「カイト殿! 貴殿を偉大な先達と見込んで、何卒 御助言賜りたい」

何処となく緊張した面持ちでKAITOを訪ねてきた がくぽは、開口一番そう言って頭を下げた。

「偉大な先達!? うわぁ照れるなぁ。どうしたの、神威君」

一方KAITOは無邪気と言ってもいい様子で照れており、見事に対照的だ。
それでも先を促す分別は残っていたようで、軽く首を傾げてみせる。

「カイト殿もお聞き及びかとは存ずるが……実は此度、我に新たな妹ができたのだ」
「あぁ、『Lily』ちゃんだっけ。おめでとう」

版元が違うとはいえ同じボーカロイド、新たな仲間が参入する事はKAITOも承知していた。すぐに思い至り、にこやかに祝いの言葉を述べる。
さらりと祝われて、がくぽは少々面食らったようだった。

「これはかたじけない……で、その、リリィの事なのだが」
「? うん」
「我としては、こう……大和撫子というかだな、和の心を解する妹であればと期待していたのだが。あぁいや、グミに不満があるというわけでは断じて無いのだぞ」

言葉を選びつつ、もうひとりの妹であるGUMIにも配慮しながらで、がくぽの歯切れは悪い。が、KAITOも察して、うんうん、と頷いた。

「あー、言いたい事はなんとなくわかったよ。リリィちゃんも、和風とは程遠いみたいだしねぇ」
「然様。いや、無論、それはそれで構わんのだ。ただ……如何様に接すれば良いのか、我には皆目見当がつかぬ。弟妹の多いカイト殿ならば、何某かの指針を授けて下さるであろうと参上した次第なのだ」
「えぇ? 頼ってくれて嬉しいけど、うちはほら、皆わりと同系統っていうか」

そんな方向でアテにされたとは思っていなかったので、KAITOの声に驚きと焦りが滲む。
というか、と がくぽをまじまじと眺め遣り、苦笑を浮かべた。

「むしろ異色なのは神威君だしねぇ。グミちゃんの時はどうだったの」

問えば、がくぽは記憶を探るように小首を傾げる。

「グミはほれ、あのように物怖じせぬ気性であろう。我が兄だと言えば『あっはい、よろしくー!』で済んでしまったのでな」
「軽っ! 流石だねぇグミちゃん、大物になるよ」
「然様であろう」

妹を褒められ(?)、がくぽが誇らしげに笑む。
その顔にKAITOも微笑み、「それだったら」、と口を開いた。

「心配しなくても、グミちゃんが上手く間に入ってくれるんじゃない? グミちゃんにとっても初めての妹だ、きっと喜んでるだろう?」
「むぅ。しかし妹に任せきりというのも、兄としては如何なものかと」
「グミちゃんだってお姉さんになるんだから、いいところ見せたいと思ってるかもよ? 時には譲って華を持たせるのも、兄の役目じゃないのかなぁ」

腕組みをして渋るがくぽにも、KAITOは ふんわりと笑んだままだ。けして押し付けるでなく穏やかに示唆され、成程、と小さく呟きが漏れる。
微かな声を聞きつけて、KAITOがにっこり頷いた。

「神威君は普通にしてなよ。リリィちゃんの方でじきに慣れてくれるって。グミちゃんが困ってたらその時こそ兄の出番だし、うちの女性陣に振ってくれてもいいしさ。女の子同士の方が話し易い事もあるだろうから」

ね?、と海色の瞳を向けられると、その言葉はがくぽの中にすとんと納まった。

「……うむ。流石はカイト殿、やはり貴殿を頼ったのは正解であったな。まこと、かたじけない」
「いやぁ、お役に立てたなら良かったよ」

ひとつ首肯したがくぽは清々しく笑い、深々と頭を下げた。KAITOも軽やかに笑んで、ぱたぱたと手を振って頭を上げさせる。
和やかな空気が場に満ちた時、あ、とKAITOが手を打った。

「そうだ、ひとつ言い忘れてた」
「む? 何であろうか」

不思議そうにしながらも姿勢を正すがくぽに、にこやかな表情のままでKAITOが告げる。

「うちの妹達に相談しに来るのは、あくまでもグミちゃんとかリリィちゃんだからね? 神威君は俺かレン君のところに来るように。当然めーちゃんも駄目だよ?」

にこやかな表情のままだというのに、何故だかどうにも爽やか黒い。
言外の圧迫感に気圧されて、がくぽの喉がごくりと鳴った。冷たい汗が背を伝う。

「し、承知した」

そう答えるより他に、一体どうしようがあっただろうか。
満足気な笑みを浮かべるKAITOからは先程の威圧感が消え、がくぽは こそりと安堵の息を吐いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

*兄さん談義* 【がくぽがKAITOを訪ねてきました】

今回は単発ネタでしたー。
Lilyさんがインタネボカロだと知った時、「妹がふたりともああいう系統で、がくぽは上手くやっていけるのか?」と思ったんですよね(むしろなんで がくぽだけ和風系統?)

その時はそれだけで流したんですが、『夏海讃歌』シリーズを書いた時に『KAITOとがくぽの接し方』がなんとなく浮かんで、そしたらこんな話が…。
普段は仲の良い先輩後輩なんだけど、がくぽがMEIKOや妹達に近付いた途端、KAITOは笑顔が怖い人になるといいなぁと思いますw

がくぽの口調がかなり不安なのですが…文法的におかしいところがあったらごめんなさい; 曖昧な部分はできるだけ調べたんですが。

ところで今気付いた、マスターがいないよ!? 初めてじゃないですか私?
しかも、あとはインタネ家の妹組を書けばボカロコンプだ。GUMIはともかく、Lilyはまだキャラがわかんないけど。

ちょっと衝撃の速報に急遽オマケが付きましたw 「前のバージョン」からどうぞー。

*****
ブログで進捗報告してます。各話やキャラ設定なんかについても語り散らしてます
『kaitoful-bubble』→ http://kaitoful-bubble.blog.so-net.ne.jp/

閲覧数:900

投稿日:2010/08/29 18:32:16

文字数:1,833文字

カテゴリ:小説

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  • アリサ

    アリサ

    ご意見・ご感想

    こんにちは
    URLで飛んできました

    アリサです




    はい!
    アイコン通り,がくぽ,大好きです!
    ありがとうございます!!

    これから,紹介してくださった残りの3つも回ります


    それでは,失礼しました!

    2011/04/02 12:48:52

    • 藍流

      藍流

      こんばんは、アリサさん。
      読みに来てくださってありがとうございます!

      がくぽもイイですよね?
      メインに据えた話も幾つかネタはあるんですが、何故か頑なに『古風な喋りで!』というイメージがあるため、なかなか手をつけられずにいますw
      あの口調で書くの難しいんだ……時間かかるし。

      2011/04/03 02:40:40

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