聞こえたのに、
何故こんなにも急に、うざったく聞こえるようになってしまったのだろう?
――街の中の公園。
俺はそこのベンチにだらりと...Gift from you
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大体この世の中は不平等というか不公平というか。
選挙の投票権は20歳から。
それは今や子供でも知っている知識。
しかし一昔前までは投票は25歳以上の男性にしか権限がなかったのだ。女性は投票することを許されない。
まぁ、おそらくそれも知っていよう。
そしてさらに昔のことにさかのぼる。
昔は今よりもっと...Left―handed プロローグ
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ああ、僕、海の底寂しい。。
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(再うp)KAITOで「フランベルジェ」