「・・・こうして私はここまで来れたのです」

スピーチ中。周りは沈黙の中だ。

ここは大きな講堂、有名大学のだ。
俺は今、大きなネット企業の役員だ。

リア充・・・かというとそうでもない。

俺にはここまで来た理由がある。

ニコ厨だったあの日のことだった。


大学4年生、5月。部屋の中。

「ちぇっ、大学受かってすんなり内定かよ・・・ツマンネ」

こんな苦労人に殺されてしまいそうな事を呟いているのが、当時の俺だった。
ま、友達も少しいたし。充実していた。

俺にはコンプレックスがある。性的なやつで。

それが”二次コン‘’だった。

二次コン・・・それはズバリ二次元しか愛せない。
つまり本物の女の子と話すよりギャルゲで女の子とイチャイチャしてるのが楽しいってことだ。

しかしだ。ギャルゲよりも楽しいことを最近見つけてしまった。

・・・ボカロ。

え?しらねーの?初音ミクも?マジで?

ボーカロイドと言って、音楽ソフトが歌うヤツだよ。

いい歌いっぱいあるんだよ。

数え切れないから、具体的なのは言わないけど。

でもいっちばん好きなキャラがいるんだ。

「巡音ルカ」

・・・可愛んだぁ。一番可愛い。
リンちゃんとか、ミクちゃん、メーちゃんとかいるけどもう群を抜いて可愛い。

・・・ごめん、興奮しすぎた。

でもさ、ルカ姉が本当に画面から出てきたらどうするよ?

焦るぞ、これは。



「マジで可愛いな」

この日は特に講義に出たわけでもなく、ニコ動一色の一日だった。

時計は夜10時。

俺はルカ姉を眺めていた。

ルカ姉の胸の中なら死んでもいい。
そう思いながらPVを見てると動画が止まった。

「なんだよ、プレミアムなのに止まるぜ。運が悪い」
「そんなに運も悪くないわよ」
「へ?」

誰もいないはずの部屋から声がした。しかも俺が呟いた事への返事!?

「パソコンから離れて、伏せて目を瞑りなさい」

女強盗だ。やばい。

怖くてその通りにした。

あーあ、人生詰んだか。オワタ\(^o^)/

「はい、立ち上がってこっちを見る」

立ち上がってその女の方を見て、驚きで息を飲んだ。

そこにいたのは巡音ルカだった・・・。

「る、るるるるルカ姉!?」
「そう、巡音ルカで~す」
「な、な、なんで!?」

まともに喋れない。

本物だ・・・。

「あ~あ、全国のマスターにこき使われすぎて疲れちゃった」
「だ、だ、だからってなぜ俺のところに」
「あなたが望んだから、次元の壁越えて来ちゃった」
「・・・・・・」

あまりの突然さに返事ができない。
さらに驚きなことをルカ姉が言い出した。

「シャワー借りてもいい?」
「シャ、シャ、シャワーっすか?ど、ど、どうぞ」
「やった~!一回でいいから人間界のシャワー浴びてみたかったんだ!!パソコンの中ではシャワーなんて要らないものね」
「へ~ぇ」

こうしてそそくさとルカ姉は浴室に入っていった。

その間、俺は自分をなだめるのに必死だった

ルカ姉って意外とキャピキャピしてんだ・・・ツンデレなんだと思った・・・それより落ち着け・・・落ち着け俺。

「ぷっは~人間界ってすごいね~。シャワーはいいわ~」
「・・・なぜ、元の服のまんまなんですか?Tシャツくらい貸しますよ」
「いいわ、なんか感染りそうだから、あと敬語禁止」
「・・・はぁ・・・」
 
ルカ姉は意外と潔癖?いやSだ。
だがそこがいい!!

「さ、踊りましょう。踊りたい」
「いや、俺、踊れない」
「いいのいいの。さあミュージック・・・スタート!!」

パソコンから大音量のディスコミュージックが流れる。

やべえ、近所迷惑だ。
俺はパソコンに目を見やる。

「視線を逸らしちゃダメダメよ★」

ぐいっとルカ姉は手で俺の顔を無理やり自分の方へ寄せた。

こうしてルカ姉と俺は朝まで踊り明かした。

振り付けがわからねぇ。とかは意外に思わなかった。

だってルカ姉が教えてくれるんだもん(キリッ



朝目覚めると、俺は一人だった。

「・・・夢かよ」

結局現実はこうさ。

とか言ってると夜になってる。ニコ動は人をクズにするな・・・。

「ん?ルカが喘ぎ声を出す動画??行ってみるか」

エロすぎるサムネにつられて行ってみる。

「アァ~~♂」

パソコンから大音量の兄貴の動画が・・・。虫唾が走る。釣られた。

「歪みねえな・・・」
「歪みないのはあなたの性欲よ!!」

え、どっかで聞いた声。

「パソコンデスクに伏せなさい!!」
「はい」

伏せてみた。

「はい、後ろを振り返る」

振り返ると、ルカ姉がいた。

「また来た!!ルカ姉」
「どうも~、また来ちゃいました」



こうして毎晩毎晩ルカ姉が現れて、ディスコミュージックで踊った。

俺はルカ姉のために毎晩酒を用意して、バスタオルを洗って(決して嗅いでなんかないんだからね)、体を鍛えた。



俺のルカ姉に対するイメージはガタ崩れだったが、ルカ姉がもっと好きになった。

特に酔うとツンデレ度が増すところとか。



でも、就職して忙しくなってくるとルカ姉が現れなくなった。
そもそもニコ動自体あんまり見なくなった。



でも毎晩酒を飲んでいたせいか酒に強くなって、取引先との契約が大成功したり。

バスタオルを毎晩洗う癖がついて「家庭的」なイメージが社内で評判になったり。

毎日鍛えてたせいか、風邪ひかなくなって無遅刻無欠勤だったり。

こうして今、ネット会社の役員をしている訳だ。



スピーチの後、講堂が凍りついた。

最後の「ルカ姉のおかげで私はここまで来れたのです」はちょっと言い過ぎだったかな。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ルカルカ★ナイトフィーバー

ルカルカ★ナイトフィーバーの二次創作小説です。

なんか、今まで書いたのが欝展開ばっかりだったので明るいの書きたくて書いたんですが、これ書きながら「主人公いいなぁ」なんて思ってしまう自分がちょっと悲しいです。

この作品へのご意見、ご感想喜んでお待ちしております!!

閲覧数:440

投稿日:2013/04/06 11:02:22

文字数:2,364文字

カテゴリ:小説

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