タグ「重音テト」のついた投稿作品一覧(20)
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外からは暖かな日の光が差し込み、その部屋にはマスターが本をめくる音だけが響いていた。紙に並ぶ文字を追う目をふと下に向ければ、膝の上には双子の寝顔がある。右にはリン、左にはレンの頭が乗せられ、静かな寝息をたてていた。
「『春眠暁を覚えず』、って所か。そろそろ春の季節かな」
先刻まで話をしていていつの間...背中合わせ
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「テトさん」
ソファーに座りながら充足感の余韻に浸るテトに、マスターが小さな紙袋を差し出した。それを「ありがとうございます」と言いながら、テトは笑顔で受け取る。
「開けてみてもいいですか?」
「うん、どうぞ」
促されたテトが取り出したのは、銀色のネックレスだった。小さな音符を形どったアクセサリに、チ...嘘偽りなく
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ベランダに座り晴れ空を見上げながら、マスターは煙を吐く。何か考えてる訳でもなく、ぼーっとした様子でただ空を眺めていた。
「マスター、ここにいたんですか」
声のした方に振り向けば、そこにはテトが立っていた。どうやら、マスターである彼を探していたらしい。
「…何か用?」
「また煙草吸ってますね」
マスタ...照れ隠し?
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「はぁ…寒いですね」
「明日は積もるらしいよ」
しんしんと静かに雪が降る中、マスターとテトは白くなった道を並んで歩いていた。
そこに人気はなく、雪を踏みしめる音がやけに響いて聞こえる。
「そうですか…手袋、持ってくるべきでした」
「だね…なんでつけてこなかったの?」
手を擦り合わせながら、テトは後悔...寒さの中の温もり
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オレンジ色の光が街並みを照らし、遠くでは烏の鳴き声が響き渡っていた。
伸びる影を背に、テトとマスターは並んで歩を進める。
「結構、遅くなっちゃったね」
「マスターが、物一つ買うのに悩みすぎなんです」
そう言って、テトは呆れた顔をマスターに向けた。
彼女の両手には、大きめのビニール袋が一つずつある。
...【飴玉】仕返し【後日談】
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ベランダに干された洗濯物が風に吹かれ、空からは暖かい陽射しが降り注いでいた。
そんな静かな空間に、台所から聞こえてくる物音がやけに響くように聞こえる。
「ん~…うん、バッチリ♪」
味見を終えたリンは、鍋にかけていた火を止めてそれに蓋をした。
使った道具類は既に洗われているため、周りの汚れを拭き取るだ...【新婚みね】待つ寂しさ【音坂さん】
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「テ~トさん♪」
そう言ってリンが、取り込んだ洗濯物を畳むテトに呼びかける。
テトは手を止めて、リンの方に目を向けた。
目の前にいるリンの顔には満面の笑顔があって、後ろにはレンもいた。
「どうしたの?二人して」
「えっとね………」
尋ねれば、リンは笑顔のまま言葉を濁す。
後ろで呆れた様子のレンを窺い...「おめでとう」と伝えたかったので
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少しばかり広い部屋に、時を刻む時計の音だけが鳴り響く。
時刻は深夜の一時前、日付が変わってもうすぐ一時間が経とうとしている。
そんな時間にテトは何をするでもなく、ただ帰り人を待っていた。
すると外から小さな足音が聞こえきて、それが段々と近付いてくる。
それがドアの前で止み、鍵を解く音が響いた。
そし...家族の形
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静かな休日の昼下がりに
響き渡る君の優しい歌声
歌うのは好きじゃない
君はそう言ってたけど
歌っている様子からは
その言葉が嘘に思えた
褒めると機嫌を損ねて
歌うのを止めてしまう
だから何も言わずに
歌に耳をかたむける...君の歌
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月もない夜の景色を眺めながら、暗い空間にマスターは紫煙を吐く。
暫くそうやっていると煙草の明かりに誘われたのか、小さな光が揺れながこちらに飛んできた。
指を軽く差し出せば、光は指先に止まった。
「こんな街中で、見れるとは思わなかった…」
そう小さく呟いて煙草をくわえ、再び煙を吐く。
「マスター、何し...生きてるいう事
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レンは頭を抱え、悩んでいた。譜面と呼ぶには粗末な、手書きで紙に並べられた音符や記号を見ながら。
それは彼のマスターに渡されたものでマスターの新曲―――というより、初めての作品だ。その中で難しい部分があり、レンは中々上手く出来ずに悩んでいた。
「♪~、♪…なんか違うなぁ」
歌っては唸る、それを何度も繰...いつか、僕に。
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「飲み会?今からですか?」
夕飯の支度をする手を止め、テトはマスターに聞き返した。
「うん、会社の。…乗り気はしないけどね」
マスターは疲れた様子で、クローゼットから取り出した服に着替えてく。今しがた帰って来たばかりで、疲れているのは無理のない話だ。
「帰りは遅くなるから、先に寝てていいよ」
着替え...寂しさには優しさを
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「レ~ン~…」
「なに?リン」
床に寝転がって曲を聴いていた私は、片方のイヤホンを外して話をきりだした。
「頭、重いんだけど」
今、私の背中には双子の弟、レンの頭が乗せられている。
視線は私に向けているみたいだけど、その表情は伺えない。
「どいてくれない?」
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
そう...日溜まりの暖かさ
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きっかけがあった訳でもなく
理由があった訳でもなかった
ただただ気が付いたら
手にナイフが握られて
その鈍く反射する刀身に
自分の紅が付着していた
暫く傷口を眺めていると
気付いたキミは驚いてて
笑って声をかけてみたら
頬を思い切り叩かれてた...望んでくれるなら
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「一人だけ」
「………」
「たった一人だけが望んでくれるなら、それが生きる理由になるよ」
「…小さい願望ですね」
「ちっぽけな人間には、相応な願いだよ」
「望んでくれるのは、誰でもいいんですか?」
「性別・年齢・国籍、人間であれば、誰でもいいよ。病気や事故で次の日に死ぬ人でも、一日を生きる理由になる...たった一つだけ ~one only~
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「ということで、今回は筆(?)休めです」
「何がということですか」
「これはこれは。奇抜なツインドリルが可愛らしい、テトさんじゃないですか」
「説明的な挨拶をありがとうございます、欠陥品」
「…敬称を略さないで、地味に傷付く」
「自分で登録したくせに…。それで、私が呼ばれた理由はなんですか?」
「そ...閑話休題
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「マスター、今日のご飯はなぁに?」
そう言って、キッチンで夕飯の支度をしているマスターのズボンをリンは引っ張った。
マスターは包丁を持つ手を止め、リンを見下ろしながら答えた。
「もうすぐ出来るから、少し待ってね。向こうでレンとテトさんのお手伝いしてくれる?」
リンは元気よく「はーい♪」と返事をして、...【時期ネタ】些細なことが【土用の丑の日】
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ある休日の昼下がり、天気は曇り。
近頃は初夏の暑さが感じられるが今日は風が冷たい分、普段よりは過ごしやすい一日ではあるだろう。
私は洗い物を片し終えて濡れた手を拭き、マスターのいる部屋へと向かった。
入るとマスターはベッドの上で寝転がっており、何をするでもなく天井を見ていた。
「何を悩んでるんですか...てのひら温度
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「マスター。ご飯出来ましたよ…って、何してるんですか?目なんか閉じて」
「あ、テトさん。ちょっと黙祷を…」
「なんで黙祷?」
「うん、今日は23日だから」
「…ああ、確かマスターの故郷は…」
「そういう事。別に伝統を重んじる訳じゃないけど、なんとなくね」
「じゃあ、その花が前に言ってた物ですか?」
...月桃の花言葉
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「それじゃあ留守番、宜しく」
「………………」
「…そろそろ、そのむくれっ面やめない?」
「…今日は歌の練習、するって言ってたのに」
「しょうがないだろ、急に
別件が入ったんだから」
「ここ最近はマスター、帰ったらお風呂入ってご飯食べたら、すぐ寝て歌の練習してくれなかったし…」
「だから今日はちゃん...早めの帰宅を