タグ「2次創作」のついた投稿作品一覧(182)
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第一章 02
男は広間の中央まで来ると、焔姫に向かって一礼して床に座った。
あぐらをかき、楽器を胸に抱くように構える。
「先ほどの者と同じく、私もこの国に来て日が浅く、多くを知りません。まだこの国や姫の歌を作るにはいたっておらぬ故、父から語り継いだ歌を披露いたします」
男の言葉に、焔姫はともか...焔姫 02 ※2次創作
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第一章 01
石造りの王宮の広間で、吟遊詩人が歌を歌っている。
石造りの王宮は壮麗だったが、かといって過度な装飾が施されているわけではなかった。
広間の端で控えている男は、中央で歌う吟遊詩人を眺める。男のほとんどボロ同然の服と比べると、彼の服はずいぶん小綺麗だった。彼が言うには、今歌っているの...焔姫 01 ※2次創作
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焔姫 ※2次創作
プロローグ
石造りの部屋で、男が必死の形相で羊皮紙に何かを記している。
それほど広いわけでもないその部屋には、簡素だが作りのしっかりした机と寝台がある。この部屋は男の居室なのだろう。
部屋の外はすでに真っ暗で、深夜のようだった。
机上には小さな器があり、明かり用の油を入れて...焔姫 00 ※2次創作
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39
コンピュータから流れ出した電子の奔流が絡み合い、連なり、ぶつかり合ってステージの中央にアタシの姿を作り出していく。
弱冠十六歳の小柄な体躯は、ポジティブに言えばスレンダー、ネガティブに言えばぺたんこな体型の少女だった。
床についてしまうくらいの長い髪は、純粋な緑って言うよりは青を混ぜて淡...39
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14
私が呆然とつぶやいてしまった言葉に、その男の人はぴくりとして動きを止める。
『……え?』
その人が反応するなんて思ってなくて、私は思わず声を上げる。そんな私の声は、呼ばれるなんて思ってなかったって感じの男の人の声と重なった。
その人が振り返る。
思い出より高くなった身長。
思い出より...茜コントラスト 14 ※2次創作
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13
「位置について、よーい」
パァンッ。
私は――高校二年生になった私は――その音とともに勢いよく走り出した。
学校からは離れたところにある、大きな競技場の四百メートルトラック。インターハイの地区予選大会だった。
トラックを四周弱する千五百メートル走は、カーブがあるせいでスタート位置はそれ...茜コントラスト 13 ※2次創作
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12
そのあとのことっていうのは、もしかしたら余談みたいなものになってしまうのかもしれない。
朝方近くまで泣いていた私は、カゼをひいて学校を休んだ。気持ち的にも、しばらく学校になんて行きたくなかった。
一週間くらい休んで、私はやっと学校に行くようになった。
悠のいない学校は色あせてて、なんに...茜コントラスト 12 ※2次創作
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11
自分の部屋に帰ってきて悠からの手紙を読み終えると、私は涙を流していた。
その日、どうやって家まで帰ってきたのかも、私はあんまりよくおぼえてない。
あのときは、美術室の入り口で座り込んだまま全然立ち上がることもできなくて、美術部のみんなにはすごい迷惑をかけちゃったと思う。
記憶はあいまい...茜コントラスト 11 ※2次創作
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10
『未来へ。
こんなお別れになってしまって、本当にごめんなさい。未来は……怒ってる、よね。
未来がこれを読んでいるとき、きっと僕はもう飛行機に乗っていると思う。父親の転勤で海外に引っ越すってこと、先生はもう伝えてくれたのかな。
引っ越しのこと、本当は、一緒に帰るようになるずいぶん前から決ま...茜コントラスト 10 ※2次創作
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9
その翌日、朝練を終えた私は憂うつな気分で教室に向かった。
どうしよう。
嫌われちゃったよね。
謝らなきゃ。
仲直りしたい。
でも……どうやって?
避けられたりしないかな。
そんな不安で、私は押しつぶされそうだった。
……けれど、その不安すらたいした問題じゃなかったなんて、このと...茜コントラスト 9 ※2次創作
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8
「……」
「悠、どうしたの?」
「う、ううん……なんでも、ないよ」
お互いに名前を呼びあうようになって数日。はじめのうちは気恥ずかしかったけれど、それだけたつと私たちは普通に名前で呼べるようになってた。
けれど、だいたいそれとおんなじくらいのタイミングで、悠はよく暗い顔をするようになった。
...茜コントラスト 8 ※2次創作
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7
そうして、めいっぱい走ったあとに悠と一緒に帰るのも、とっても幸せなひとときだった。
「ね」
「なあに?」
「私、汗臭くない?」
「え、そうかな。考えもしなかったから、そんなことないと思うけど」
「そう? いっつも汗だくになるまで走ってるから、ちょっと気になっちゃって。部室ってシャワー室もないし...茜コントラスト 7 ※2次創作
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6
それから、グラウンドのトラックを走るのがすっごく楽しかった。
傾きはじめる夕日を横目に、私が校舎を見上げると、いつも通り美術室の窓が開いていて、そこから悠の姿が見えた。
「ふふっ」
荒い呼吸の合間をぬって、ほほえみがこぼれてしまう。
悠と帰るようになって数日、私の中距離走のタイムはすごく...茜コントラスト 6 ※2次創作
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5
「なんだ……初音さんだったのかぁ」
「ごめん浅野くん……。あの、集中してるみたいだったから、邪魔しちゃ悪いと思って……。えと、その……怒った?」
ちょっと不安になってそう聞いてみると、悠は苦笑しながら「ううん、怒ってないよ」と首を横に振った。
「そっか。よかった」
ほっとして、私も笑顔がこぼ...茜コントラスト 5 ※2次創作
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4
放課後。
その日はグラウンドのトラックが使えなかったから、陸上部のみんなはグラウンドのすみっこのほうで筋力トレーニングや短距離、走り幅跳びなんかをやっていた。
私は、トレーニングのメニューをこなしたあとは、何人かの中距離走の部員と一緒に学校の敷地の外を周回するようにして走っていた。
今の...茜コントラスト 4 ※2次創作
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3
その翌朝。
私はいつも通りに朝練に出ていた。
ウォーミングアップをして、軽く走る。
その日の朝練は、あんまり集中できなかった。
「美術室からだと、グラウンドがよく見えるから……」
悠のそんなセリフが頭から離れなくて、私はつい校舎を見上げてみてしまう。
でも、そのときの私にはそもそも美...茜コントラスト 3 ※2次創作
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2
いったいどこから話したらちょうどいいんだろう。
やっぱり、彼と初めて話したときのことからかな。
中学二年の夏の日、部活の帰り道。あの日の夕日に照らされた白い校舎は、鮮やかな茜色に染まっていた。
その背後の空は深い青のままで、そのコントラストがとてもきれいだったのをおぼえている。
そのこ...茜コントラスト 2 ※2次創作
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茜コントラスト ※二次創作
1
「ラスト一周でーす!」
そんな後輩の声を聞き流しながら、私は荒い息をついてトラックを駆ける。
学校のグラウンドにあるトラックは競技場のそれより小さくて、一周三百メートルだ。千五百メートル走だと五周することになる。高校トップレベルなら四分二十秒台、インターハイに出る...茜コントラスト 1 ※2次創作
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◇◇◇◇
「あーいたいた。うわっ、先輩も変わってないねー」
それから少しして、校門の近くの老舗の喫茶店で時間を潰していると、凛がやってきた。
校門から喫茶店に移動したことをメールで伝えると「ちょうどいいからそっちに行く」と返事が来ていたので、そのままここで待っていたのだ。
彼女の言葉を聞い...神様なんていない僕らの 下 ※2次創作
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◇◇◇◇
高校の卒業式をあと数日後に控えたある夜。
俺は家に帰らず、美久と二人で高架下の河川敷に座り込んでいた。
空には怪しげな雲が立ちこめていたが、そのすき間をぬうようにして明るい月光が降り注いでいた。
「……」
「……」
お互い黙ったまま、もう数時間が経過している。単純に寒いし眠たい...神様なんていない僕らの 中 ※2次創作
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神様なんていない僕らの
もう十数年会っていない昔の友人の訃報を耳にして、俺は久しぶりに地元へと帰ってきた。
都会から新幹線とローカル線を乗り継いで、待ち時間を含めるとだいたい四時間といったところか。地元の景色は、こうして見てみると思っていた以上に懐かしく、郷愁を誘う。
地元の最寄り駅に降り立...神様なんていない僕らの 上 ※2次創作
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THE HEREAFTER R-Mix “RESURGENCE” SIDE:δ
あれから。
あの、まるで時が止まってしまったかのようだった“その”瞬間からどれくらい経ったのだろう。
あの頃は年の暮れだっただろうか。だとすれば、もう三ヶ月か。
(そっか。まだ、それだけしか経ってないんだ……)
...ReAct 14 ※2次創作
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THE PRESENT PART3 M-Mix SIDE:γ
そこに居たのは、自分だった。
目の前に立つその姿は、確かに違う。
ショートカットで、黒いワンピースで、つり目がちで。
何もかもが違う。なのに、それは確かに、自分だった。
国際病院の屋上で、レンと会うとは思っていなかった。ミク自身...ReAct 13 ※2次創作
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THE PRESENT PART2 R-Mix SIDE:γ
病室にやって来たものの、レンはどこかへ散歩にでも行ってしまったのか、彼の姿は見当たらなかった。
嫌な予感を振り払い、リンは先に用事を済ませてしまおうと意を決して向かいの病室にも入ってみたのだが、そこも空だった。
本来は内向的なリンが...ReAct 12 ※2次創作
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THE PRESENT PART1 L-Mix SIDE:γ
その屋上へと続くガラス扉を開くと、キィィ、ときしんだ音を上げた。
病院の屋上は、実際には意外に広い。だが、頭上に広がる夕焼け空のせいか、それとも屋上を取り囲むフェンスのせいか、いまいちその広さが感じられなかった。むしろ、なぜか逆に狭く...ReAct 11 ※2次創作
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INTERMISSION3 R-Mix
逃げ出して来てしまった。
嫉妬の炎に焼け焦げそうになっていながらも、そう考えて後ろめたい気持ちになるだけの理性はかろうじて残っていた。
だが、今のままレンと顔を合わせてしまえば、彼にもつらくあたってしまう事は彼女自身分かっていたので、少しだけ時間をあける...ReAct 10 ※2次創作
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INTERMISSION2 L-Mix
翌日、レンが病室で目を覚ました時には、リンは既に居なくなってしまっていた。
普通に考えれば、単に大学に行ってしまっただけなのだろう。だが、レンにはどこか腑に落ちなかった。
リンは、基本的に学校の成績は良い方だ。だが、授業や講義への出席率はあまりかんばしく...ReAct 9 ※2次創作
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INTERMISSION1 R-M:ReMix
深夜の国際病院の五階。そこにある一本の廊下を挟んで、二つの部屋で二人の思いが交錯する。
どうすれば良かったのだろう、と彼女は頬の痛みを堪えながら自問する。
相手を心配するという事。それは、相手を傷付けない上で何よりも重要な事では無いのだろうか。
...ReAct 8 ※2次創作
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FLASHBACK6 R-mix side:β
はっと目を覚ます。
目元が、涙で濡れていた。
懐かしいと、彼女はただそう思った。
夢に見たのは、あれはいつの頃の事だっただろうか。
(小学校の頃、じゃなかったかな……)
二人で一緒に見た夜空。まばゆく輝く満月。
けれど結局、あのすぐ後に母親...ReAct 7 ※2次創作
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FLASHBACK5 L-mix side:β
「リン! 外!」
「なぁに? あたし、眠いよ……」
「いいからいいから。外、すっげー明るいんだぜ!」
そう言って、まぶたを擦りながらぐずるリンを、レンは引っ張っていく。
「ほら、こっちこっち!」
「そこは危ないから、ママがダメって……」
「バレやしな...ReAct 6 ※2次創作
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FLASHBACK4 before-side:β
あれから。
あの、想像すらしていなかった絶望的な光景を見てしまってからどれくらい経ったのだろう。
あの頃はまだ寒くなり始めたばかりの頃だっただろうか。今はもう雪のちらつく年末だ。大学はもうすぐ冬休みになるし、あと数日で聖夜もやって来る。
(そっ...ReAct 5 ※2次創作
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FLASHBACK3 after-side:α
部屋を出る。
だが、特段ミクには行き先が決まっている訳では無かった。何も考えていなければ、いつものようにまた病院の屋上に行ってしまうのだろう。
彼女自身は、それでも別に構わなかった。ただ、ずっとあの部屋に一人ぼっちでいるのは気が滅入ってしまう。誰...ReAct 4 ※2次創作
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FLASHBACK2 L-mix side:α
少年はベッド脇のキャビネットの上に置いてあった注射器――と言うにはいささかカジュアルな物ではあったが――を手に取り、カートリッジを取り付けると、ためらいがちに自らの左腕に刺した。
注射器から体内へとカートリッジ内のインスリンが注入され、血液内を巡る...ReAct 3 ※2次創作
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FLASHBACK1 M-mix side:α
あれから。
あの、まるで時が止まってしまったかのようだった“その”瞬間からどれくらい経ったのだろう。
あの頃は初夏だっただろうか。だとすれば、もう五ヶ月か。
(そっか。もう、半年近く経ってるんだ……)
白い部屋の白いベッドに横たわっていた少女は...ReAct 2 ※2次創作
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THE PRESENT ≒ SIDE:γ
今、温もりが消えさってしまったその場所で、三人の男女が立ちすくんでいた。
それは宵闇、ちょうど日の沈んだ時刻だった。その瞬間、まるで時が止まってしまったかのように三人も動きを止める。ビルの屋上。つい先程まで、外周をぐるりと取り囲んでいるぶしつけなフェンス...ReAct 1 ※2次創作