!!!Attention!!!
この度、ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、コラボ(二人)で書くことになりました。
自分が書く「青犬編」とつんばるさんの書く「紅猫編」に分かれております。
原作者様には全く関係なく、そして勝手な解釈もいいところで、捏造だろうと思われる部分もあると思います。
そういった解釈が苦手な方はブラウザバック推奨。
なお、カイメイ要素を含みますので、その点にもご注意ください。

大丈夫だよ!寧ろバッチ来い!の方はスクロールで本編へどうぞ。








【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#19】





 いつもすぐについて来るはずのしぐれは、るかさんの元で待っているつもりのようで、ふと気付いて周りを確認してもその姿は見当たらなかった。
 今思えば、しぐれはめいこのところから俺のところまで一度走ってきたのだ。休んだとはいえ、それからはずっと俺に寄り添っていたから、結局走り続けているようなもので・・・おそらく、俺よりも疲れているはず。だとすれば、るかさんの元で待つという選択は正しかっただろう。本当にしぐれは賢い犬だ。
 思い切り大股で足を踏み出して地面を蹴るたび、泥が跳ね上がる音がする。道中には既に人の姿はなく、ただ数台の車とすれ違うぐらいだった。
 足を踏み出して前へ進むたびに露出した肌にぶつかって雨粒が四散する。
 俺の予測通りに空が晴れるなんてことはなく、ただ雨足をほんの少し弱めた程度で、その雫たちは静かに俺を濡らし続けていた。

 もしも、めいこが俺を本当に嫌いになっていたらどうしよう、とか、本当に俺以上に好きな男がいたらどうしよう、とか、そんなことを考える暇があれば足を動かすことに集中した。不安なんてどこにでも転がっている。もしも、なんて考えは、考えれば考えるほどどこからか涌き出てくる。
 だから、今すべきことだけを考えていればいい。答えはその後、自然と与えられる。動けば動いた分、それに対して何らかの答えが出る。その答えが良いか悪いかを考えることは、俺にとっては前へ進むためには必要のない重い足枷になっていた。
 それを・・・その重たい足枷を捨て去った今の俺は、何も怖くなかった。ただ、めいこのことだけを考えていればいい。後は、本能の赴くままに、感情を言葉にして吐露するだけだ。

 息も絶え絶えに、夢中になって走ってたどり着いた大きな咲音の家。壁を幾枚か隔てただけの距離に、今めいこがいるのだと思うと、胸がはちきれんばかりにいっぱいになる。
 あれだけ離れていた。でも、今は少し頑張れば手が届く。だが、その最後の一歩は、どうしても踏み出せない。きっと今俺が堂々と入っていっても、つまみ出されるだけだろうから。
 だから、せめて俺の気持ちだけでも伝えられればそれで・・・今は構わない。ずるいと言われそうだが、これぐらいは俺の知っているめいこなら許してくれるだろう。変わっていなければ、という話だが。
 数回、逸る気持ちを落ち着けるように深呼吸を繰り返す。そうして何とか考えと言いたい言葉をまとめ、意を決して息を吸い込んだ。
「めいこっ!」
 この声が届くようにと願いながら声を上げる。閉ざされた門の向こうから家の者たちが出てくるのがわかったが、気にしている余裕はない。捕まったら、それ以上話すことはできないのだ。そうなれば俺の気持ちなどもうどうやっても届けられない。そうなる前に、俺は全てを吐き出さなければ。
「俺、本当はっ・・・約束を守りにきたんだ!」
 できるだけゆっくりと、それでも響くように腹の底から声を絞り出す。どうか、この声がめいこにちゃんと届いて響きますように、と。
 ぐっと手に力が入った。
 昔の・・・あの頃のめいこの姿が、家の壁の向こう側にある気がする。
「もう忘れてるかもしれないけど! ずっと・・・っ、ずっと心の支えにして生きてきた!」
 ずっと・・・めいこに出会ってから、もうずっとだ。
 バタバタと大勢の足音と共に、徐々に騒がしくなってくる。その音にも負けないように、俺は更に声を張り上げた。
「手紙が届くたびに幸せな気持ちになったのは、俺だけじゃないはずだ・・・!」
 門が開いて、使用人たちが俺を押さえ込もうとするその腕をどうにか避けながら家を睨みつけるように見つめる。窓からは誰も見えないが、きっと十分すぎるほどこの声は届いているはずだ。雨の音にも、この使用人たちの声にも負けないほど大きく。
 腕を捕まれる。強い力で引っ張られると、首にぐっと布が食い込んで息が詰まった。
 それでも、まだ時間が足りない。まだ伝えたいことがある。
 俺は使用人の手を弾いて、また息を吸い込んだ。
「っ・・・、手紙の内容が真実なんて言わせない! しぐれが持ってきた手紙が俺が知ってるめいこだった!!」
 何とか捕らわれないようにしながら叫んでいたが、相手の数はさっと確認しただけでも六人はいるようで、囲まれてしまった状態ではもう避けることは難しい。
 できるだけ暴力を振るわず、誰も傷つけないように立ち回っていたが、後ろから一人に羽交い絞めにされて身動きが取れなくなる。
「めいこの気持ちはっ、わかってるんだからな・・・!」
 それでも声を張り上げると、使用人たちが口々に何か言いながら俺の口を塞ぎにかかった。
 口を塞がれるのだけは避けなければならない。今、俺は大事なことを話しているのだ。この人たちにとっては些細な事かもしれない、どうでもいいことかもしれない、ただの仕事の障害かもしれない・・・だが、これは他の何をおいてもやり遂げなければならないこと。
 首を思い切り振り、後ろの男に頭突きを浴びせつつ「はなせっ!」と叫ぶ。一度は解放されたものの、またすぐに捕まって今度は二人の男に腕を捕まれた。その男の力は強く、どう足掻いても逃がしてくれそうにはない。
「くそっ・・・めいこっ! 絶対に迎えに行く! 返事を・・・っ、その口からちゃんとっ・・・!!」
 聞かせてくれ、という言葉は声にならず、口を塞がれたことによって口先で消える。男の手が押し当てられているせいで、口は少しも動かない。低い呻き声がその手の中だけで響く。
 その時、足音が聞こえて俺の視線の先に見覚えのある女性が映った。凛とした強い光を瞳に宿した彼女は、先刻案内してくれたあの・・・女中さんだった。
 彼女はすいっと進み出ると、使用人たち全員に視線を向けた後で、ふわりと微笑む。
「お勤めご苦労様です・・・が、その方には一切危害を加えるなとめいこお嬢様から言い付かっておりますので、今日のところは見逃してはいただけないでしょうか?」
 この負け犬の処遇はお嬢様にお聞きしておりますので、ちょうど休憩の時間帯ですし・・・お茶菓子も用意しておりますからどうか。
 ひんやりと冷たい眼差しを俺に向けると、彼女はまたふわりと使用人たちに微笑んだ。男たちは最初ばかりはどうにも納得していないようだったが、とりあえずそれで最後には納得したようで、俺を睨むように一瞥してから去っていった。
 男たちの姿が門の向こうへと消えてしまうと、女中さんがあからさまに大きなため息をつく。思わず目を向けると、ずいっと彼女の指が俺の鼻先に突きつけられていた。
「全く・・・どういうつもりなんですか!」
 男たちには聞こえないように小声ではあったが、明らかに憤りを隠せない声色だった。思わず気圧されて反論できないでいると、女中さんは俺の胸倉を掴んでくる。
「お嬢様がどんな気持ちであなたを突き放したと思っているんですか! あの手紙を読んで全て承知なら、もっと上手くやるべきじゃないですか! そうじゃないんですか!?」
 小声なのにも関わらず、その声は俺を圧倒するには十分すぎて、思わず後退った俺は壁に背中をついた。
 しかしながら、彼女の言うことは尤もだ。正面突破はさすがに駄目だと思いとどまったものの、この選択とてそれほど賢明なものとは言えない。言ってしまえば、これも正面突破の部類だろう。
 女中さんは突然力が抜けたように俺を解放すると、俺の表情を見てから背を向けた。
「大馬鹿者だとは思いましたが、あなたのやり方は嫌いではありません。ただ、少し考えが足りなかっただけのこと・・・お嬢様が好きになったのは、そういう真っ直ぐなところなのでしょうね」
 それは、呆れたような・・・だが、とても優しい声。彼女はもしかすると、めいこのことを姉か妹のように思っているのかもしれない。
 振り返った女中さんは少し考えるように顎に手を当てた後で、その口を開く。
「・・・めいこお嬢様の婚姻の儀は二週間後」
「え?」
 きょとんとして聞き返すと、女中さんは「二週間後です」と言葉を重ねた。衣装合わせもしたとのことだったから、もうすぐだとは思っていたが、まさかもう二週間しかないとは。それでは、めいこが俺に返事なんてできるわけがない。いくら近くにいるからといっても、めいこが外に出ない限り、会うことすら許されないのだ。
 そして俺は・・・自分から道を狭めた。めいこが外へ出たいとどんなに望んでいても、今回のことを受けた彼女の両親は、おそらく外出を禁止するはずだ。
 今更冷静になった頭に次々とそんなことが浮かんで、思わず自分を殴り飛ばしたくなった。女中さんはそんな俺の心中を見透かしているかのように一息つき、にこりと微笑む。
「何のために私が出てきたと思っているのですか? 策を練りましょう。協力しますから」
 落胆している俺に淡々と言ってのけた彼女に、俺は再び目を丸めることになったのだった。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります

【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#19】

このかいとくんは考え足らずだと思ってます。
というわけで今回こういうことになったのだと・・・。
しかしながら、かいとくんのこういう真っ直ぐ・・・というか猪突猛進なところはプラス面だと思うのですよ。
めーちゃんもこんなかいとだから好きになってくれたんだろうなぁと。
もうちょっと男前に書けたらいいのに、と思いつつ、かいとくんに動いてもらうと何だかヘタレになってしまうのでした。
いやあ、しかし女中さんカッコイイわー。つんばるさんGJと言わざるを得ない。
自分はるかさんの次に彼女とめーちゃんが好きです(かいとどうした

紅猫編ではめーちゃんがとても悔しい思いをしてるようなので、ほろりとくればいいんじゃないかな・・・!

+++

「紅猫編」を書いているコラボ主犯
つんばるさんのページはこちら → http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:269

投稿日:2009/11/03 11:02:10

文字数:3,968文字

カテゴリ:小説

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