ゴーン……
    ゴーン……
  ゴーン……


――夕暮れの空に鐘の音が響き渡る。

カテドラルのカリヨン。豪華で何処か威厳のある装飾の施された其れは、この国の王宮から贈呈された物だった。

やがて陽が沈み、黄昏が宵に移り変わる。
オランジュからノワールに溶け往く狭間……深く青い夜空。宮殿の南の塔から臨む空が美しかった。

この国の国花は青薔薇。夜を包む紺碧とよく似た色をした――


今日は満月。飴色の、魔の力を呼び寄せる妖しい光を放っていた。

月影が照らし出したのは――彼女が愛した彼の白い肌だった。



――紺碧アリア――



黒いレースとフリルのドレス。
それを染め上げたのは、黒より深く、鮮やかな赤。
足元にまで伸びる長い髪に挿されたのは青薔薇。

嗚呼……終わってしまったのね。
貴男……事切れてしまったのね。

これでよかったのかしら?
これで――貴男は私のものになったのかしら――?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

手向けの青薔薇【紺碧アリア 考察小説】

閲覧数:288

投稿日:2009/09/30 15:05:14

文字数:405文字

カテゴリ:小説

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