タグ「弱音ハク」のついた投稿作品一覧(64)
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弱音ハク探偵事務所(後半)
「お、ご予定はお済で?この後どうです?」
ハクがミクを連れて一番に訪れた人間は、先程から懸命な営業活動に励む先程のホストであった。未だに客が捕まらないらしく、その表情には軽い焦りが見えている。
「景気よさそうね。」
社交辞令とばかりに、ハクはそう言った。
「いや...弱音ハク探偵事務所【ハロウィン特別企画】(後半)
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弱音ハク探偵事務所(前半)
都市の中には様々な風景を目にすることが出来る。近代化された、造形豊かな建築物。天をも恐れぬ高さへと伸びた、機能を追及するがゆえに生まれた美しさをもつ高層ビル。そして、そこを生活の場とする、数多くの人間、成功者。清潔な、光に見出された種族。
だが、そんな街の中であっても...弱音ハク探偵事務所【ハロウィン特別企画】(前半)
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第四章 ガクポの反乱 パート3
「そう、ガクポが・・。」
時を戻して、五月六日の夕刻。リリィからことの詳細についての報告を受けたリンは、感極まった様子でそう呟いた。場所はルワール城二階に位置している応接間兼会議室である。
「ガクポ殿は、決起の前に戦略のすり合わせさえ行えばすぐに行動に移って頂け...ハーツストーリー 64
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第一章 逃亡 パート18
だが、ルカの心配が杞憂であったことはその十数分後には証明されることになった。リンにとっても、ルカにとっても懐かしい顔がルータオ修道院を訪れたのである。ウェッジが複雑な表情をして、修道院の食堂へと案内してきたロックバードの姿を見て、ルカは安堵の吐息を漏らし、リンは食堂の椅子...ハーツストーリー⑲
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第一章 逃亡 パート17
「漸く戻ってきたね。」
リンがルータオの街を懐かしむような口調で同行しているルカとウェッジ、そしてハクに向かってそう告げたのは、メイコとアレクの痛快とも表現すべき脱獄劇から三日が経過した昼過ぎの出来事であった。迷いの森からオデッサ街道を歩き続け、大陸中央に位置するミルド...ハーツストーリー ⑱
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第一章 逃亡 パート2
「リンの馬鹿!」
アクの姿が見えなくなり、リンが心から安堵の吐息を漏らしたとき、声の調子をはずしたハクの声がリンの両耳に突き刺さった。直後に感じるハクの体温。リンよりもほんの少し背の高いハクが、リンに向かって抱きついたのである。
「ごめんね、ハク。」
「無茶をしないで...ハーツストーリー ③
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第一章 逃亡 パート1
光に消えていく。
リンは薄れていくレンの姿を最後の一瞬まで視界に残していようと、必死にそのサファイアのような瞳を見開いて淡い光の奥に消えてゆくレンの姿を見つめ続けていた。リーンの姿はもう見えない。きっと自分の生まれ育った時代に戻って行ったのだろう。それなら、あたしは?あた...ハーツストーリー ②
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ミクとハク
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第二章 ミルドガルド1805 パート22
「そこまで。」
凛としたアクの言葉がビレッジに響き渡ったのは、ハクが詠唱を始めた直後のことであった。直後に、事態を見守っていたメイコとウェッジが向き直り、剣に手をかける。
「どうしてここに・・。」
瞬時に剣を抜けるように身構えたメイコは、アクに向かっ...小説版 South North Story 40
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第二章 ミルドガルド1805 パート21
それは、迷いの森以上に不思議な場所であった。
目の前に見えるのはまるで村の入り口をあらわす門扉のように植えられた二本の大イチョウ。その大イチョウの奥に見えるのは赤煉瓦作りの聖堂であった。横に長く造られているその聖堂は相当数の部屋が用意されているらしい。こ...小説版 South North Story 39
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第二章 ミルドガルド1805 パート20
翌日、普段よりも早い時間に目を覚ましたハクは、なんとなく落ち着かないという様子でその均整のとれた肢体を不安そうに捩じらせた。今日、ビレッジに戻る。もう二度と戻ることは無いだろうと思っていたビレッジに。あの場所での生活はあたしにとっては悪夢のような出来事だっ...小説版 South North Story 38
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第二章 ミルドガルド1805 パート19
グリーンシティ。
かつて黄の国との戦争に敗れ、建築物が破壊され、民衆が虐殺の憂き目にあったその都市は四年の歳月を経過してようやく本来の文化都市としての性格と落ち着きを取り戻しつつあった。戦争の痛手と悲嘆がたった四年の歳月で消え去る訳もなかったが、表面上の...小説版 South North Story 37
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第二章 ミルドガルド1805 パート18
静かな夜であった。物音はリンとハクが踏みしめる土の擦れる様な音と、周囲の叢で嘶く蟋蟀が鳴く声だけである。場所はロックバード邸の裏庭であった。この場所ならば未だ眠りにつく気配も無い街の明かりに邪魔されることは無い。今宵は月もなく、ただ星の瞬きだけがリンとハ...小説版 South North Story 36
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第二章 ミルドガルド1805 パート17
「うぁあ、美味しそう。」
リンが目の前に用意された食事を見て、その様に声を上げた。その後結局、リンの一行はロックバード邸に一晩の宿を借りることにしたのである。ロックバード邸は流石かつてのルワール王国の居城であっただけあり、その敷地は相当の広さを誇っている...小説版 South North Story 35
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第二章 ミルドガルド1805 パート16
「せいやぁっ!」
可憐な少女の声が広い平原の只中に響き渡った。どうやら一人、剣の素振りをしている様子であった。小麦色の髪を潔くポニーテールにした少女はもう一度剣を振り上げて、そして鋭く振り下ろす。剣が風を切る音が周囲に響いた。その素振りだけでも、見るもの...小説版 South North Story 34
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第二章 ミルドガルド1805 パート14
「結論から先に言うわ。ここにいる全員で迷いの森に向かうの。」
ウェッジの表情を一瞥した後、ルカは全員に向かってそう言った。お互いの顔を見合わせ、手を叩いて喜んだのはリンとリーン、困惑した表情を見せたのはそれ以外の三人であった。
「あたしも行くのですか?...小説版 South North Story 32
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第二章 ミルドガルド1805 パート13
「とりあえず、何があったのかを説明しなければならないわね。」
ウェッジがさりげなくハクの隣の席に腰掛けたことを確認してから、ルカはその様に言葉を切り出した。確かウェッジはリンの正体を知らないはずだけど、と考えながら、慎重な口調でハクに向かってこう訊ねた。...小説版 South North Story 31
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第二章 ミルドガルド1805 パート11
レンにもう一度逢える?
リーンの声が海岸に響き渡り、その声が波打ち際の潮の音に紛れて消えていった後、リンはその様に考えてその蒼く透き通る瞳をひとつ、瞬きさせた。潮風が吹き、リンとリーンの黄金の髪を綺麗に靡かせる。
「本当に?」
リンは暫くしてから、リ...小説版 South North Story 30
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第二章 ミルドガルド1805 パート11
やっぱり、あたしがいた時代とは随分と様子が違うな。
無言のままで歩みを続けるリンの背中を追いながら、リーンはその様なことを考えた。リーンが生まれ、そして高校卒業まで住んでいた自宅は影も形もないし、大通りを走る路面列車の姿ももちろん見えない。建物は平屋ばか...小説版 South North Story 29
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第二章 ミルドガルド1805 パート10
一体、リン様はどのような生活を営んでいるのだろうか。
一歩一歩近づく、ルータオで一番巨大で、そして最も美しい建築物であるルータオ修道院を目前としながら、メイコはそのようなことを考えた。リン様にレンの最後の言葉を伝え、そして謝罪したい。その想いだけでゴール...小説版 South North Story 28
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第二章 ミルドガルド1805 パート9
翌日、まだ朝日も出ていない早朝にルカは目を覚まし、もぞもぞとベッドから起き上がると日の出前の薄明かりを頼りに宿の寝室に用意されている化粧台へと赴き、そして丁寧に自身の長い桃色の髪を梳き始めた。軽く跳ねている髪を櫛で押さえつけ終わると続けてルカは軽く化粧を施す...小説版 South North Story 27
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第一章 ミルドガルド2010 パート17
ミルドガルドには現代日本と同様に、四月の終わりから五月の頭にかけて一週間程度の連休期間が存在していた。メイが迷いの森の探索を目的として指定した日はその春の連休の初日のことである。カイルが運転する車の後部座席に腰かけたリーンは、隣に座るハクリと一緒に流れる...小説版 South North Story ⑱
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第一章 ミルドガルド2010 パート15
大学に入学して初めての講義を終え、リーンとハクリは二人で歴史研究会の部室へと向かうことになった。正確には部室という設備は歴史研究会には存在しないため、メイが適当に見つくろってきた空き教室を部室の代わりとして使用しているらしい。その場所は大学の奥、リーンが...小説版 South North Story ⑯
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第一章 ミルドガルド2010 パート14
長い歴史を積み重ねて来たグリーンシティの街並みは、息の詰まる様な近代化が進んだ他の街で育った人間達にとっては溜息をつきたくなるような安らぎを与える様子であった。幾何学的に並べられた建築物はそれがたとえたった一つの民家であっても周囲の環境と調和しており、全...小説版 South North Story ⑮
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第一章 ミルドガルド2010 パート13
「ハクリ、こっちよ!」
それから半時間ほどが経過した後、リーンとメイ、そしてカイルはセントパウロ大学の正門でハクリと待ち合わせることになった。学内には待ち合わせに適した場所が他にもあるが、入学したばかりの新入生にも分かりやすい場所を、ということでメイが...小説版 South North Story ⑭
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第一章 ミルドガルド2010 パート12
入学式を終えたリーンは、他の学生たちと共にひとまず大講堂の外へ向かうことにした。今日の予定は入学式だけだ。早い段階でハクリと合流しようと考えたリーンは、大講堂の出口へと向かって歩き出すことにした。大講堂の一般出口は舞台とは反対側、リーンから見て後方にしか...小説版 South North Story ⑬
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第一章 ミルドガルド2010 パート11
それから数時間後、リーンとハクリの二人はセントパウロ大学大講堂の中にその身体を収めることになった。セントパウロ大学大講堂は一度に数千人の学生を収容することが出来る、セントパウロ大学では最大の建築物である。ルネッサンス様式を真似た大講堂は、その造形美から観光...小説版 South North Story ⑫
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第一章 ミルドガルド2010 パート10
リーンとハクリが予約していた不動産業者から自宅の鍵を受け取ってから向かった先は、モーリス学生街駅から徒歩五分の距離にある場所である。駅から至近距離にある優良物件であるにも関わらず、家賃は程良い価格に抑えられているのは、ミルドガルド共和国の学生支援策の一環で...小説版 South North Story ⑪
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第一章 ミルドガルド2010 パート9
ゴールデンシティはミルドガルド共和国第一の経済都市であり、人口、企業数共に世界有数の都市でもあった。その規模を反映するように、ゴールデンシティ駅もまたミルドガルド共和国最大の規模を誇っている。ゴールデンシティを起点とする鉄道は新幹線、在来線合わせて10を軽く...小説版 South North Story ⑩
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第一章 ミルドガルド2010 パート8
『レン、あなたは外国に行くのは初めてでしょう?』
あたしは、いつも通りの時間に銀製のトレイを片手に現れたレンに向かって、そう言った。
『そうです。』
レンはそう言って笑顔を見せる。その優しげな、それでも何かを隠しているような不自然なレンの笑顔を見つめなが...小説版 South North Story ⑨
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第一章 ミルドガルド2010 パート7
それから一週間後、リーンとハクリは全ての出立の準備を終え、ルータオ駅にその姿を現した。出張に訪れているのか、数多くのスーツ姿のサラリーマンがルータオ駅から吐き出されてそれぞれの仕事場へと向かってゆく。休日とは違う意味で混雑を見せるルータオ駅の駅ロータリーで路...小説版 South North Story ⑧
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第一章 ミルドガルド2010 パート6
同じ頃、リーンとは隣合わせの家に住んでいるハクリもまた、遅めの夕食を終えて、先程リーンが寝ている間に読み込んでいた小説の続きを再開しようと自室へと戻ったところであった。ハクリの性格を良く表す様な、余計な物は置かれていない、それでも満たされているように感じる良...小説版 South North Story ⑦
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第一章 ミルドガルド2010 パート5
カフェでの小休止を終えたリーンとハクリは、少し時間は早いがそのまま帰宅の道へと向かうことにした。ルータオ駅は修道院から距離にして数キロの距離があったが、その移動手段を支える交通がルータオ市内には整備されている。即ち、ルータオのもう一つの名物となっている路面列...小説版 South North Story ⑤
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第一章 ミルドガルド2010 パート3
「きっと、レンには秘密があると思うの。」
翌日、昼過ぎからルータオの中心街へと向かったリーンは、隣を歩くハクリに向かってそう声をかけた。ミルドガルド共和国沿海地方の中で最大の都市であるルータオには休日に多くの人間が押し寄せる。その中心部は二か所存在していた...小説版 South North Story ④
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第一章 ミルドガルド2010 パート2
ゴシック調の建築様式を持つルータオ修道院の礼拝堂は、その規模の巨大さと均整のとれた建築様式を持つことで有名な建物であった。その内部にひとたび身を納めると、都会の軋轢を癒すような柔らかい、まるで高性能な濾過機を通したような清浄された空気を堪能することが出来るの...小説版 South North Story ③
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