カエルがいうんだ
「ぼくは王様になれたのにね」
いつも帰り道でカエルはいうんだ
ぼくはいつも上からカエルにいうんだ
「ぼくはいつだって王様さ」
帰り道はいつも曲がり角をまがる
少しの坂道をくだって 駄菓子屋でこっそりお菓子を買って
カエルはいつだってぼくを待ってくれる
カエルはいつだってぼくのあいぼうだ
ぼくがいうんだ
「おおきくなんてなりたくないね」
いつも放課後ぼくはいうんだ
カエルはいつも下からぼくにいうんだ
「ぼくはもう大人さ」
横切る車が水溜りをけとばすのを見て
長靴がぬれたのが嫌で カエルはびしょぬれを喜んで
ぼくはいつだってカエルの味方でいたい
ぼくはいつだってカエルに追いつけない
おたまじゃくしのころからぼくらは一緒
それなのに ぼくら もうさよならなんだ
ねえ ぼくは
カエルのこと 忘れたくないんだよ
大きくなんてなりたくないんだよ
ねえカエル ねえ・・・
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