【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#06】

投稿日:2009/08/22 00:07:52 | 文字数:4,950文字 | 閲覧数:253 | カテゴリ:小説

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ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、書こうとおもったら、
なんとコラボで書けることになった。コラボ相手の大物っぷりにぷるぷるしてます。

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めいこさん、双子と仲良くなるも無理やり連れ帰られるの巻。

今回、おばあちゃんの台詞は、全面的にたすけさんの修正が入ってます!
というのも、私が自分の地域以外の方言に疎いもので、メールで泣きついた次第。
野良犬シリーズは、おもにたすけさんの愛でできております。

このあたりは、互いの呼び名と高校野球の話題で盛り上がってましたねー。
たすけさんは、たすけさん≒けーにぃちゃん≒けーちゃんと変遷を遂げ、
私は私で「つん姐」と呼ばれる始末……うれしくなんか、ない……わけ、ない!(笑

青犬編では、かいとくんがなにやら書いているようなので、こちらも是非!

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かいと視点の【青犬編】はたすけさんこと+KKさんが担当してらっしゃいます!
+KKさんのページはこちら⇒http://piapro.jp/slow_story

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つづくよ!

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ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、
なんとコラボで書けることになった。「野良犬疾走日和」をモチーフにしていますが、
ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてP本人とはまったく関係ございません。
パラレル設定・カイメイ風味です、苦手な方は注意!

コラボ相手はかの心情描写の魔術師、+KKさんです!

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【独自解釈】 野良犬疾走日和 【紅猫編#06】



 運ばれてきたかき氷は、明るい黄色のシロップがふんだんに、しかし氷をとかさないように配慮された分量が、かかっていた。
「これぞまさしく夏のフーブツシ!」
「今年はじめての大おばのかき氷!」
 いただきまーす、と、声をそろえて宣言する双子に、おばあちゃんは穏やかな口調でめしあがれ、と言った。
 私もいただきますと言って、薄青色のかき氷を頬張る。青色のシロップは、すくなくとも10年前まではこの店の品書きになかったものなので、興味を惹かれてためしてみようと思ったのだ(隣で黄色のシロップにご執心の双子には、舌が青くなるからやめときなよ、とか言われたのだが、好奇心には抗えない)。ひと匙すくうと、しゃくりと軽やかな音がする。くちあたりも、のどごしも、私がこの街を離れたときと何ら変わっていない。
 一心不乱にかき氷を口に運ぶ双子に、思わず笑みが漏れる。この幼い双子は、郵便物の配達をなりわいにしているという。自転車のかごに入ったままの荷物は、今日最後の荷物だとかで、あまり急がないもののようだった。この歳でもうすでに働き始めているというふたりは、道理で大人びていると思った。けれど、こうしてかき氷をかきこむふたりは、まるで年相応の表情をしている。微笑ましく思って眺めていると、目を上げた双子と目が合った。
「ところで、おにぇえさん、ここいりゃのひとじゃないよにぇ」
「どこにょひと? となり町かりゃきたにょ?」
「飲み込んでから話しなさいな。そんなにがっつくと頭がきーんとするわよ」
 口いっぱいに氷を入れたまま話す双子をたしなめると、双子は素直に従った。
「でも、おねえさんここの店のこと知ってた」
「じゃあ、このあたりのひとなの?」
 答えないままでは、質問が積み重なっていくような気がする。端的な言葉を選んで急いで答える。
「ええと、昔住んでいたのよ、この近くに」
「引っ越したんだ?」
「どこに?」
「遠いところよ。今日は汽車で来たの」
「汽車!」
 双子は、見事にそろった驚きの声を上げた。
「なにしにきたの?」
「……昔の、友達に会いに来たつもりだったんだけれど」
「けど?」
「家をね、知らないのよ」
 ええっ、と、素っ頓狂な声で双子は目を見開いた。私も、きっと双子の立場ならそう言うだろうけれど、面と向かって言われると、ちょっときつい。苦笑を洩らすと、双子は顔を見合わせ、にかっとした顔を見せた。
「じゃあ、オレたちが教えてやるよ!」
「だいじょーぶ、ここらへんのお家なら、毎日配達で歩いてるもん!」
「大おば、なんか書くものちょーだい、地図書くから!」
「どーせこのへんなんでしょう? その友達って。名前は?」
 お仕事中なのに悪いわ、と口をはさむ間もなく、双子はてきぱきと話を進めてくる。厚意に甘えていいものか判断しかねている間に、双子の準備は万端だ。これは、もう観念するしかないのか。
「……かいと、というのよ。私と同じくらいの歳で、新聞や荷を運ぶお仕事をしている、男の」
 男の子、というべきか、男のひと、というべきか迷って間をおくと、双子の目がみるみる見開かれて、そして、ふたりは店先で同時に叫んだ。
「にぃにぃだ!」
「あんちゃんだ!」
「それじゃあ」
「おねえさんの」
「名前は」
「めいこさん!!」
「え、ええ……そうだけれど、なぜ私のことを?」
 そういえば、自己紹介がまだだった、なんて思いながら、双子を見ると、ふたりは異様に興奮していた。戸惑いながら問うと、双子の女の子の方が、にぃにぃはリンとレンのお友達なの、と元気よく答えてくれた。今度は男の子のほうが口を開く。
「前にあんちゃんに聞いたよ、めいこさんのこと!」
「ど、どんな風に……?」
 かいとが、このふたりに私のことをどう話しているのか気になって、つい口から出てしまったが――どうしよう、手紙を送るのがめんどうくさい、なんて愚痴られていたりしたら。
 しかし、女の子のほうが、うっとりとした瞳で私を見て、さも嬉しそうに憂いを打破してくれた。
「めいこさんは、にぃにぃのおよめさんになるひとだって!」
 ――ちょっと待った! こんな小さい子に、どんな話をしているのよ、かいと!
「違うの?」
 思わずむせてしまったが――純粋に、何の疑いもない瞳で見られると、とても恥ずかしい。というか、なんとも回答できないじゃないのよ!
「違うよリン、めいこさんは駆け落ちの相手だって言ってたじゃん」
「あ、そうだっけ。でもどっちみちおんなじじゃない?」
 ああ、頭が痛い。これはかき氷のせいなのかしら。ふたりで言い合っている双子のやり取りを聞いていると、どこからがかいとの話した内容で、どこからが双子の虚構なのかが判断できなくなってくる。視線をそらしつつ空になったかき氷の器をおくと、おばあちゃんがそばに寄ってきた。
「――めいちゃんなのかい? 咲音のお嬢さんの」
 え、と聞き返す前に、おばあちゃんはゆっくりと言葉の続きを口にした。
「昔から、かいとと一緒に来てたろう、そのときはイチゴ味をふたりで分けてたけどねえ」
 幼いころ、かき氷をあまり多く食べられなかった私は、ひとつの器に盛られたイチゴ味のかき氷(かいとがいちばん好きな味だ)を、かいととふたりで分けて食べていた。――覚えていてくれたのだろうか、この老人は。思わず、涙が出そうになった。
「はい、めいこです。おばあちゃん、ご無沙汰しています」
「おおきくなったねえ、めいちゃん。こんなに美人さんになって」
 変わらない。訛りの混じった口調も、優しい声音も。
「かいとに会いに来たのかい」
 こくりと頷くと、おばあちゃんも得心したように頷いた。そうかい、かいとも大きくなったんよ、と、ひとりごとのように言うおばあちゃんの目元のしわが深くなる。
「彼は今、どうしていますか」
「元気だよ、毎日ぴんぴんして。ただ、親父さんとおふくろさんが亡くなってからは、ちぃと働きすぎのきらいはあるねえ」
「亡くなった……?」
「知らなくても無理はないか。親父さんが先に亡くなってね。おふくろさんはかいとを養う言うて働きすぎて、勤め先で倒れてそのまんまやね。まあ、おふくろさんもこの老いぼれに『何かあったらかいとのことを頼みます』なんて言うてたくらいやから、自覚はあったんやろうけどねえ」
 そんな話は、まったくの初耳だった。手紙の中でのかいとは、明るくて、すこし気弱で、でも、どこまでも前向きな、そんな青年だった。そんなことがあったなんて、手紙の中には一言も書かれてはいなかった。
 おばあちゃんは、器をもって、店の奥へ下がっていった。いつの間に聞き耳を立てていたのか、双子も心配そうな顔でこちらを見ている。けれど、双子に構えるほどの余裕は、すでになくなっていた。
 そんなことがあったなら、話してくれればよかったのに。頼ってくれたらよかったのに。
 ああ、でも、この点にかんしてはおあいこなのかしら。私だって、かいとに言っていないことが山ほど――。

「……ここにいたのかい、めいこ」

 さっと暗い影が差して、はっと顔を上げると、そこには、そこにいるはずのない男がいた。
「な、ぜ……!」
「きみは目立つからね。それだけ身なりのいいお嬢さんなら、探すのだってたやすい」
 そうではない。なぜ、私がここにいるとわかった? 散歩だと言って出てきて、向こうの駅にいたときは見知った顔のひとつもなかったのに。この街にいることすら、きっと誰も予想なんかできないはずなのに。
 紫の男が、かさりと乾いた音を立てて、懐から取り出したものに、背筋が凍った。
「それはッ!」
「めいこがなんども家出を企てる理由は、これだね?」
 先日かいとからもらったばかりの手紙が、男の手を離れはらりと地に落ちる。拾い上げようと思わず屈むが、手紙は寸での差で男の靴の下敷きになった。
「さあ、屋敷へ帰るよ、めいこ」
「……戻るわけないでしょ」
 なぜ、こんなことをしようというの。ここまでして私を縛ろうとするのはなんのためなの。権力のために? 地位のために? 金のために? ――なんて、なんて、あさましいことなの!
「戻らないわよ! あんたと契るくらいなら、死んだ方がましなんだから!」
 そう叫んで、店先を飛び出す。めいこさん、と、双子の叫ぶ声が聞こえたが、構っていられなかった。

 うかつだった。昨日手紙を出してから、かいとの手紙を机の上に出しっぱなしだった。きっと、手紙に書かれていた住所から、この街だと判断したのだろう。ということは、内容までぜんぶ読まれたのだろう。悔しくて涙が出た。咲音のおうちから逃げられないことも、手紙を拾い上げられなかったことも、おばあちゃんにきちんと挨拶しないまま来てしまったことも、双子ともっと話ができなかったことも、かいとに会えないことも。
(かいと、かいと……!)
 息が切れて、声にならない声で彼の名前を叫びながら走る。追いかけてくる足音が、ついに大きくなってきた。端から逃げ切れるなんて思っていない。きっと向こうは、あの紫の男だけではないだろうし、私はなんといっても、昔のように奔放に走れるようなかっこうはしていないのだ。
 ぐい、と腕を引かれた。喉がかれて声が出ない。もう、ここまでなのか。そんなの、
(いやだ、かいと、かいとっ……!)
「さあ、帰るよ、めいこ」
 帰るって、どこによ。
 私の居場所は、かいとは、この街にいるというのに、私をどこに連れていくというの!
(だれかたすけて)
 涙の染みる唇を、声が出ないとわかっていて動かすだけ動かしてみた。
「いけぇ、しぐれ――!」
 絶妙な間で、遠くから双子の声が聞こえ、男が短い呻き声を上げた。途端に私の腕をつかむ力が弱まる。はっとして男の方を見ると、その足許に、小さな犬が噛みついていた。双子がけしかけたのだろうか、その犬は小さいながらもしっかりした牙をむいて、男の脛に齧りついている。
 が、所詮は仔犬というところ、男の足のひと払いで、犬は地面にたたきつけられた。きゃん、と、甲高い悲鳴が聞こえる。
「――こんなことをして、どうなるかわかっているのだろうね」
 あくまで冷たい声だった。その声に、双子がびくりと身をすくめたのが、この距離でもわかった。犬も、うちどころは悪くなかったようで、すぐに立ちあがってぐるぐると唸ってはいるが、よく見ると、脇腹から血がにじんでいる。
「――やめなさいよ、ただの子どもの悪戯だわ」
 犬が、再び男に飛びかかる様子はない。双子は、立ちすくんだまま動かない。動物と子どもは、ときに本能的に、しかしとても正しい判断をする。そう、この相手に、私たちでは分が悪い。
「逃げも隠れもしないわよ、早くその手を離しなさい」
 身が自由になって、すぐに、仔犬を抱き上げる。動物虐待ではないのか、こんなにひどくけがをさせてしまうなんて。
「もう、面倒だわ」
 自分の口から出た声は、先ほどの男のそれよりもずっとずっと小さな声だったけれど、絶対零度の響きをもっていた。
「わかったわよ、もう家出なんてしない。結婚でもなんでもしてやるわよ。咲音の財産も欲しいだけくれてやるわ。その代わり、あの子たちや、あの手紙の送り主に何かしたら、身投げでもなんでもして死んでやるんだから、そのつもりでいなさい」
 ああ、私はいつから泣きながら他人をにらむような女になってしまったのだろう。
「私は、やると言ったらやるわよ。侮らないことね」
 男に向けた脅しの文句は、同時に、自分への決意表明でもあった。

つんばるといいます。世の中のすみっこでしがないモノカキやってます。
MEIKOがすきです。KAITOがすきです。カイメイがすきです。

写真素材はサイズ・色調その他、改変自由のフリー素材です。お好きにどうぞ。
なにかが誰かの琴線に触れたらさいわいです。

⇒ブログ:http://phantomlake.blog58.fc2.com/
⇒メール:croak-crash【あっとまーく】hotmail.co.jp

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作品へのコメント2

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    コメントありがとうございますー!

    うはうは……!(笑) あとがきは、もうコレ全部実話なので書く方としては楽なんですが、
    思わぬところで笑いを誘っていたようでなによりです(笑
    いえいえ、コメントいただけるだけでうれしいです! 何度もありがとうございます!

    めーちゃんの啖呵は、この話を書き始めるだいぶ最初の段階から考えてありました。
    私の中のめーちゃん観が炸裂してます。しぐれは……散歩中だったんじゃないですかね(ぁ
    めーちゃんとかいとがなかなか出会えなくてうずうずしてるのは、作者たちも同じです!

    これからめーちゃんとかいとがどうなっていくのかは、今はお話しできませんが、
    どうぞ最後までお付き合いくださいー!

    2009/08/22 11:38:53 From  つんばる

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    ご意見・感想

    なぜでしょう、かいととめーちゃんにウハウハする前につんばるさんと+KKさんのあとがきにウハウハしてしまいます…!!

    前回はまともなコメントでなくてすみませんでした。つい夜中のテンションに任せて書いたらあんなコメントに。夜中の三時以降にコメントするのは控えよう…(←

    ついにめーちゃんが啖呵切った!!そしてしぐれそこにいたのか!!怒濤の展開にテンションが右肩上がりです\(^O^)/
    早くめーちゃんとかいとが出会って欲しいです。そうでないとめーちゃんがどうにかなってしまいそうだ(´・ω・`)

    長くなってしまってすみませんでした(^^;
    次回も楽しみにしています。

    2009/08/22 01:05:27 From  望月薫

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