現在は、食事も一段落し、両家のほぼ全員が律音家のリビングにて寛いでいる。

 ここにいないのは、律音家の長男カイトさんと並音家の長男レンの男コンビ。ルカ姉さん・ミク・私・レンの女コンビで、今流行の恋愛ドラマを見るためにテレビを占拠してしまったため、居場所がなくなってしまったのかもしれない。やはり女の人の方が多いせいで、カイトさんやレンに肩身の狭い思いをさせてしまっているのは、少し申し訳ないなと思う。


「あ、そうだ!私さっき、デザートにと思ってお菓子作ったのー。皆食べる?」


 ドラマも終わり、次は何を見ようかとチャンネルを目まぐるしく(それこそ、本当に番組内容を吟味していたのか怪しい速度で)回していた手を止めて、ふいにミクがそんなことを零した。それに真っ先に反応したのは、只今中学生で成長期のリンちゃん。


「お菓子!?食べる、食べるッ!」
「リン、最近食べすぎ。太るわよ?」
「ルカ御姉様、酷い!今はただ成長期なだけだよッ!」
「そーだと良いけどね」


 ソファにゆったりと座ったルカ姉さんが、唇に薄く笑みをのせながら手元のファッション雑誌のページをめくる。それにむくれるリンちゃん。

 そう言えば、律音家の4人と並音家の3人を比べると、律音家の方が感情豊かな人が多いなと私は思う。ルカ姉さんもレンも昔からあまり感情の起伏が激しくない人達で、どちらかと言うといつもクールで落ち着いていた。それに対して律音家の4人は、感情豊かで、いつも表情をころころ変える。

 また、律音家の人達は自己主張もしっかりしているから、キョウダイ喧嘩になると互いに声を張り上げて大変なことになる。我が家でのキョウダイ喧嘩(と言うか、むしろ専らルカ姉さんvsレン)は声を荒げることも拳を振るうこともない冷戦で、ただ殺傷能力の高い毒の含まれた言葉が2人の間を往復するだけの静かなものだ。

 どちらの喧嘩の方が良いかは置いておくとしても、そうした違いを見る度に、やはりキョウダイは似るものなのだなと感心してしまう。

 今のルカ姉さんとリンちゃんのやり取りを見てても、やっぱり違うなぁと思う。おそらく私がルカ姉さんに「太るわよ」と言われたら「確かにそうかも」と返すだけで、こんな感じのやりとりには発展しないだろう。普段、本当の妹の様に思っているリンちゃんだが、こう見るとやっぱり違うんだなと再確認。

 まあ、今更違うことを認識したからと言って、私のリンちゃんに対する姉の様な愛情は変わらないけどね。


「作ったのは、おからドーナッツだよー。これなら、最近カロリー気にしてたリンも食べれるでしょ?」
「うわーい、流石ミク姉!」
「ルカお姉ちゃんも食べる?」
「そうね。ミクの料理は何でも美味しいから、食べないと後で後悔しそうだし」
「えへへー。ラン聞いた?私、ルカお姉ちゃんに褒められちゃったぁ」
「良かったね、ミク」
「うん!」


 ミクはルカ姉さんが大好きだ。何でも「あのクールでセクシーなところが憧れるッ!」だそうで、毎日毎日ルカ姉さんを見ては「目指せ大人の女!」と意気込んでいる。まあ、親友であり幼馴染である私の立場から正直に言わせてもらえるならば、ふんわり可愛らしいミクには大人の女は似合わないんじゃないかと思う。同い年ながら妹みたいに思えてしまう可愛いミクが大好きな私からすれば、是非このまま純粋に真っ直ぐに育って欲しいと願ってやまない。

 だが、そんな私の密かなる思いを微塵も知らないミクは、ルカ姉さんに褒められたことに上機嫌なまま、お手製のおからドーナッツをリビングへと運んできた。1人2個ずつくらいの量が乗せられた大きなお皿1枚と、2個だけドーナッツが乗せられた小皿が2枚。


「ミク、この小皿は?」
「ん?ランとリンには、カイトとレン君にドーナッツ持ってってもらおうと思って」
「え…」
「えー!?」


 ミクは私とリンの反応なんてお構いなしに、1枚ずつ小皿を押し付ける。そして、最近高校の男子の間で人気急上昇中のキラキラスマイルで私達を送り出した。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

seaoid,skyoid.3

仲は良いけどやっぱり違うよね編。
個人的に、ルカ姉さんが大好きです^^

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投稿日:2009/12/17 00:41:28

文字数:1,693文字

カテゴリ:小説

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