少し昔の話  【シェアワールド】響奏曲【異世界側】

投稿者: usericonsunny_mさん

投稿日:2011/05/17 18:50:06 | 文字数:1,960文字 | 閲覧数:372 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン

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 まろく明るい声が、響いた。
 
 短い抑揚でもって紡がれたその言葉は世界から力を引き出す。先ほどの長髪の男とは違う男性の声だった。恐ろしくて目を閉じたままの子供は、その声の主を確認する事が出来ないまま、しかし、周囲の空気の中に何かが満ちて濃くなっていく気配を感じていた。
 一瞬だけ振れた響き。青く晴れ渡った空を連想させる突き抜けるような抑揚。短い呪文によって引き出された力が爆発的な光を生んだ。閉じたままの子供の瞼を突き抜けて、閃光が周囲を焼く。今度は眩さで目が開けられなくなった子供の耳に、そっと囁く声が頭上から降ってきた。
「そのまま。目を閉じていて。」
それは赤く落ち着いた声。それと同時に柔らかな腕が子供を守るように抱きしめてきた。
 その腕の柔らかさと落ち着いた声に守られた子供は、再びあの明るい声が響くのを耳にした。先ほどと同じどこか青空を思わせる抑揚。けれど先ほどよりもどこか男の声に馴染んだような感じがした。その短い響きに、再び閃光が生じる。
 ぎゅう、と子供を抱きしめる腕に力がこもる。その腕の中で子供は鋭い刃が質量を伴ったものを切り裂く音を聞いた。

「もう大丈夫ですよ。」
子供を抱きしめていた人がそう言ってそっと子供の頭をなでた。その優しい手のひらにゆっくりと子供が目を開けると、そこには薄紅の髪をした綺麗な女性が居た。
 怪我、していませんね。と確認するように訊ねる薄紅の女性に小さく頷き、子供は女性の背後で会話をしている三人の男女に視線を向けた。
 そこには最初に子供を助けた長髪の男に加え、青い髪の男性に朱茶の短い髪をした美しい女性がいた。この三人も、薄紅の女性も、落ち着いた雰囲気だがよく見るとまだ若い。子供よりも六、七つほど年上な程度だろうか。大人というにままだ年若い、10代後半の若者たちだ。
「カイト、お前の最初の術はなんだ。あんな中途半端なものを実践に使うな」
「いや、この間めーちゃんが造りだした術式なんだけど。案外威力があったね」
「そうね。カイトの身体に馴染めば結構な威力が期待できそうだわ」
「だから、そういう中途半端なものを実践で使うな」
「うん、だから今、がくぽがいるからこそ、試したんだよ」
そうあっけらかんと言って笑う青い髪の男に長髪の男はため息をつき、子供と薄紅色の女性の元に近寄った。
「ルカ様、お怪我はありませんか」
先ほどの二人とは異なる、丁寧な調子でそう問い掛けてきた長髪の男に、怪我なんかしないわよ。と薄紅の女性は苦笑した。
「前線に立っていないのだから怪我なんかしていません。この子も転んですりむいた程度みたいよ」
そう言って女性は子供を立ち上がらせた。ぱんぱんと、服に着いた泥を払ってもらい、子供はありがとうございました。と頭を下げた。
「助けて頂いて、ありがとうございました」
そう丁寧にお辞儀をする子供に、私は何もしてないわ。と女性は苦笑をして長髪の男性を見上げた。
「がくぽは本当に足が速いわね、吃驚した。こうやって実践で戦うところも初めて見たわ」
「ルカ様を置いていってしまって、もうしわけありません」
「そういうわけじゃないの。褒めてるの」
「塔」や「庭」から出てみると色んな発見があって面白いわね。と女性はどこか無邪気な様子でそう言った。
女性に褒められて照れているのか、長髪の男が精悍なその頬を微かに染めている。その様子を思わずまじまじと見つめていた子供に、長髪の男は気まずそうにひとつ咳払いをした。
「…そもそも、なんだってお前みたいな子供がこんな森の中に入ってきたんだ」
どこか咎めるような男のその調子に、びくりと子供は肩を震わした。

 気が付くと子供が暮らすこの世界の様子はおかしくなっていた。それまでも国の間で戦が起こったり、民族間や考え方の違いで紛争が起こったり、とあったが、それよりも酷い、根本的に深刻な問題が起こり始めていたのだ。
世界が、崩れ落ちているのだ。
 それに加えて先ほどのように狂ってしまった魔物たちが現れ始めていた。国も民族も関係なく、この世界中に平等に降りかかった理由の分からない災難。昔は気軽に出かける事の出来た森や山も、今では魔物たちに襲われる危険があるので簡単に入り込む事を許されていなかった。

「どこの町の者だ。大人たちは知っているのか?もしかして管理が行き届いていないのか?」
更に続いた長髪の男の言葉に子供は慌てて首を横に振った。
 この人たちは高度な「術を」操っている。つまりきっと「塔」の関係者だ。へたなことを言って村の人たちが咎められたら大変。
 瞬時にして警戒するような色合いを帯びた子供に長髪の男は微かに眉を寄せた。緊張感が走った空気の中、それを破るように青い声が響いた。

響き、奏でよ。世界の音律――。

終わる世界に、彼等は生きる。
ある者は崩壊の謎を解く鍵を求めて旅に身を置き、
ある者は崩壊を食い止める術を探って研究を続け、
ある者は崩壊の余波から無辜の民草を護って戦い、
ある者は崩壊を続ける世界でも当たり前に暮らし、

そして、彼は。
『世界』を渡った。


 * * * * *

興味を持っていただいてありがとうございます。
当コラボは、共通の世界設定でそれぞれが話を書く、シェアワールド企画です。
『世界』さえ共有できれば、どのキャラを書くのか、どんな話にするのかといった部分は自由にしていただきたいと思っています(勿論、ピアプロ規約の範囲内で)

がっつり連載するも良し、ぽんと思いついたエピソード1話だけ投下するも良し!
基本は小説コラボですが、絵師さんや楽師さんの参加も大歓迎☆
かなり何でもアリのフリーダムな企画ですw どうぞお気軽にご参加くださいませ♪

コラボ参加は敷居が高い……という方は、『シェアワールド・響奏曲』タグを付けての企画参加もおk!
詳しくは掲示板の「参加の手引き」スレを御覧ください^^

参加にあたって疑問などありましたら、掲示板の「質問・要望」スレをお使いください(メンバー以外も書き込み可です^^)
または、主催宛に個人メッセージを送っていただいても構いません。
お気軽にどうぞ^^

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作品へのコメント2

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    ご意見・感想

    作品UPお疲れ様です!
    女王様ルカさん来た…!
    sunny_mさんのがくるか設定を見て最初に思ったのは「ルカさんが上」だったので
    イメージ通りで嬉しいです(*´▽`)
    かいめいのくいしんぼー!なんだよお前らかわいいじゃないかくそー!!
    一歩下がってるのかいつも出し抜かれてるのか分かんないとばっちりがくぽさん萌です。
    そしてぼっけぼけなくせに案外世渡りうまそうなカイトさんずるい。好きになるしかないじゃない←

    2011/05/26 11:57:53 From  とかこ

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    メッセージのお返し

    >とかこさん
    コメントありがとうございます?!
    無邪気系の女王様になっていきそうですよ、ルカさんはw
    がくぽは無邪気さに翻弄されると良いよ!!
    そして皆の行動のとばっちりを受けると良いよ!w
    というか、本当にがくぽさんはどこまで格好つけていられるか。それが問題です

    彼らが総じてくいしんぼうなのは、私のせいかもしれません←
    というか私が書く話には、食べ物が出てくる事が多いなぁw

    かわいいとか、好きになってもらったりとか、ありがとうございました!

    2011/05/27 23:40:30 sunny_m

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    その他

    くっそう先を越された!w
    もうね、読めば読むほど自分も早く書きたくて困りましたよw

    穏やかで無邪気なルカさんと生真面目ながくぽの主従も美味しいし、悪友っぽいカイトとがくぽの距離感も美味しいし(そう、こういうのを書きたいんですよ私も!何故かいつもSとか言われるけどw)
    あと野苺をつまみ食いするカイトとメイコが、なんか物凄くツボでした! 可愛い、けど子供をフォローする気遣いなんだろう、けどやっぱ可愛い……!

    落ち着いてる、と書いてますが、でもこう、無邪気さとか初々しさが抜け切ってない感じでいいですよ!
    「子供」ではなくなったけど、「大人」というにもまだ微妙な、そんな感じ。

    術の表現も凄く好きですー! きらきらしてて綺麗で、いいなぁ。
    脳内に森の光景が浮かんで、もうほんと美味しくいただきました!
    投下ありがとうございましたー!

    2011/05/17 23:21:50 From  藍流

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    メッセージのお返し

    >藍流さん
    先を越してしまいましたw
    というか、今藍流さんの方の作品を読んで鼻息が荒くなってしまっているのですw

    このカイトとがくぽの関係は、がくぽは常にとばっちりを受けているような気がします(笑)
    カイトに好き放題されて、メイコには無理難題を押し付けられる感じで。
    なんか気がつくと俺、もしかして貧乏くじ引いてないか?みたいなw
    でもルカさんが一番なので、他の人には容赦ない態度でいると思うのですがw
    それにしても、本当にがくぽさんはどこまで格好つけいてるのをどこまで維持できるのか…。

    初々しさは残っていますか…!良かった!!
    まだ世間知らずな無鉄砲さとか、そういうのがあるかもなぁ。と思いつつ書いたので^^

    ファンタジーっぽいのはホントあまり書いていないので、ちょっとどきどきしつつw
    こちらこそ、ありがとうございました☆

    2011/05/18 22:50:15 sunny_m

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