集合場所に戻った私が最初に見たのは血の気の失せた顔で医療班に囲まれている流船君だった。それから搬送車の中で辛うじて息をしている幾徒さんだった。ゼロさんが救出した聖螺ちゃんは目を背けたくなる程全身傷だらけだった。私はまるで置物みたいに呆然と皆を見ている事しか出来なかった。気が付いた時には、皆病院に運ばれていて、幾徒さんはお母さんと同じ様に体中に機械が繋がっていた。
「芽結ちゃん!」
「…頼流…さん…。」
「る…流船…!流船は…?!」
「あ…今、処置室に…意識も戻ったってさっき…。」
「…はぁ…。」
頼流さんは真っ青な顔で、ぜいぜいと肩で息をしながらソファに座り込んだ。二人だけの家族だって言ってた事を思い出して、また胸が苦しくなった。
「ごめんなさい…私…私が巻き込んだりしたから…!私が流船君に甘えてて…
何かあっても流船君は大丈夫だって…私…私…!」
「…芽結ちゃん…。」
涙を堪えていると処置室のドアが開き、スタッフの一人が顔を出した。
「流船!」
「頼流…芽結…。」
「この馬鹿!寿命が縮んだぞ!」
「ごめ…痛っ!いたたた…!」
声も表情もしっかりしているけど、施術着の下から覗く白い包帯が痛々しく映った。言葉が出なくて、足が動かなくて、嬉しいのに笑う事も出来なかった。
「御家族の方ですか?怪我について少し説明をしたいのですが…。」
「判りました。」
医師に連れられて頼流さんが部屋を後にする。ドアの閉まる音が響くと、部屋に重い沈黙が残った。タイミングが掴めなくて俯いたまま顔を上げられず、キュッと唇を結んで床を見詰めた。
「…芽結。」
「はっ!はい!」
「何だよ『はい』って…。」
「あ、ご、ごめ…、何か…緊張して…。」
「…こっち来れる?」
「え?う、うん…。」
おずおずとベッドの横にある小さな椅子に座ったと思うと、急に肩を引き寄せられそのまま抱き締められた。
「へっ?!…流船君…?!」
「悪い…マジで死ぬかと思った…。なぁ、俺生きてるよな?芽結も本物だよな?」
微かに声と手が震えているのが判った。包帯を避ける様にそっと背に手を回して抱き返しながら言った。
「生きてるよ…流船…。私も正真正銘本物だよ。」
「芽結…。」
笑えた…のかな?
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