『助けて…。』

真っ白な世界に居た。此処は何処だ?もしかして死んだんだろうか?

『誰か助けて…。』

あちこちから、まるでこだまする様にあの声が響いていた。何処までも悲しそうで、叫ぶ様な、祈る様な、そんな声だった。また…泣いてる…?声の方へ走ろうと思った。

『止めて。』

やけにハッキリとした声に振り返った。

「お前…!」

『幎を止めて…。』

真っ黒な服と、真っ赤な髪と、真っ青な瞳と、そしてあの銃に似た青白い羽が目に焼き付いた。

「…船…流船君!流船君!」
「ん…?」
「流船君!」
「…芽結…?」
「良かったぁ…。」
「あ…あいつ等は?!それに幾徒が!!…痛っ…!!」

全身に刺す様な痛みが走って思わずよろめいた。床を見詰めたままグラグラする頭を大きな手がくしゃっと撫でた。

「無茶苦茶なんだよ、バカガキ。」
「幾徒!…無事だったんだ…。」
「おう、お陰様でな。…おっと!」
「流船君!」

ホッとしたのか全身から力が抜けて倒れ込んだ。幾徒に支えられながら粉だらけになったソファにゆっくりと座る。

「何か全身痛い…。」
「当たり前だ。何人居たと思ってる?生身で当たれば強化してても負担がデカイ。
 無茶した分のツケが出てるんだ。」
「幾徒さん凄く心配してたんだよ?応急処置の言魂ずっと打ち続けて…。」
「余計な事は言うな!」

少し照れ臭そうな幾徒に笑みが零れた。だけど同時に色んな事を思い出して不安が襲った。

「あいつ等は?一体何が起きたんだ?」
「俺はお前が助けてくれたんで無事だったが、残念ながら言魂の銃を半分持って
 行かれた。何処の奴等かはまだ判らない。」
「でも、適合者じゃないと銃は使えないんですよね?」
「ロックが掛かってるからな。普通の奴には引き金を引く事もままならない筈だ。」
「じゃあ適合者が危ないんじゃないのか?候補とか居ないのか?」
「いずれにしても残った武器の適合者だけでも早急に見付けて保護しないと
 いけないだろうな。」

何とも言えない不安と遣る瀬無さに溜息が出る。何が起こってるんだ?あいつ等は幾徒を狙っていた。それに武器を集めて、どうするつもりなんだ?軍隊みたいだったし、兵器利用?

「流船、ちょっと良いか?」
「ん?」
「お前、あいつ等が来る前『此処から出ろ』って行ったけど…どうして判ったんだ?」
「あ、うん。それなんだけどさ…。」

幾徒と芽結にあの幽霊みたいな奴の事を掻い摘んで説明した。幾徒は暫く考え込んだ後、徐にノートを立ち上げて画面を俺に見せた。そこに映っていたのはぴよぴよした二頭身のキャラクターだった。

「あ!それ…!」
「マジで?」
「うん。えっと…俺が見た時はもっとこう大人って言うか、本当に人と同じで生きてる
 みたいだったけど…。」
「これはウチの職員が作ったグラフィックツールだ。で、このぴよぴよしてんのが
 アシスタントキャラ『絵襾』何年も前にフリーツールとして一般配布されてる。」
「…何でそれが幽霊になんの?」
「俺が知るかボケ。」

助けなきゃ良かったかも…。

ライセンス

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コトダマシ-14.助けなきゃ良かったかも…-

お前等粉まみれ

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投稿日:2010/10/16 02:11:23

文字数:1,283文字

カテゴリ:小説

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