イズミ草の投稿作品一覧
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第五十二話 目的
「……っく……」
あたしが目を覚ますと、そこにはレンとおりんと、そのほか数名とともに、どこかの客間にいた。
だいぶ長く人間界に住んでいるが、ここは来たことがない。
「だから、あたしはおりんを助けに行こうと思って、レンを見送った後荒れ屋敷に戻ったんだけど、なんだかそっからおぼえ...ノンブラッディ
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第五十一話 全て
私たちが寿々屋へ戻ると、時すでに遅し、おかみさんは息をしていなかった。
前の少しふくよかな優しい雰囲気は感じられない、凛とした長い桃色の髪を畳になびかせ、眠ったように。
「お……っかさ、ん……?」
おりんさんは、急いで駆けよった。
雪は――いつの間にか降りやん...ノンブラッディ
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第五十話 あの人の意思
「ねえ、そんな顔しないで? 私頑張ったの――あなたのこと……まもろうとして……」
おりんさんは私を抱きしめながら悲痛に訴えてきた。
今にも泣きそうな顔して、今にも零れそうな涙を溜めて、今にも壊れそうに身体を震わせて。
「ねえ……おっかさんが言ってた、私人間じゃないの……...ノンブラッディ
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セトくん誕生日!!!
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第四十九話 こんなことしてほしくなかったのに
「おりんさん……そこに倒れているのは……おとて、さん……ですよね……?」
「わからない。だって、私が守りたいって思ったら、おとてさん、紅い髪になって……血を……吐いて……」
どうして?
おりんさんは、人間だ。
どうして?
どうしてこんな、こんな...ノンブラッディ
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天然少女×不良少女
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第四十八話 あの人のおもいで
「っ……あぁぁ……は……はぁ……」
突然私を襲った激しい頭痛。
そして私の中に流れ込んできたのは、おそらくおかみさんの記憶だ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
いろいろとわかったが、今一番最初に考えないといけないのは、おりんさんだ。
彼女はおかみさんの子だ。
しか...ノンブラッディ
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エネの電脳紀行
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第四十七話 愛ゆえに
生まれた子を、『おりん』と名付けた。
七つまでは神の子といわれる此の江戸の世で、おりんは病などに一切かからずに、すくすくと育っていった。
ここ数年かで変わったことと言えば、メイコがこの世界に少しだけやってきたこと。
メイコは私が放棄した研修で好成績を収め、今や学園の副学園長...ノンブラッディ
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第四十六話 大事なもの
私とお依亜さんのことを、気づくものは誰一人としていなかった。
そして、祝言をあげ、忙しく本格的に我久屋で働きだした。
奉公人のるか。その存在を知っている者はこの世界に一人としていない。
魔界の掟を破ってまで、こちらを選んだ。
両親、種族、親友、たくさんの者を裏切っ...ノンブラッディ
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第四十五話 彼女の明日
お依亜さんから、少しずつぬくもりが消えていく。
それを私は見守るしかできない。
できるだけ苦しまず、楽に。
それが私がしてあげられる、ただ一つのこと。
「馬鹿だと思うでしょう……?」
こんなときでも、お依亜さんは笑っていた。
悲しそうに笑っていた。
「でも、あの人も...ノンブラッディ
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青蝶さん【アイコン】
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第四十四話 選択
かたり。
微かな音をさせながら、私は真夜中に部屋へ入った。
私ども奉公人の部屋ではない。
若旦那の許婚の、お依亜さんのへやである。
「……ごめんなさい……」
あれから、二日たった。
私は考えに考え、私がお依亜さんを殺せば、若旦那を陥れることができると気がついた。
許婚を亡...ノンブラッディ
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第四十三話 あなたを殺して、私は
「私を、殺して」
そう言ってきた。
少し暖かい、夕暮れだった。
お依亜さんは、涙をいっぱいに溜めて、そう私に懇願してきた。
彼女が死ぬ理由など、なにもない。
若旦那との縁談は、本決まりになって、幸せなはずなんだ。
それなのに、どうして彼女はいま、こんな泣き...ノンブラッディ
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貴音
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來佳さんへ! 塗り絵コラボ
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第四十二話 気がついたのは
はやく、しないと。
早くしないと時間切れになってしまう。
もう研修が始まって二週間が経った。
本来の予定ではもう帰っているはずだったのに。
どうして……どうして、あの若旦那を陥れることができないんだろう。
何度も取り込もうとした。
洗脳しようともした、感情をなくそ...ノンブラッディ
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第四十一話 許婚
若旦那を陥れることは、私の想像を遥かに超え、困難を極めた。
なんといっても、一店主して次代を担うとは思えないほどの、能天気。
金子の管理は番頭に任せきり、注文をすぐに忘れる。
陥れるのは持って来いの人材なのに、我久屋へ奉公に来て七日が経っていた。
なぜこんな者が、若旦那になる...ノンブラッディ
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第四十話 我久屋
我久屋の若旦那は、あれこれ私に話してくれた。
こんなただ今日から奉公するだけの、見ず知らずの娘に、こんなに色々話していいのか。
それは、心の奥に秘めておくことにしよう。
「……あら、若旦那。お客様ですか?」
唐紙が開く音とともに、鈴を転がすような澄んだきれいな声が聞こえた。
...ノンブラッディ
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來佳さんへ……!
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第三十九話 若旦那
私に研修として言い渡された場所は、≪人間界≫の≪江戸時代≫というところらしい。
さまざまな文献や資料を参考にして、生活習慣、言葉づかい、礼儀作法、文化、どれもこれも完璧にしてきた。
これで私が人間ではない、もはや≪悪魔≫であるとは、誰にもわかる筈がない。
重苦しい下界へ...ノンブラッディ
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過食性:アイドル症候群
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天然少女×不良少女
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第三十八話 あの子
――馬鹿だと思うでしょう……?
こんなときでも、あの子は笑っていた。
悲しそうに笑っていた。
――でも、あの人もあなたも、それを望んでいるはず……。
いいえ。
それはわからないわ。
だってこの気持ちが何なのか、私にさえ分からないというのに。
――嘘はつかないで……。
...ノンブラッディ
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第三十七話 悪魔の人
「君には学園をあげて期待しているからね……ああ、そうだ、実に物分かりがいい」
私の前に立った学園長は、私の発言についてそう言った。
私の「私が学園長室に呼ばれた理由は要するに、すぐれた成績をこの研修で修め、他の生徒たちの手本となるように、ということですか」という質問にだ。
...ノンブラッディ
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夜咄ディセイブ
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第三十六話 昔々のそのまた昔
「……あ、おかみさん、よかった……。目が覚めましたか?」
目を開くと目の前にいたのは、私が娘を任せて逃がした、奉公人の姿だった。
しかしただの奉公人ではない。
彼は、魔界からきた、≪ヴァンパイア族≫だ。
「私がここに来た時には、もうおかみさんは倒れていましたよ。お...ノンブラッディ
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rin
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カイトおめでと!
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失敗
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在来ヒーローズ
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第三十五話 どうすれば信じられるというのか
ぐみを突き放して私が来た場所。
それは今ではもう懐かしいほどに馴染んでしまった「寿々屋」だった。
あの大勢の暴漢たちはもういないようだ。
気持ち悪いほどに静まり返っている。
暴漢たちの所為で、お客さんも一人もいない。
私は慣れた手つきで店の暖簾...ノンブラッディ
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第三十四話 どうかこの手をとらないで
「ね、レン……一緒に帰ろう……?」
出来ることなら。
このまま帰って、このことはすべて忘れて。
私たちの世界でのんびり暮らせたら。
きっとレンは縛られることはないし、またあんな思いをすることもない。
カイトも、レンの親父さんも、みんな――あたしも―――...ノンブラッディ
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笑って
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雪ミク