小さな頃は転んでも失敗しても待ってくれてた
出来るまで見ていてくれて出来たら褒めてくれた
その度にすごく嬉しくて何だって出来る気がした
小さな目で見た世界だけが全てだと思い込んで

どんなに下手くそな絵を見せたって笑って喜んで
どんなに間違った字で書いた手紙も泣いて喜んで
正解なんてどこにもなくて感情だけを行き先にして
そのまま私は歩んでいけるってずっと思ってた


いつからだったかな色んな数字を気にし始めた
点数も時間も拍手の音も「もうちょっとだね」って
どこがゴールか分からないのに私は足りないコドモ
急に何もかも揺らいでどこに居るか分からなくなった

教えて欲しいことが分からない苦虫を噛み潰す顔
なにを聞いても「自分で考えなさい」って知らん顔
怯えて縮こまって怒られない方法だけを必死で
気が付くと自分の笑顔も思い出せなくなってた


評価される値踏みされるもうちょっともうちょっと
まだがんばれるでしょ必ず出来るからって仮面越しに
その奥に潜む「足りない」「欠けてる」「まだまだ」の顔
私はそんな顔が見たいんじゃないのにどうしてだろう

風邪を引いた日布団の中で寝ぼけながら聞いた声
「近所の人に褒めてもらった」「親戚が自慢してた」って
親同士ワイワイガヤガヤ番付格付け品評会
遠い宇宙人の声みたいに聞こえて来て涙も溢れた


何もかも失ったように勢いのない惰性の生活が続く
割り切れない小数点がずっと終わらないだけの毎日
誰かの笑顔を見たかった私の昨日はどこかに消えて
色も見えない匂いもしなくて味は分からなくなった

歯車がどんどんいびつになって油切れできしみ始める
その度に「出来るでしょ」って不満そうな顔にも慣れた
返事をする気力も無いけどしとけば適当に過ごせる
「私はロボットではありません」って表示に笑えなくなった


「褒めて欲しかったの?」って「チヤホヤされたい?」って
頭の奥の方でクスクス笑い声が聞こえて止まらない
違うって振り払っても嫌だって泣きじゃくっても
気持ちに生えたいくつもの棘が自分を串刺しにする

こんな風になりたいなんて一度も思った事無いのに
マイナスイメージがネガティブ思考が高速回転して
どこまでもネバ付いた陰湿さをばらまいていく
拭っても拭っても取れないままもう手がドロドロだ


逃げ出す事も出来なくてただ横たわって沈んでく
聞こえなくなったはずの耳元で誰かが叫んでる
目の前は真っ白なのに足元は真っ暗なのに
「そんなことしてる場合か?」って「どうしたい?」って

走馬灯のようにゆっくり記憶が巻き戻っていく
汚い過去も見え透いた昨日も消え去った未来も
何もかも許された日々全てが認められた時代
「大好きになりたい」「大好きって言いたい」何度も


帰り道の橋の下薄暗い鉄骨の隅で力なく泣いていた
電車が通り過ぎるたびに響く轟音が掻き消した
そのまま私の心も引きちぎってくれれば良いのに
そばで揺れてた小さなタンポポだけが優しかった

風になびいた葉がまるで拍手みたいに見えたんだ

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

Good Old Spectator

閲覧数:270

投稿日:2021/07/22 21:10:55

文字数:1,269文字

カテゴリ:歌詞

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