タグ「雑音ミク」のついた投稿作品一覧(103)
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銃。それは私が持っている知識の中で、数少ない嫌悪と恐怖を示すもの。
艶のない黒一色に覆われたおどろおどろしい外見は異様な空気を纏い、手に取ればその見た目以上の重量が手の平から体の芯に食い込む。
弾丸を込め、機関部に初弾を装填したときの金属音は、威圧的に刺々しく耳に刺さる。
そして引き金を引い...THE END OF FATALITY第八話「Close Quarters Combat」
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高度五万フィートを飛行する空中巡航護衛艦ネブラに侵入して数分。
神経を張り巡らし、硬く銃を握りしめ、一歩一歩探るような足取りで、私は格納庫から機首側へと向かう通路に足を踏み入れた。
通路は思っていたより狭くはない。普通の軍艦の様な狭さを想像していたけど、それに比べたら地上の施設と変わらないみた...THE END OF FATALITY第七話「異形の獣」
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ネブラに何とか着艦した私は、まともに身動きがとれないまま、着艦の際に空中で私のスーツを掴まえたアームによってエレベーターに固定され、ネブラの奥深くへと取り込まれていった。
少し戸惑っていると、ランスからの無線が入った。
「レーダーやソナーで確認した限りじゃ、生体反応も熱源反応もない……。」...THE END OF FATALITY第六話「私」
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午後3時30分。すでに黄金色に染まりつつある高度6万フィート上空を、私は亜音速の速度で飛行し続けた。硬いスーツ越しでも、風が摩擦し、体を締め付けるGの感覚が心地よい。
しかし、あまり自由な飛行を楽しんでもいられなかった。ディスプレイに表示された通りの航路を飛行しなければならないし、高度も速度も固...THE END OF FATALITY第五話「Enemy In Bound」
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微かな振動が響き渡る中、無線から博貴の声が聞こえ、同時にバイザーの中のモニターに博貴の顔が映し出された。
「大丈夫……良好だ。」
あの基地でスーツを装着した私は、その後すぐにアンドロイド搭載用のステルス輸送機に搭載され、急ぐように空へと打ち上げられた。バイザー内に表示された高度計には、現在...THE END OF FATALITY第四話「再飛翔」
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その施設は、大きなドームとそれを繋ぎ合わせる通路だけで作られており、どうやら間に合わせで急に立てられた仮設基地のようだった。ただの広大な空き地に、わざわざこんなものを建て上げたのだろうか。
敏弘さんと別れた後、空軍の制服の人は「どうぞこちらへ。特殊作戦作戦指揮官と技術主任までお取次ぎいたします。...THE END OF FATALITY第三話「黒い翼」
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あの事件の直後……壮絶な非日常から帰ってきた僕らを待ち受けていたのは、何事もなかったかのように、そしてプログラムされたように普遍的な日常とそれに対する疑心暗鬼だった。
僕はあの事件から生還した直後、口封じでもされるかのように、地下研究所への異動と急務を命じられ、心の支えであるミクと一ヶ月間会うこ...THE END OF FATALITY第二話「過去の者」
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あれから数分が過ぎた。……と思う。携帯電話も完全に動かず、時間なんてとても分からない。それに、もう私にはそんなことはどうでも良くなっていた。
こんな暗いところに閉じ込められて、博貴と話すことも出来なくて、私はもう無理に外に出ようとせず、止まる気配のない貨物エレベーターの隅でうずくまり、駆動音が出...THE END OF FATALITY第一話「闇から見上げる兆し」後編
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鋼鉄の咆哮。深紅の雷鳴。黒き銃声。
このコロシアムに耳を劈き天地を揺るがす轟音が響き渡った。
そして、網走智樹の乗るアシュラが、一瞬で眼前に映っていた。
「ッ!!」
装甲をパージする前とは桁違いのスピードを前に、俺はただレバーのトリガーを引くことしか出来なかった。
即座に40mmバルカン...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十四話「最期の笑顔」
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ただ茫然と、俺は目の前のモニターに映し出された光景を眺めているだけだった。
そこには、レーザーの直撃を受け、黒煙を上げながら沈黙している、ソラの機体。
そして俺と同じく、茫然とこの光景を目の当たりにしながら沈黙を始めた、四機の戦闘機とそのパイロット。
誰もかもが、一言も声をあげず、ただ茫然と...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十三話「役立たず」
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三人で細長い通路を駆け抜けていく。
これからどうするか、そう脳内で模索を続けながら。
「ワラ、ヤミ。で、脱出の目処は立っているか。」
「ええ。ちょっと大げさな方法かもしれませんが。」
「大げさっていうか、大胆な感じ?」
足を止めず、ワラとヤミが答える。
「ほう、どうするんだ。」
「こ...SUCCESSOR's OF JIHAD第七十一話「光射す先へ」
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ここからは大地が丸く見える。
高度五万フィート。それはもはや、地上からでは想像もできない、地球の姿を垣間見ることができる。
それは今まで目にしてきたどんなものよりも、蒼く澄んでいる。
綺麗だと、思った。
でも、こんな綺麗な星の中で、何十億という人々が、日々醜い争いでお互いを傷つけていると知...SUCCESSOR's OF JIHAD第六十一話「カウントダウン」
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鉄の階段を、駆け上がった先に到着した俺は、まず最初に、絶句した。
眼前には、視界を覆いつくす程の巨大な何かが聳え立ち、その周りを色とりどりの作業服を着たクルーが忙しなく駆け回っている。
「これって・・・・・・。」
隣のワラが驚きのあまり声を漏らした。
確かに、突然こんなものが視界に迫った...SUCCESSOR's OF JIHAD第五十九話「ブリーフィング」
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ブリーフィングルームで俺達を出迎えたのは、海軍将校の制服を纏った、威厳のある顔をした初老の男性だった。
「ようこそ。我が雪峰へ。私は本艦の艦長である、壮河凪だ。諸君らとは、あの戦闘以来だな・・・・・・。」
そう言い、彼は俺達に向け敬礼した。
彼の襟を見ると、大佐の階級を示す三ツ星が輝いている...SUCCESSOR's OFJIHAD第五十八話「『す』から始まる言葉」
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コンソールに視線を巡らせ、ボタンやスイッチ類に指を走らせる。
問題ない・・・・・・こういった航空機の操縦は熟知しているつもりだ。
油圧正常。エンジン異常なし。
飛べる。
コックピット内に、エンジンの躍動が響き始め、メインパネルのモニター類から正常に起動したことを告げる電子音が鳴り響いた。
...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十五話「覚悟」
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「ようやくお出ましか・・・・・・。」
無意識にそんな言葉が漏れたが、それも頭上に群がる鋼鉄の巨鳥達、VTOLが轟かせるエンジンの爆音でかき消された。
無線にパイロットの通信が入る。
『遅れてすまない。そいつのほかに敵勢力は。』
そいつ。つい今まで俺と激戦を繰り広げた重音テッドは空中のVTO...SUCCESSOR’s OF JIHAD第五十四話「緊急離脱!」
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ノートPCを片手に自動扉を開けると、案の定、思っていた通りの光景が目に入った。
「ミクぅ~~~!今日凄かったねぇアレ!!あのビリビリッてヤツ!!」
「黒奏刀のことか?今日はちょっと本気を出してみたんだ。」
少佐の報告が終わった後、ワラは部屋に戻るなりミクに飛びつき、一人用の狭いベッドに引きず...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十二話「その笑顔だけは」
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水面空軍基地。
何とも清潔な施設内だ。
皆と一緒にヘリポートから施設内に足を踏み入れた瞬間、そう思えた。
床は丁寧に磨かれ、清潔感のある白い壁はそれ自体に発光する装置が組み込まれているらしく、柔らかく目に優しい光を放っている。
俺が今まで過ごしてきた陸軍の研究施設は不潔ではなかったものの、...SUCCESSORs OF JIHAD 第四十話「現状報告」
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目前に迫る絶望を打ち破るため、俺は親指のスイッチを押し込んだ。
その瞬間凄まじい振動が俺の腕を体後と揺るがし、前方で眩いマズルフラッシュが巻き起こった。
ミニガンから打ち出された弾丸がレーザーのように光線を連ね、ガンシップに吸い込まれていく。
俺はひたすらスイッチを押し続け、次の瞬間、光線...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十八話「一日の終わり」
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一瞬にして、鋼鉄の絶望が群れを成し、蒼天の空を覆い隠した。
俺達は、タイト達が乗るブラックホークごと完全に包囲されたのだ。
この絶望は、一体どこから?
「これで逃げられはせん。ゆっくりと話をしよう。」
奇妙なヘルメット越しでも、目の前に立つ男の余裕の表情が見て取れる。
「あなたが・・・・...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十七話「戦い」
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ミクが驚異的な力で群がる敵性アンドロイドを全て破壊しつくしたことを確認した博士が、ヘリを大きく揺るがせた。
「うお!」
シートなどに腰掛けていない俺はその衝撃で簡単にヘリの内部を転がる。
俺はどうにか座席に腰を下ろすと、ヘリの中を見回した。
ワラともう一人の部下、そして傷ついたタイトに寄り...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十六話「再び会えて」
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乾いた衝撃音が、ヘリポートから雲ひとつない蒼天の空へと響き渡った。
鉛の9ミリ拳銃弾が真空を切り裂き、音速で着きついた先で火花を散らした。
そうして一体のアンドロイドが、弱点である頭部センサーを撃ち抜かれコンクリートへ沈んだ。
それが、激戦の火蓋を落とした。
「ヴォォオオウゥ!!!」
残...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十五話「雷神降臨」
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その眼光は、たとえ片目であろうと鋭利な刃物の如く鋭く俺を突き刺し、引き金に掛かった人差し指さえも動くことは叶わない。
俺はただ、目の前にいるアンドロイドがどのような行動に出るかを待つしかない。
だが、おおよその見当はついている。
彼の紫の瞳が示すものは、俺に対する憤怒。
彼が胸に抱く赤髪の...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十四話「諍いと和解」
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今一度深呼吸すると、すうと空気の流れる音が鼻孔内に染み渡り、澱みない新鮮な空気が俺の体内にある人口肺を巡り、次の瞬間にはふうと吐き出された。
ここの空気は今まで吸っていたものとは別物だ。
いくら俺が酸素を必要としないアンドロイドでも、発声には空気を必要とするし普通に呼吸することも出来る。
そ...SUCCESSORs OF JIHAD 第三十一話「心境」
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「何だお前は?!」
俺は目の前の人物に言った。
目の前には、黒い戦闘服を纏った人影が背を向けているのだ。
その背には対戦車ミサイルと思われる兵装を背負っている。
感情に身を任せ、赤き電撃を纏う黒い彼女と俺の間に、それは立ちはだかった。
一瞬シックスかと思ったが、明らかに背が小さい。
1...SUCCESSORs OF JIHAD 第二十二話「あの人」
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朝というものはいつ何時でも穏やかなものだ。
大都会の中心でさえ、あの喧騒を取り戻すのは昼に近い。
まして、人々が日々生活を営むこの高級住宅は平和という言葉が相応しい。
爽やかな風が全身をすり抜けるように空間を流れ、
顔を覗かせて間もない太陽の日差しが眩しく、
聞こえるのは、かすかな生活音...I for sing and you 最終話「I for sing and you」
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我ながらバカなことを言ってしまった・・・・・・。
いくら海に来たからって、着替えも水着もないのに泳ごうなんて無茶もいいとこだ・・・・・・って。
「ほら、ネルも!」
雑音の体が半分海に浸かっとる!
自分がどんな格好だか分かってんの?ワンピだぞワンピ!!
まぁ・・・・・・あたしのせいだけど。...I for sing and you 第三十六話「ずっと一緒」
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「ほら、雑音!早くいこっ。」
「ああ。」
「雑音、それ、すごい似合ってるよ!」
「そうか。ネルも可愛いよ。」
「えー?そぉ?」
「さぁ、行こう!」
「うん!」
ここは、とても涼しくて、気持ちの良い場所。
水平線の果てまで、コバルトブルーの海が広がって、空も同じ色。...I for sing and you 第三十五話「海とあなたに語る」
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さく・・・さく・・・さく・・・・。
足を踏み下ろすたび、そう足元の枯れ草が囁く。
さく・・・さく・・・さく・・・。
歩けば歩くほど、枯れ草は囁く。
さら・・・さら・・・さら・・・。
...I for sing and you 第三十四話「感情」
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俺を含む三人がテーブルの前の椅子に腰を下ろしたとき、既に重苦しい雰囲気が俺達を包んでいることに気付いた。
「で、大事な話って?」
最初の一言をためらっていると、ネルが何も知らないように話しかける。
本当に、何も知らないのだ。
しかし、今から俺が話そうとしていることは、彼女にどのような反応...I for sing and you 第三十三話「わたし達のこれから」
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その朝は二度繰り返された。
自分の習慣に従い、行動した故に招いた事態である。
起床時にPDAを手に取り、メールの受信状況を確認するという行動である。
そして、それは繰り返されていた。
PDAの液晶画面には、確かにメールが届いていた。
送り主も、昨日と同じく。
しかし、その内容だけは繰り...I for sing and you 第三十二話「書置き」
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「ごめんね。勝手に上がりこんじゃって。」
その声は、ドアの向こうの、玄関のほうから聞こえてきた。
ミクオの声と、その影。
「ちょっと大事な用があったもんで。ホラ、朝のことだよ。この時間帯しか自由に動けないからね。」
朝のこと・・・・・・ミクオが博貴のことで何か言おうとしていた。
そうだ。...I for sing and you 第三十一話「真夜中の話」
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今日という日も、いつも通りありふれた朝を迎える筈だった。
しかし、目覚めと共に何気なく覗いたPDAに届いていた、一件のメール。
それが、ありふれた朝を非日常のものへと変貌させた。
メールの中身は、一件の動画と僅かな言葉が綴られた文章。
文章を先に目にした俺は、見れば分かる、という言葉のせい...I for sing and you 第三十話「厄日」
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ミク・・・・・・ミク・・・・・・。
誰だ・・・・・・わたしを呼ぶ・・・・・・。
ミク・・・・・・・・・・・・。
誰だ・・・・・・・・・・・・。
アタシ・・・・・・・・・・・・アタシヨ・・・・・・。
誰なんだ・・・・・・・・・・・・。...I for sing and you 第二十七話「思い出の中に」
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蒼白の視界、廊下。響くは足音のみ。
この静寂の廊下を歩き続けると、突然、視界が揺らぐ。
立ちくらみだ・・・・・・。
このクリプトン地下研究所に缶詰となってから、早二ヶ月半。
僕の精神は、ボロボロになった。
一日の業務はそこまで大変なものじゃない。ただ、ここにいるだけで、自分でもどれほどス...I for sing and you 第二十七話「昔話」