生きてるいう事

投稿日:2010/08/27 22:44:19 | 文字数:3,832文字 | 閲覧数:189 | カテゴリ:小説

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夏らしく蛍の話を書いてたはずなんですが…どうしてこうなった?(・_・;)

まあ最近ネガネガしててスランプ気味だし、仕方ないよね(´・ω・)人(・ω・`)ネー(マテ

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月もない夜の景色を眺めながら、暗い空間にマスターは紫煙を吐く。
暫くそうやっていると煙草の明かりに誘われたのか、小さな光が揺れながこちらに飛んできた。
指を軽く差し出せば、光は指先に止まった。


「こんな街中で、見れるとは思わなかった…」


そう小さく呟いて煙草をくわえ、再び煙を吐く。


「マスター、何してるの?」


そう後ろから声をかけて来たのは、リンだった。
リンはそのままマスターに近付き、その背中にもたれてくる。
マスターは何も言わず、光が止まった指先をリンに向けた。


「これなぁに?」


リンはその光を見ながら、首を傾げた。


「…蛍ですか?珍しいですね」


その疑問に答えたのは、後ろにいたテトだった。
テトはマスターの隣に近寄り、前屈みで蛍に目をやる。


「ホタル…?」

「そ、蛍。昆虫の一種ね」

「え?虫なの?」


リンは驚いた声を上げ、マスターの指先の光を見つめた。
するとマスターの指先から蛍は離れ暫く宙を飛び回って、そのままリンの手の甲に止まった。
手に止まった蛍をリンはキラキラと輝いた目で見つめ、「レンにも見せてくる!」と言って静かに駆けていった。


「嬉しそうでしたね」


微笑みながらそう言ったテトの言葉を聞きながら、マスターは側に置いていた灰皿に小さくなった煙草を押しつける。


「うん。こんな場所でも、いる所にはいるもんだね」


リンの嬉しそうな表情を思い出し、マスターの顔も自然と綻んでいた。
暫くテトとマスターが外の景色に目を向けていると、後方から静かに近づいてくる二つの足音が聞こえてきた。

振り返ってみれば、両手を前に添えてポロポロと涙を流すリンと、付き添うようにリンの肩を抱えるレンがいた。
マスターはゆっくりと二人に近寄り、腰を落として目線を合わせる。


「マスターぁ…」


泣きながら自分を呼ぶ少女の手を自らの両手で包むようにして、マスターはその両手の中を覗き込む。
そこには先程の蛍が横たわっていて、灯らない光が命の終わりを告げていた。


「私の…せいなの?私が、乱暴にした、からなの?」

「…違うよ、リンのせいじゃない」


泣きじゃくりながらそう言うリンの後に、レンは訴えるように否定の言葉をマスターに向ける。


「分かってるよ、レン」


マスターは優しく微笑みながら「リン」と、宥めるように名前を呼びかける。


「これはリンのせいじゃないよ、寿命だったんだろうね…」


「寿命…?」


リンは泣きながらも、マスターの言葉に疑問を返す。マスターは片手で、リンの頭を撫でながら答えた。


「うん。蛍は成虫になってから、一週間位しか生きられないらしいから…それがたまたま、今日だったんだよ」

「なんで…そんなに短いの?こん、なの…悲しすぎる、よ………」


そう言って、リンの瞳から流れる涙の量が増す。
自分の手の中で生命が尽きた、リンにとっては初めての経験だっただろう。
そしてその衝撃は心優しい少女にとって、計り知れない程に大きかったようだ。


「…短く儚いからこそ、大事にしなきゃいけない物があるんだよ」


マスターは諭すように、リンに語りかける。


(限りる命…。じゃあ、朽ちない私達は………)


マスターの後ろにいるテトは、胸の前で手を強く握りしめる。
テトがレンに目をやると、同じようにその表情にはどこか苦悶の色が浮かんでいた。


朽ちる事なく、尽き果てない私達は―――


「違うよ。テトさん、レン」


マスターの言葉に、目線を落としていたテトとレンは同時にマスターに目を向ける。
マスターは、リンの頭を撫でながら続けて言った。


「それは比較できる物じゃない、比べちゃいけないよ」


「でも…っ!」


レンが口を開くとそれを遮るかのように、マスターはレンの頭にも手を置いた。
マスターの顔を見ればそこには優しげな笑顔があって、レンはそれ以上は何も言えなくなった。

マスター立ち上がり、ベランダの近くにある戸棚からスコップを取り出す。
涙を流すリン、険しい表情のテトとレンを見ながらマスターは言った。


「それじゃあ、弔ってあげよう」










*










近くの公園に着いた四人は、小さく作られた土の山の前で手を合わせていた。
周囲はすっかり暗くなっており、時折鈴虫の鳴き声が響いた。


「ここなら花も多いし、蛍も寂しくないでしょ」


マスターは立ち上がって、軽く伸びをしながら言う。
今は暗くて確認しづらいが、もられた山の周りには色とりどりの花が咲いていた。


「リン、落ち着いた?」

「…うん」


先程よりは落ち着いた様子のリンではあったが、未だに静かに涙を流していた。
そんな彼女を心配して、レンはずっと側に付き添っていた。


「…夜も大分、涼しくなりましたね」


レン達と同じように腰を落としていたテトは、夜風を肌に感じながら言う。
冷たくなった風は静かに吹き、夏から秋への移り変わりを告げているようだった。


「夏も、そろそろ終わるかな…」


マスターがそう言って、星がちらつく夜空を見上げた。
日中はいまだ茹だるような暑さをほこっている分、この夜の涼しさにはどこか違和感を感じさせらる。

各々が思いにふけっていると、レンの肩に重圧がかかった。
レンが目をやれば泣き疲れたのか、リンがレンの肩にもたれていた。
リンの頭は一定のリズムで揺れながら、瞼は重そうに閉じかけている。


「リン、眠いの?」


レンが聞くとリンは「…大丈夫」と弱々しく答えたが、様子を見る限りではもう限界のようだ。
その様子にマスターとテトも気付いたようで、マスターは苦笑しながら「そろそろ帰ろうか」と言った。










「レンくん、やっぱり代わろうか?」


マスターと並んで歩くテトは、振り返って後ろにいるレンに声をかける。
レンの背中には、静かな寝息を立てているリンがいた。


「ん…大、丈夫だよ」


レンは余裕の笑みを見せるが、額には汗が滲んでいた。
足元がおぼつかず見ている側としては危なっかしく、真っ直ぐ歩くのもやっとのようだ。


「でも…」

「…テトさん」


テトが何か言いかけて、マスターがそれを遮る。
テトは不思議そうにマスターを見るが、マスターは小さく首を横に振った。


「あれはレンの役目だよ。他の誰でもなく、ね」

「…途中で倒れそうで正直、見てて怖いんですが」

「大丈夫、家までもう少しだし。それに、意地くらい張らせてあげようよ」


マスターは後ろを歩くレンに、「後少しだから頑張れー」と声をかけた。
レンはそれに笑顔で答え、歩を進める足に力を込める。


「…マスター」

「ん?」


歩き続ける中、テトは口を開いた。
マスターも歩を止めずに、その呼び掛けに答える。


「何であの時、私の――私達の考えてる事が分かったんですか?」

「あの時?…あぁ、あれね」


マスターはそう言い、自分の言葉を思い出した。

『それは比較できる物じゃない、比べちゃいけないよ』


「短い付き合いじゃないんだし、何を思ってるかくらい分かるよ」


マスターは笑いながら言うが、テトの表情は曇っていた。
VOCALOIDやUTAUであるテト達に、寿命などあるはずもない。


そんな自分達に命の輝き何てものは存在しない―――


テト、そして恐らくレンもそう考えていた。
その事実を突き付けられたようで、何故かそれが辛かった。
それは、最初から分かっていたはずなのに―――


「…テトさんもレンも、考えすぎなんだよ」


マスターが少し呆れたように、テトに言葉を向けた。

「『限りある物は美しい』、よく言われる言葉だけどさ…その真逆なんてないよ」

「でも…それで私達は、生きていると言えるんですか?マスターと同じように…」


テトの表情の曇りが増すのを見て、マスターは溜め息をこぼした。
マスターは無言でテトの手を握り、突然の事にテトが驚く。


「マスター?」

「生きているよ、ちゃんと」


握った手に力を込めながら、マスターは言葉を続ける。


「こうすれば体温も感じられるし、心音だって伝わってくる。泣いたり笑ったりする事が出来る心だってある…」





それはちゃんと
生きてる証拠になりうるよ





「…何か、はぐらかされてる気がします」

「そうかな…。まあ難しい事は考えないで、今が楽しければ良いんじゃない?」

納得いかない顔でそう言われたマスターは、笑顔で誤魔化しでレンの側に行った。


(…逃げた)


そう心で呟きながら、並んで歩くレンとマスターに目をやる。
さっきまでの悩みがなんか馬鹿馬鹿しくなって、テトは夜空を見上げた。


(今が楽しければ、か…)


なんとなく…ホントになんとなくではあったが、テトは大事な事が分かった気がした。




「難しいよなぁ…こればっかりは」

「何が難しいの?」


マスターの小さな呟きに、レンは疑問を返す。
「なんでもないよ」とマスターは返事をし、目の前を歩くテトに視線を向けた。










(誰がどう思っても、ちゃんと生きてると言えるよ)

文をメインに、色々と創作中。
基本テトさんと鏡音が大好きです^^*(もちろんボカロ全般好きです)

よく色々な作品を巡り歩きしてます。一行詩に出没しているので気軽に絡んでくれると嬉しいです♪

最近は絵師さんのイラストから文を書いてみたいと思っていたり…。
また、僕の書いた文からイラストを書いて頂けたら嬉しいなと思ってます←


ツイッター始めて見ましたが、使い方がよく分からないww
よければお立ち寄りください♪
http://twitter.com/Defectiveprodu

pixivでも作品を投稿し始めました、良ければご覧ください^^
http://www.pixiv.net/member.php?id=2245288

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