!!!Attention!!!
この度、ボス走らず急いで歩いてきて僕らを助けてPの「野良犬疾走日和」を、コラボ(二人)で書くことになりました。
自分が書く「青犬編」とつんばるさんの書く「紅猫編」に分かれております。
原作者様には全く関係なく、そして勝手な解釈もいいところで、捏造だろうと思われる部分もあると思います。
そういった解釈が苦手な方はブラウザバック推奨。
なお、カイメイ要素を含みますので、その点にもご注意ください。

大丈夫だよ!寧ろバッチ来い!の方はスクロールで本編へどうぞ。








【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#21】





 真ん丸な目をして開いた口が閉じられない様子のめいこに、俺は再び苦笑する。
「何で・・・って、『約束』だったからだよ」
 驚愕のあまり出た言葉だとわかっていながらもこう返すというのは、少し意地悪だったかもしれない。めいこは少しむっとしていたが、俺は知らないふりをしてめいこを立たせ、「ほら、行くよ」と道の先を指差して言った。めいこが何か言おうとしていたが、ゆっくり落ち着いて説明する時間はとれない。走りながらならある程度は話せるだろうが。
 手を引くとちゃんとついてきてくれるめいこを見るだけで嬉しくて小さく笑む。走り辛そうだが、仕方ない。頑張って走ってもらわなければ。
「ちょっとどういうことよ、説明しなさいよ!」
「とりあえず走って」
 走りながら話すね、と付け足して走り出し、頭の中で覚えた道筋を反芻しながら、次の曲がり角をどっちに曲がるのかを考える。次の角は、右だ。
 めいこが腑に落ちない顔をしながら俺の隣へと並ぶ。
「・・・もう・・・普通はちゃんと答えを聞いてからなんじゃないの?」
 ふとため息が聞こえてめいこに視線を向けると、彼女は呆れた表情でそう口にする。一理ある・・・が、そんな悠長なことを言っている暇がなかったということも彼女はわかって・・・いや、わかってないのか。
 そういえば、この二週間の出来事をめいこは知らないのだ。本当は、めいこの答えを聞きに行く時間を作るべきだったのだが、とてもそんな余裕はなく・・・結局当日を迎えて・・・・・・今に至る。
 角を右に曲がると、めいこもすぐ俺に倣って角を曲がった。
 めいこは着物のせいで動きにくそうに小股で走りながら、「ねえ」と言葉を紡ぐ。
「わざわざ・・・練習したの?」
「ん? うん、そうだよ」
 皆俺のことを応援してくれた仲間だから、と付け足して俺は笑う。

「迎えに行くって言ったよね、二週間前」
「きこえていたわ」
 少し懐かしくなって目を細める。懐かしい、と言えるほどるかさんたちと別れてから時間は経っていないはずなのだが。
 めいこは、何を思いながら二週間を過ごしたのだろう。練習中にもめいこのことを忘れたことはなかったが・・・今どうしているかと考えたこともあったが、結局忙しさの波に流れてすぐにどこかへ消えた。
「――この二週間は私にとって地獄だったわ。かいとはどうだったの? 聞かせて・・・私の知らない、かいとの二週間を」
 まるで会えなかった時間全てを埋めたいと願うように吐き出された言葉に、俺はゆっくりと頷く。・・・俺も同じ気持ちだと、それで伝わっていればいいのに、と思いながら、俺は二週間前のことを思い出しつつ口を開いた。
 部屋に閉じこもっためいこに、無理やり自分の気持ちを大声で吐き出した・・・あの日からのことを話すために。

 あれから、るかさんの家へと移動した俺たちは、これからのことについてお茶を飲みながら話すことになった・・・のだが、案内された客間には既に明らかにこの国の人間ではない女性と、しっかりした体つきの男性が落ち着いた面持ちで座っていた。困惑気味に女中さんとるかさんの表情を確認するが、どうやら挙動不審になるほど驚いているのは俺だけらしい。女中さんも少しは驚いていたようだったが、俺ほどではない。
「そちらに座ってください。これからのことについて話し合いをはじめますから」
「は、はい・・・」
 戸惑いながら椅子へ腰を下ろすと、女中さんが礼をしてから椅子へ座った。視線を前へ向けると、肩まで伸びる真っ直ぐで眩しい金髪、綺麗な碧眼の女性と目が合う。まるで吸い込まれてしまいそうな目の色だ。
 隣で穏やかに微笑む男性は鳶色の短髪、そしてそれと同じ色の目。身長は俺と同じか・・・少し高いぐらいだろうか。
「失礼とわかった上で敢えて口にしますが・・・あれほど真っ直ぐに来られるとは予想していませんでした。おかげで警戒の目が厳しくなるでしょうから、式当日までは確実にあなたがお嬢様と会うことはできないでしょう」
 隣で呆れた表情を浮かべながら言う女中さんに、自分の身体が小さくなったような気がした。
 女中さんの心情も俺の心情も察した風に、るかさんは口元に微笑みを浮かべる。
「――もしわたくしの案でいくということであれば、彼らのもとで訓練していただきます」
「あの、訓練というのは・・・?」
 意味がわからずそう尋ねると、るかさんはにこりと微笑んだ後で、隣に座る女性と男性へ視線を向けた。その視線に二人は無言で目を合わせると、揃って手の中から真っ白な球を取り出す。確かに、さっきまで二人の両手には球なんてなかったはずだ。
「大道芸の・・・方、ですか」
「その案というのはどういったものでしょう?」
 二人が座るのを見計らったかのように真剣な声で話し出す女中さんに、るかさんは小さく頷く。
 るかさんが説明してくれたのは、思いつきで言ったとは思えないほどしっかりした策だった。できるだけ簡単に言うと・・・まずは、衣装をめいこの元へは届けずに神社の方へ届け、神社で直接着替えなければならない状況を作り出す。そして、ちょうど神社へ行く道を塞ぐようにして、興業団の車が登場。客を集めていくつか芸を披露した後、騒ぎに乗じて俺がめいこを攫って逃げる・・・という算段だ。
 「いかがでしょうか」とるかさんが微笑むのに、俺は心臓が走り出すのを止められない。それだけ興奮しているのだと思うと、それがめいこへの気持ちが大きいということの証明のようで笑みが零れた。
「ですが・・・二週間でどうにかなるものなのですか?」
 心配そうな女中さんの声に、るかさんは何を根拠に言っているのかはわからないが、余裕を持った笑みで「大丈夫ですわ」と安心させるような声で言った。俺のことを全部知っているようにも見える・・・実際はそうではないだろうに。
 鳶色の髪をした男性が微笑み、「私どもの訓練は厳しいですから」と何でもないことのように言ってのける。ぎくりとした俺に対し、その隣の金髪の女性が「つまり、全てあなたの努力次第ということです」と静かに付け足してきた。女中さんは「厳しくお願いいたします」と真剣な表情で言っているし、るかさんは「よろしくお願いしますね」と興業団の二人に微笑みかけている。どうやら俺に決定権はなさそうだ。どのみち、それしか選択肢がないのだから俺は従うつもりなのだが。
「それでは・・・逃げる際に入り組んだ道を通るのが得策かと思いますので、すぐにこの辺りの道を図に表します」
「それがいいですわね。よろしくお願いします」
 ・・・俺が口を挿む隙もない。思わず、俺がいなくても勝手に話が進んでいくんじゃないかと考えてしまうほどだ。
 そうかと思うと、るかさんの隣に座っていた二人が突然立ち上がり、俺に視線を向けてくる。ついつい身構えてしまったが、温和に微笑んだ男性は、「時間がもったいないので、彼をつれていきます」とるかさんへ言葉を落とした。
「事情はお聞きしています。急ぎなのですから、話にも入らないというのにここにいる意味はないかと」
 刺々しい言葉を放った金髪の女性の隣で、るかさんは「それでは、あとのことはお任せします」と微笑んだ。
 ・・・どうやら当事者だというのに、俺はあまり頼りにされていないらしい。

「それじゃあ今から俺たちが見本を見せるからね。彼女が君の役をするから、全体を見ながら彼女の動きをしっかり見て自分の役目を感じ取るといいよ」
「は、はい・・・」
 奇抜な衣装は、はじめて見るものだった。触ると気持ち良さそうな上等な服に見えるが、白と水色なんて目立つ色が使われ、顔は白塗りにして星や月の絵が描かれている。
 わざわざ車の中に戻る二人の背中を見送りながら、何も練習でそこまでする必要はないのではないかと思ったが、その方が入り込みやすいからなのだろうか・・・なんて考えているうちにはじまったようで、車から二人がひょこひょこと現れた。
 金色のツインテールを揺らしながら出てきた俺の役をしている女性は、周囲をきょろきょろと見回して首を傾げてみたり、空を見上げて雨が降っているのか確かめるような動作をしてみたり、何やらわけのわからない行動をとっている。
 その動きがまたとても面白くて、気が付いたら笑みがこぼれていた。男性の方は大きな球に乗ったままあちこち動き回り、どこからか出したのかわからない小さな球をいくつかお手玉をするかのように操っている。
 真剣にやっている隣でちょこまかと動き回っている女性は、トントンと足で拍を数えるように歩いていたが、不意に何かで滑ったようにつるんと転んだ。
「っく・・・」
 思わず吹き出してしまったが、二人はそんなことお構いなしだ。彼女は身体を起こそうとしていたのだが、また何かを踏んでしまったかのようにつるんと滑る。
 ごちん、と痛そうな音がしているが、心配よりも面白くて仕方がない。その間抜けさのおかげか、真剣に取り組んでいる男性がとてもすごいことをしているように感じる。
 客寄せが第一の仕事ならば、主役の脇で馬鹿みたいなことをして真剣な大道芸に飽きたお客さんの笑いを誘うのが俺の役目、というところだろうか。最後に、さすがというような技の数々を見せてくれた男性と、転げまわって俺を楽しませてくれた女性は、右手を前に、左手を後ろにして礼をした。
 拍手をしながら「すごいですね」と素直に感想が漏れる。
「その様子だと大体つかめたみたいだね。よかった」
 そう男性が言うのに頷くと、男性は黙って俺を品定めするように見つめたままの女性に目を向けた。
「そんなにむくれるなよ・・・これも仕事だ。レインも一緒なんだからよかっただろ?」
「いーや、やっぱり認めへん。レインをつれて帰ってきたんは感謝するけどな」
 一瞬、誰の口から漏れた言葉なのかと我が耳を疑う。そんな喋り方をする人はいなかったはずだ、と。
 幻聴かとも思われた声の方に視線を向けると、さっきまで俺に微笑んでくれていたはずの女性が、俺よりも少し低いところから俺を睨んでいた。その視線からは明らかに敵意が伺える。
 確かにこの人の声、だったが・・・何故俺はこんなに嫌われているのだろうか。
「アンタ、自分がこけるフリさえしとったらえぇと思ったら間違いやからな。ウチが直々に見たるから休憩時間は一時間しかとられへんと思い」
 刺々しい言い方をした先輩は、しかし一応は教えてくれるらしく、「さっさとついてこんかい!」と声を上げる。それに対して、自分でも情けないと思えるような声で「は、はいっ」と応えると、後ろで俺を見送りながら男性が笑う声が聞こえてきた。
 先が思いやられる・・・。

「そんなこんなで・・・その後のことはちょっと・・・思い出したくもない、かな・・・」
 ははは、と乾いた笑みを浮かべると、めいこはくすりと笑って「情けないわね、男のくせに」なんて洒落にもならないようなことを言ってきた。
「それ、さすがにへこむんだけど・・・」
「あら、ごめんなさい?」
 くすくすと笑っているめいこを見ていたら、まぁ笑ってくれるなら何と言われようが構わないかな、と思えてきてそんな自分を笑う。
 準備期間になった二週間の話をしながら走り続けていたが、不思議と息はほとんど上がっていない。地獄の特訓がきいたのだろうか・・・あれだけやっておいて結果がついてこなければ大泣きしたいぐらいだが。
 めいこはさすがに少し疲れた様子だったが、まだ大丈夫そうなので手は貸さないでおいた方がいいだろう。彼女自身、そんなことは望んでいないはずだ。
 めいこは笑いを止めた後で、「でも」と少し刺々しい声で言った。
「そういうのは、私にも言っておくものじゃない! こんなにいきなりで、びっくりしたでしょ!」
 不満も露なその声色に、驚きつつ小さく苦笑する。
「そんなこと言ったって、めいこに言ったら絶対に当日までに見つかっちゃうんだから仕方ないよ。俺だってそれまで我慢してたんだから」
 出会った瞬間全速力で走って抱きしめたかった、なんて言ったらめいこは顔を真っ赤にするんだろうなと思いながら、それはあまりにもめいこがかわいそうなので黙っておくことにする。それはこれから二人でいくらでもできることなのだ。

 暫く走って神社が前方に見えてきた時、その前に高そうな車が止まっているのが見えた。いかにもお金持ちの・・・
「かいとっ、横道に逸れましょう!」
「え?」
 何で、と聞く暇もなく、ぐんっと袖を引っ張られる。そんなことを言われてもここから横道に逸れるなんてことは不可能だ。
「一本道だから無理・・・」
「そうだけどっ、あの車・・・!」
 尚も食い下がる彼女を訝しげに見ながら、神社の前に停まった車の横を走り抜ける。めいこが言ったその車は、他の景色と同じように俺の横を過ぎ去っていくだけだ。
 お金持ちの車だということがわかること以外、特に変わった車ではなかったのだが・・・何か見覚えでもあったのだろうか。
 めいこの手に力が込められるのが、握られた袖から伝わってきた。何をそんなに緊張しているのだろう、そう思った瞬間・・・

「めいこ!?」

 後方から、慌てた男性の声が・・・俺たちを追いかけてきた。




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【独自解釈】 野良犬疾走日和 【青犬編#21】

前回に続き、かいとくんめーちゃんを誘拐するターン・・・いや、寧ろ一緒に逃走のターン。
先輩二人組みの話も書けてちょっと嬉しかったとこです。
っていってもまぁ、もう出番はないでしょうけどね(笑
・・・二人の前に立ちはだかる最強の敵!
果たしてかいとくんはめーちゃんを守り抜くことができるのか!
待て、次回!!
・・・・・・言ってみたかっただけです。ごめんなさい。
でもなあ、このかいとくんは結構ヘタレだからなー・・・と、自分も心配してるとこです。

いろいろかいとくんのお話を聞いてくれてるめーちゃんは紅猫編にてどうぞ!

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「紅猫編」を書いているコラボ主犯
つんばるさんのページはこちら → http://piapro.jp/thmbal

閲覧数:504

投稿日:2009/11/11 15:18:06

文字数:5,731文字

カテゴリ:小説

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