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【シナリオ】ごまかし師とアリア

赤茶けた石組みの道が迷路のように絡み合って、アリアの町はありました。何本もなんぼんもつながってできた道は大通りから裏小路まで、通らない場所はありません。らせんのようにぐるぐる連なった道はどこでも古い魔術に満ちていて、時折カラスの仰々しい音頭がそら一杯に響き渡っては、少しの不思議を日常に潜ませるのでした。
 そんな街でしたから、アリアにもほんの少し魔術が使えました。お砂糖をほんの少しだけ使って歯が溶けそうなプディングを作ったり、ちょっとしたまじないでうんと綺麗な押し花を仕上げたり。この町ではどんな人間でも、大小それぞれ魔術を使えない人間はありません。
 そんなある日のこと。アリアの町にサーカスがやってきました。大きな天幕、高くたかく上がる風船、ラッパの音がカラスの声を掻き消して、アコーディオンが陽気に誘いかけます。赤、青、黄色、緑にむらさき、とりどりの女の子が羽を身につけ、ステップで手をこまねくのです。魔術を使わない出し物の数々はアリアの町の人々を夢中にさせました。この国には音楽がありません。音はまじないの呪文で、旋律はひみつの魔方陣。ですから、外国の人でもないかぎり、街中で音楽を行うことは禁じられていました。ですから、このサーカスのパレードを、楽しく思わない人なんてありえませんでした。
 けれど、アリアはちっとも楽しくありません。昔し、お使いのご褒美に連れて行ってもらった日から、迷路の隙間を埋めるような紙ふぶきはいつだってアリアを興奮させます。けれど、どうして楽しい気分にはなれません。なんだか腹がたったアリアは、踊り狂う紙ふぶきを残らず捕まえてやろうと、レンガ道に躍り出ました。なんだって今、サーカスなんて来るんだろう!
 紙ふぶきを追いかけ、おいかけ、おいかけ・・・、アリアはサーカスの天幕の中に飛び込みました。何枚も重なった天幕はシフォンのカーテンのようで、アリアはいつの間にか自分が誰かの魔法に迷い込んでしまったかのように思います。

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2016/11/18 12:20

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