Ruined Princess #09
度重なる手術、長引く入院は徐々に人々の心を蝕んだ。それは十音だけではない。彼女の両親もまた金と体力の消耗に耐えかねていた。病室で度々会っていた母親はいつからか全く姿を見せなくなった。ナースの噂話によると、鬱病になったらしい。
見舞いに来る父親の顔は憔悴しきっていた。病院の入口で携帯電話をかけ、借金の督促から逃れている様子も何度か見ている。
俺は間違った判断をしたのだろうか。多くの人を不幸にして、俺のエゴで十音を生かした。何も持たない、何の責任も取れない子供の俺が下してはいけない決断だったのかもしれない。
苦しそうに眠る十音を見ていると、後悔の念も湧きあがってくる。
「高瀬君、ちょっといいか」