タグ「呪音キク」のついた投稿作品一覧(35)
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謝罪
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蛍光灯の破片を掻き集めながら、再び調整に使われた研究室を見回した。砕け散ったモニターやガラス、壊れたコンピューター、千切れた黒いケーブル。あらかたの片付けを終えてもなお、この部屋には、数人が取っ組み合いの争いをしたような痕跡が残っていた。ましてや、凶気に操られたアンドロイドと科学者が死闘を繰り広げ...
Eye with you第二十話「露と消えゆ」
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そこには冷たい顔をした、見知らぬ少女が立っていた。その顔立ちこそ僕が忘れるはずもない、今までに多くもの思い出を作ってきた少女、キクのものであったが、その凍りついた、完全に生気を失った冷酷な表情と視線は、僕の知るキクのものではなかった。
「キク・・・・・・? ねぇどうしたの。返事してよ。」
彼女...Eye with you第十九話「呑まされた凶夢」
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散歩から帰ってみると、すでに研究室には数人の科学者(おそらく本社の者)が集まり、今夜の調整のための機材を用意していた。
研究室に立ち入るなり、彼らは挨拶もなしに「二人を調整用ベッドに寝かせてくれ」と命令してきた。
本社の人間は決まって冷たく命令口調で、僕と鈴木君はやはり反感を覚えたが、ここで逆...Eye with you第十八話「冷たい寝顔」
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一歩足を踏み入れただけでも、この部屋が私にとって以下に未知の空間であり、どこか落ち着きがなくそわそわとしてしまうものだった。
暖かい日差し、涼しい潮風、薄い肌色の壁、毛布のようなカーペット、本棚とそこに置かれた絵本と、色鉛筆とスケッチブック。
今まで触れたこともないようなものに実際に触れても、...Eye with you第十七話「つばさ」
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あれから数週間。どうにか本社にその存在を認めてもらえたタイトとキクの二人。だが、僕と鈴木君の仕事はそれで終わったわけではない。
これからたった二人の、しかもロクに子供と接したことすら無い男二人でタイトとキクの面倒を見ていなければならなかった。しかも、これがまた意外と過酷な作業で・・・・・・。
...Eye with you第十六話「絵空事」
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「ええ・・・・・・驚くほどの学習が早く、既に基本的な動作は完璧にこなしております。ご覧になれば、きっと驚かれるはずです。」
暖かい間接照明が照らし甘い香料が香る廊下を、僕は如何にもお偉方と言った風貌の背広の男達と歩きながら、些細な質問に対して大げさに、そして誇らしく語っていた。
二人が目覚めて...Eye with you第十五話「赤と黒の子」
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全てが停止した。
時間も。風も。ここにいる全ての者たちも。
キクが羅刹の如き奮迅ぶりでABLやテロリストのヘリを破壊した後、世界は、黄金色の月明かりに照らされた夜となった。
あれほど大地を焼き尽くし全てを飲み込んでいった炎は跡形もなく消え去り、ただ荒れ果てた無毛の地の上には、一人の少女が立ち...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十話「内なる何か」
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山の頂にたたずむ、炎に包まれた双角の巨人。
もともとは赤い髪をした少女。呪音キク。
炎に埋め尽くされた大地。
テロリスト。
だが、それを確認できたのもほんの一瞬だった。
「伏せろッ!!!」
不意に背後でタイトが叫んだ。
次の瞬間、巨人は炎そのものになり、俺達を取り囲む大軍団の中に突入...SUCCESSOR’s OF JIHAD第四十九話「悪鬼羅刹の如く」
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突如として転がり込んだその報は、この場所そのものを凍てつかせた。
ここにいると、危ない?
何故?
「キク。どういうことなんだ?何が危ない?」
決して取り乱さぬ口調で、タイトが問いかける。
『てき・・・・・・敵がきてるの。たくさん・・・・・・たくさん。囲まれてるよ。』
彼女の声には、まる...SUCCESSOR’s OF JIHAD第四十八話「紅き巨月」
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彼女に導かれるまま、俺は板張りの床へ踏み込んだ。
コンクリートや鉄とは違う、素足で感じるのは初めての感触に新鮮味を覚える。
俺と、そしてタイトは縁側に近い、ガラス越しに竹藪が映える客間に通された。
こんな日本家屋でも洋室ぐらいはあるのか。
「ちょっと待ってて。すぐに着替えてくるから。」
...SUCCESSOR’s OF JIHAD第四十七話「本拠地」
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・・・・・・。
仄暗い空間の渦中より視界が蘇った。
起床時間も近く、部屋の発光壁は外と変わらぬ光を部屋に行き渡らせている。
俺はベッドから這い上がり充電器のプラグを手首から外すと、スニーキングスーツに着込み、バックパックを取り付けた。
そろそろ時間だ・・・・・・。
レーダー用の端末を見る...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十四話「今度は・・・」
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午後九時十分。
全ての装備を解きヘッドに身を深く沈めると、脱力感としか言いようのない感覚に襲われた。
今日という日に行った任務は、今まで体験したどの訓練よりも意外な出来事だった。
人質は死に、今となっては仲間であるミクやキクに襲われ、ヘリの大軍団を相手にした・・・・・・。
今までに、二十四...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十三話「眠れぬ夜」
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追憶の内、今思えば、あれは一夜の夢であったような気がしてならない。
だが、実際夢ではなかった。
あの夜の出来事は、確かに起こった事態だった。
空軍配備の軍用アンドロイドとして、俺は遥か異国の地、今は無き国、興国の森林部へと、XC-2と呼ばれる空軍輸送機からパラシュート降下し、興国にある核ミサ...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十一話「月の下で」後編
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その巨大な鉄の空洞は、地下格納庫、と呼ばれている。
この水面基地に配備されている航空機は、全てここから地上の射出カタパルトまで、エレベーターで持ち上げられ、そして発進する。
この基地はかつて存在していた旧興国が繰り返す領空侵犯に対処すべく建造されたため、スクランブル発進する戦闘機を一刻も早く空...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十一話「月の下で」前編
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目前に迫る絶望を打ち破るため、俺は親指のスイッチを押し込んだ。
その瞬間凄まじい振動が俺の腕を体後と揺るがし、前方で眩いマズルフラッシュが巻き起こった。
ミニガンから打ち出された弾丸がレーザーのように光線を連ね、ガンシップに吸い込まれていく。
俺はひたすらスイッチを押し続け、次の瞬間、光線...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十八話「一日の終わり」
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その眼光は、たとえ片目であろうと鋭利な刃物の如く鋭く俺を突き刺し、引き金に掛かった人差し指さえも動くことは叶わない。
俺はただ、目の前にいるアンドロイドがどのような行動に出るかを待つしかない。
だが、おおよその見当はついている。
彼の紫の瞳が示すものは、俺に対する憤怒。
彼が胸に抱く赤髪の...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十四話「諍いと和解」
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いたい・・・・・・いたいよ・・・・・・
くるしいよ・・・・・・
だれか・・・・・・たすけて・・・・・・
あのおとが・・・・・・きこえるの・・・・・・
...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十三話「Cry Crysis」
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どうして・・・・・・。
どうして、わたしだけが生き残ったんだろう。
キクも、ワラも、ヤミも、タイトも、ミクオも・・・・・・。
誰も自分から死にたいなんて、思うわけがない。
ミクオだって、本当は、死にたくなかったはずなのに・・・・・・。
...Sky of Black Angel 第四十九話「別かれの前に」
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忽然と、暗黒の渦中から目覚めようとしていることに気がついた。
鼓膜より伝わる音が、海の静かに波打つ音だと確認し、眼は蒼くなりつつある夜空を像として映し出していた。
無論、体が目覚めていくうちに、傷からの痛みも信号となって脳に伝わる。
それの殆どが火傷である。
とりあえず感覚器官及び神経は無事...Sky of Black Angel 第四十八話「何者か」
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「終わった・・・・・・のか?・・・・・・おい、円。生きてるか?」
「うるせーな飛鳥・・・・・・俺ぁここにいるよ。」
「なんだ、生きてたのか。」
「お前こそな。」
「当然だ。周りの連中みたいにグロい死に方だけは勘弁だぜ。」
「にしてもすげぇな。どれくらい死んでんだコレ。」
「こっから見え...Sky of Black Angel 第四十五話「再び会えると信じて」
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腕を一振りすると、目の前の黒い敵が真っ二つに切り裂かれる。
切れ目から透明な液体を撒き散らして爆発する。
弱い。こんなやつら、どうせ何匹いたって同じ。
それなのに、基地のみんなはてこずってる。
無線を聞く限り、もう何人も死んでる。馬鹿なやつ。
まったく、めんどくさいことになった。
あの...Sky of Black Angel 第四十四話「翠の銃槍」
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総合司令室にいる者全てが、モニターに映し出されたミクオの姿を見て愕然とした。
『久しぶりですねぇ世刻司令。』
『ミクオ君・・・・・・何故ですか。』
ストラトスフィアの司令であるミクオと、今までに耳にしたことのない、世刻司令の困惑した声がスピーカーから響いた。
この向こう側のモニターは司令...Sky of Black Angel 第四十二話「決戦へ」
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任務を終え、雪峰から帰った俺達を出迎えたのは、少佐と司令だった。
タイトがこの世を去ったことは、二人とも既に知っていた。
「タイトさんという英雄のために、黙祷を、捧げましょう・・・・・・。」
司令は、静かに言った。
「・・・・・・。」
目を閉じた俺の頭の中に、昨日、夕日を見ながら...Sky of Black Angel 第三十八話「唖然、戸惑い、怒り」
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「ソード隊、発進準備を開始せよ。」
無線に管制官の声が聞こえてきた。
深夜00:00時、遂に運命の刻はやって来た。
整備員から敬礼と激励の言葉を受け、俺は機体のコックピットに乗り込んだ。
計器類を操作し、アビオニクス灯が灯る。
命を吹き込まれたエンジンから猛獣の咆哮のような作動音が鳴り響...Sky of Black Angel 第三十七話「価値無き真実」
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興国の軍事力が、何者かによって見る見るうちに削ぎ落とされていく。
いや、誰かなんて想像はついてる。
なぜそうなったのかも。
経緯がどうあれ興国は国として形骸化を始めている。
もうあの国は長くない。
でも、あの国が消えたら、この基地はどうなるのだろうか。
あの国から差し向けられる領空侵犯...Sky of Black Angel 第三十二話「過去、そして、その後」
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僕がメンテナンスを続けている間、彼は、一言も喋らなかった。
パソコンのモニターには、彼のマザーコンピューターと身体の情報が表示されていた。
一通り終わり、彼の背中から情報伝達用ケーブルを抜き取った。
「はい。終わったよ。とりあえず、コンピューターには異常はなし。バッテリーの容量も不凍液も十分...Sky of Black Angel 第二十六話「ゲノムパイロット」
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朝、俺達を含む雪峰の全隊員がフライトデッキに集結していた。
隊員達は毎朝ここで徒手格闘訓練などをするらしく、俺達も参加することになった。勿論、ミクやタイト達も参加している。
「うわっ!」
そして今、隊員の一人を軽くあしらったところだ。
「さすが・・・・・・強いですね。」
「年季の違いさ。...Sky of Black Angel 第二十五話「つかの間の安息」
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海は本当に静かだった。
ときどき、チャプン、と音を立てるだけ。わたし以外は誰もいない。
ゆらゆらと波が揺れるのが大きな月の光でよく見えた。
月・・・・・・。
この前にもこんな大きな月を、ひろきと一緒に見たっけ・・・・・・。
「今夜は月が大きく見えるよ」って・・・・・・。
あれから、...Sky of Black Angel 第二十四話「互いの想い」
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この時点で、俺の頭の中に様々な疑問が渦巻いていた。
だが、どうやらゆっくり考えるのは生きて帰った後のようだ。
《こちら雪峰所属、ロンチ隊。配置についた!!AWACS、指示を請う。》
《こちら水面基地所属警戒管制機ゴッドアイだ。これより各味方航空機に指示を出す。既に百マイルのC-42エリアに...Sky of Black Angel 第二十二話「大空中戦」
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目の前に立ちはだかる黒い物体・・・・・・。
それは2本の恐竜のような足で直立し、水中潜航が可能な戦闘用アンドロイドだった。
水中潜航のための特異なフォルムに鱗のような光沢をもつ装甲に覆われたボディ。
その全長はざっと5メートル。まるで海洋生物、いや、西洋の伝説に登場しそうな、水に棲む怪物か。...Sky of Black Angel 第二十話「白い鉈」
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(二時間前)
「お呼びでしょうか。世刻司令。」
「ええ。あなたにお話しておくことがあります。かなり重要なことです。ですが機密情報のため、声に出して話すのはやめましょう。いくらこの部屋が防音でも、一応ね。」
「では、筆談……ですか。」
「そんなものではありません。」
「では……。」
「あ...Sky of BlackAngel 第十二話「虚」
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珍しく、夕食の直後俺達はブリーフィングルームに集められた。
何でも、至急隊員達に伝えることがあるそうだ。
「隊長。」
「……何だ。」
「なーんか今日調子悪くねぇか。今日出撃できなかったのがそんなに悔しいか?」
「……違う。」
麻田が俺の心境を無視したような発言を連発してくれる。たのむか...Sky of BlackAngel 第十話「スクランブル」
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「……という訳さ。」
話し終えるとたいとは席に背もたれた。
話はだいたいわかった。たいとたちはあの船で敵を倒したあと、私と一緒にヘリでそのまま基地に来て、そのまま仲間になるらしい。しかしまだ納得いかないことがある。
「あの、たいと?」
「なんだい。」
「なんで君達が水面基地にくるんだ?」
...Sky of BlackAngel 第九話「兵器?」
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ヘリという乗り物の中は意外と広い。中には私とパイロットだけだ。足元を見ると、そこには黒く細長い鉄の箱がある。何が入っているかは分かる。これで敵を倒す。するとスピーカーからパイロットの声がした。
私はヘリの窓から海を見下ろした。司令の部屋のテレビで見た船が少しずつ近づいてきた。
◆◇◆◇◆◇...Sky of BlackAngel 第八話「黒い刀」