【オリジナルマスター】 ―Grasp― 第十話 【アキラ編】

投稿日:2009/11/15 22:08:48 | 文字数:4,558文字 | 閲覧数:129 | カテゴリ:小説

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マスターの設定で異様に盛り上がり、自作マスターの人気に作者が嫉妬し出す頃、
なんとコラボで書きませんかとお誘いが。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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アキラ、学校をサボってなにやらしてみるの巻。

まあ学校サボるのはいけないことだと思いつつ、結局昼まで寝過ごしてってのは
よくある話ですよねー(ダメ学生)。こんな大学生になっちゃだめですよ。

今回はフラグ回もいいとこなので、とりたてていうことがありません。
えーと、こはさん、俺何言えばいい?(笑(待て
ということで、フラグ回収に向けていろいろ書いてきますー!

悠編では、先輩が初音さんとお話しているようなので、こちらも是非!

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白瀬悠さんの生みの親で、悠編を担当している桜宮小春さんのページはこちら!
http://piapro.jp/haru_nemu_202

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TEXT
 

オリジナルのマスターに力を入れすぎた結果、なんとコラボで書けることになった。
オリジナルマスターがメイン、というか、マスター(♂)×マスター(♀)です、新ジャンル!
そして、ところによりカイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手は、かの純情物語師(つんばる命名)、桜宮小春さんです!
(つ´ω`)<ゆっくりしていってね!>(・ω・春)



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 そのひとを思い出すとき、いちばんに思い出されるのが、灰色の冬空と、そのひとの住むアパートの白い壁だ。次に、くすんだクリーム色の扉、鍵をあける私の手。ぞんざいに掃除されたその家の玄関先、私は靴を脱いで狭い部屋に上がり――あの光景を目にするのだ。
 幸福な日々。あたりまえにあった日常。それらが欠片も残さず砕け散ったあの瞬間は、いつの間に崩壊していたのかもわからないくらい、周到で念入りで計画的な速度で、私のもとへと訪れた。

 しあわせな恋――だと思っていた、はかなくもいとしい白昼夢からさめたその瞬間、私は、なにをしていただろうと思い返す。
 今になっても、涙ひとつ流さずに息をしていたことしか思い出せない。



―Grasp―
アキラ編 第十話



 こうして泣き癖がついたのはいつからだったか。わかりきっている。あの冬の日を超えてからだ。
 弟が生まれる前は、自他共に認める泣き虫だったのを覚えている。いつからか、私は迂闊に泣かなくなった。泣くのは恥ずかしいことだ。負けを認めることだ。そうして自分を律して、泣くことを我慢していたら、そのうち泣けなくなっていた。そのことで、色々言われもした。血も涙もないだとか、意地っ張りだとか。泣きたくても泣けなかった私は、ただ足を棒にしていただけだった。
 ――晶はつよい女だな。
 そのひとにそう言われても、そんなことない、とは、言わなかった。ただ、むやみに女の子扱いされることにも慣れていなかった私は、褒められている気がしない、と、ひとことだけで返答したのだ。

 いつか、そのひとに言われた。
 ――泣いていいぞ?
 そう言われて、張っていた糸が弛んだのかと訊かれたら、そうだとしかこたえられない。泣いていい、なんて、自分では絶対にゆるせないことのはずだったのに、なぜあんなにもかんたんに、私は泣いてしまったんだろうかと、今でも悔やんでいる。

 気遣いの言葉をかけ続けていた唇が、私への好意を囁くようになるのに、それほど時間はかからなかったように思う。
 ――晶、すきだ。
 それは、私たちにとって告白ではなかった。その言葉はただの確認で、ずっと前からそんなことはわかりきっていたのだ。私なんかのどこがいいのかと問うても、そのひとは、これ以上ないというような笑顔で、臆面もなく言うのだ。
 晶のぜんぶにきまってるだろ――と。


「――ッ」

 息が詰まった感触に、布団の重みも忘れて跳ね起きる。時計の短針は、まだ5と6の間にあって、カーテンを引いた窓の向こうからは、うっすらと白い光が洩れている程度だ。

「……かんべんしてくれ」

 朝の寒さに布団をたくしよせ、膝を抱えてまるくなる。布団が巻かれていない背中がつめたい。うまく息を吸えない肺に、ゆっくりと酸素を押し込むようにして呼吸する。吸った空気は、夜から朝にかけての時間帯に特有の、すこしだけ曇った匂いがした。
 なんだって今更思い出すのだ。動揺しすぎだ、東雲晶。たかが好きだとひとこと言われたくらいでどうした。あんなありふれた、どうとでもとれる言葉ひとつで、こんなにも。どう考えてもおかしいだろう。納得いかない。道理に合わない。私はいつからそんな子になった。
 携帯電話のディスプレイを確認する。今日の日付と、現在時刻――05:52の文字が浮かんでいる。寝なおすにも微妙な時間だ。さて、どうするか。
 携帯電話のアラーム設定を変更して、私は、布団にくるまりなおし、冷えた背中をあたためた。


 次に目を覚ましたのは、太陽も中天を過ぎた頃だった。いや、自発的に目を覚ましたわけではない。アラームを切ったはずの携帯が鳴りだすのに、着信以外の可能性はなく、着信とあれば、電話に出ないわけにはいかなかったからだ。

『アキラ、また寝てたの?』
「あー……うん」
『今日の授業どうすんの』
「わるい、てきとうになんとかしといて」
『はいはーい』

 まったく、いい加減夜更かししすぎなんだから、と、同輩に呆れられながらも通話を終了した。
 午後も1時を過ぎている。まずいぞ寝過ぎた……と脳内テロップが流れるが、それほど「まずい」とは思っていない。所詮テロップ程度の薄っぺらさというやつだ。寝過ごしての遅刻欠席は、既に常習犯になりつつあるので、ほんとうに用のない時以外は、もう諦めの境地である(ほんとうはよくないのだろうけれど、だらけ癖がつくとどうもいけない)。
 やれやれ、と、身を起こして、目に入ってきた光景に、昨夜の苦みが走る。

「……片づけるか」

 玄関に散らかしっぱなしの初音さんの私物――だろうか。可愛らしい桃色のポシェットは、基本的に白黒グレーか木目色だけで構成された私の部屋には、なかなか不釣り合いな彩色だと思った。
 ポシェットを片手にぶら下げて、初音さんが投げ付けて行ったポシェットの中身を拾い集める。靴棚の下に入り込んでいないのを確認して、これで全部だろうと引き揚げた。
 あらためてポシェットの中身を確認して、ふと、その内容物に違和感を覚えた。ティッシュやハンカチといったこまごまとした雑貨に、生のままのUSBメモリがひとつ。なんだって、初音さんが普通に持ち歩くようなものの中に、こんなものが入っているのか。それに、たぶんこれは、この間悠サンがうちに持ってきたものと同じUSBだ。
 これが何を意味するのかなんて、考えるまでもない。おおかた「私とはもう一緒に曲作りはできない」ということだろう。顔もあわせたくないという悠サン側の意思表示なら、それで初音さんに持って来させたのなら合点がいく。
 じっさい悠サンにも悪いことをしたと思う(なにも言わずに敵前逃亡なんて、私らしくもなく卑怯が過ぎる)。初音さんだって、わざわざここまで持ってくるのも私と顔を合わせるのもいやだったろう(その上、癇に障るやりとりをさせられたのだから、私が殴られてもとうぜんだ)。

「……しかし、キミに罪はないからな」

 そっとそのUSBを撫でて、中に入っているであろう曲データに言う。
 私が悪いんだ。パニクってヒスって、最終的にことをポシャったのは私の方だ。曲だけはきちんとマトモに仕上げてやる予定だったが、しかたない。こうなった以上、もうひとりでやるしかあるまい。
 ああ、美憂先輩になんて説明しよう。そんなことを思いながら――意識的に悠サンのことは考えないようにしながら――学校をサボったことで空いてしまった午後の時間を、曲のほうに充てることにした。


 USBメモリには、歌詞データが入っていた(今回はきちんと開けるようだ)。一緒に編曲済みらしきコラボ曲のデータと、タイトルのない曲データらしきものが入っている。曲のデータを確認しようとして、ヘッドフォンを耳に当てる(せっかく性能のいいスピーカーがあるのに、最近では最終調整の時にしか使わなくなった。近所からうるさいと苦情が来るとこまるから)。
 曲データの片一方、編曲済みのデータだと踏んだ方は、たしかに、前に送った曲データが編曲されたものだった。全体的に落ち着いた雰囲気で作ったのだが、余計なものがこそげ落とされて、きちんと整って帰ってきた曲に、はからずも困ったような気もちになった。
 きれいにしてもらえてよかったね。だけど、きみをきれいにしてくれたひとは、もう制作を投げてしまったんだよ――まるで、親を亡くした子どもに言い聞かせているみたいだ、と、その例えの的確さに自分で自分に苦笑した。あたっているんだか、あたっていないんだか、よくわからない的確さの例えだけれど、まったく違和感がないのはなぜだろう。
 さて、もうひとつのデータだ。先ほど聴いたものよりも容量がおおきいので、いまのものよりいろいろ足された修正版だろうか。もしかして、調声とミックスしたものかもしれない。なんにしろ、確認する必要はあるだろう。

 そうして何の気なしに再生ボタンを押して、流れてきたその『声』に、私はひどく動揺した。

「な、んっ……!」

 思わず立ち上がる。ばたんがたがたと盛大な騒音を立てて椅子が後ろに倒れたが、そんなこと気にする余裕はない。
 まさかもう調声版と合わせたのかと思ったが、しかし、鼓膜を震わせたのは、まぎれもない人声だった。いや、ただの人声じゃない。
 悠サンの声だ。
 歌唱自体は、とりたててヘタというわけでもないかわりに、上手いというわけでもない。声だって、いつもの悠サンの声と特に変わりはないし、その声がそのまま音符をなぞっているといえばそれだけなのに。
 ――何だ、これ。
 このひと、この曲になんて歌詞を充てたんだ。まさか、と思って歌詞のテキストを開く。そこには、まぎれもなく、うたわれているものと同じ歌詞。
 声に乗ることばを追うのがためらわれるほど、ストレートでやさしくて、それでいて胸に刺さることばの数々。思わず耳をふさいでしまいたくなる。
 いや、耳をふさぎたくなった理由は、それだけじゃない。歌詞以上に、迫るなにかが大きすぎる。

 なんで、このひとのうたで、こんなにせつなくなるんだ。

「なにをうたってるんだ、このひとはッ……!」

 曲の途中で、乱暴にヘッドフォンを外した。震える手から、ヘッドフォンが滑り落ちて、絨毯の上にぼとりと落ちた。

「何……なんなの、なにがしたいの……!」

 悠サンのつけた詞は、孤独をテーマに、そこからどう抜け出すか、抜け出せるか、試行錯誤する子どもみたいなオトナの姿を思わせた。それは、間違いなく私が自分――『東雲晶』を思うときと、ほとんどぴったり印象が重なる詞で。
 こころのなかみを見透かされたような感覚に、不快感を覚えるよりも、むしろ、安堵しそうになった自分を恥じた。
 もしも、悠サンが、この詞を考えるとき、私のことをおもって書いたのなら、と、思ってしまった自分が、心の底から嫌だった。
 悠サンがこの曲を歌ったとき、何を……誰を、おもってうたったのか、と、考えてしまったことは、私にとって致命的な油断のように思えた。

「ほんとう、に」

 その先は、口に出せなかった。怖くて、ことばにできなかった。
 ほんとうに、悠サンは、私のことが、すきなのだろう――なんて、おそろしくて声に出すのもためらわれたけれど、十中八九それは、ほんとうのことなのだろう。
 うたをきいて、いや、ほんとうはその前からわかっていた。悠サンは、文字通り本気で、私に「好きだ」と言っていた。

 だったら、なおさら、突き放すべきなのだ。

 だって、これ以上近づいてしまっては――きっと私は、悠サンをきらいになってしまう。

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。
MEIKOがすきです。KAITOがすきです。カイメイがすきです。

写真素材はサイズ・色調その他、改変自由のフリー素材です。お好きにどうぞ。
なにかが誰かの琴線に触れたらさいわいです。

⇒ブログ:http://phantomlake.blog58.fc2.com/
⇒メール:croak-crash【あっとまーく】hotmail.co.jp

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