-終焉-
 空は青く広がり、まるで何事もなかったかのように、涼しい風が地をすべるように駆け抜けていく。その風のひとつが、リンの髪を揺らして頬をなでて流れていった。
 その表情は決して清々しいとはいえず、険しい表情をしていた。
 先ほど、ルカから連絡が入ったのだ。内容は明日、レンの手術があると言うことで、今ならドナーがあるというのだった。しかし、手術をするとしばらくはリハビリが続き、到底外へ出て学校に通うことなんてできるわけがないから、レンとリンは会うことができなくなったというのが結果論である。
 それを考えると、リンには頭が痛い。
「とりあえず日も昇ってきたし、めーちゃんのところに行こう。レンについても説明をしなくちゃいけないし、何より彼女をきちんと診ておいたほうがいい」
 そういうカイトに、レオンも頷いた。
 館の外に出、また呪文を唱え始める。それに、レオンも加わった。さらに強力な魔法となり、カイトのマフラーがふらふらと浮かび上がり、レオンの金髪が重力に反して浮かびだした。それだけの反重力が働いているということだ。先ほどよりも早く闇色のそれは形成され、そして巨大であった。
 全員が乗り込むと闇色のそれはまた空へと駆け上がり、メイコ邸へと続く空の道を進みだしたのである。

 朝日に焼ける時間が終わり、看護婦が部屋を見回っていた。少しカーテンが開いていることに気がつき、部屋に足を踏み入れるとまるで兄弟のように無邪気な二人が眠っていた穂である。看護婦も
「ふふ」
 と笑い、病室を出て行った。



 ―次の日。
「…ちゃん、リンちゃん。どうしたの、ぼうっとして。授業中も上の空って感じだったし」
「あ、ミクちゃん」
 あの一件から、リンとミクの仲は回復し、今まで以上に仲がよくなっていた。それだけに、ミクとしてはリンの目が中を泳いでいることに驚きを感じたのではないだろうか。
「レン君も来てないみたいだし。喧嘩でもした?」
「ううん。レン、今日は魔界のほうで手術。しばらくはリハビリで会えないって言うから…。失敗しないようにお祈り」
「上の空でお祈りしたって、効果なんかある分けないでしょ。ねえ、帰りに付き合ってくれない?いきたいところがあるの!」
「え?あ、うん」
 少し驚きながらミクのペースに巻き込まれ、リンは勢いだけでミクの誘いを承諾してしまった。そんなことをしている場合ではないのに、ミクはなにを考えているのだろうか。それが、リンにはわからなかった。

「キーンコーンカーンコーン」
 その音とともに、全校生徒がばたばたと学校を後にしていく。その中にミクとリンもいた。
 どこに行くのかもわからないまま、ミクの手を引かれてリンは走っていた。その道は次第に町をはずれ、郊外のほうでと出た。青々と木々が茂る中で道ともいえないような道を二人は歩いていった。すると、奥のほうに赤い鳥居らしきものが見え、それをくぐると綺麗に飾られていたのであろう祠のようなものが姿を現した。
 今はツタなどに絡まれてコケも生えているが、所々から露出した祠の本体は赤や黄色、部分によっては金色に光ることすらあった。きっともともとは綺麗に装飾されて周りにも立派な道具が置かれていたに違いないが、今は寂れてこんな状態にあるのだろう。
「ここね、お願いがかなう祠なの。私だけの秘密だったけど、リンちゃんには教えてもいいかと思って」
「なんで?」
「アンを探してくれたから!」
 嬉しそうに微笑んで、ミクはいった。
 それからリンを祠の前に押し出すと、お祈りをするようにいった。願いがかなうなど、信じたわけではないが今は神頼みでも何でも頼んでおきたい気分なのだ。リンはそっと合掌した。
 その後、適当な喫茶店で『ウルトラパフェ』という四人分はあるだろうパフェを二人で平らげ、ほぼ満腹になりかけていた。
「大丈夫だよ。私もお祈りしておくから。レン君は、そう簡単に死んだりしないよ」
「…そう、だね。ありがとう、ミクちゃん」
 ウルトラパフェに次に頼んだマカロンの最後の一つを口に放り込み、リンは笑って見せた。それに安心したように、ミクも三つほど残っていたマカロンを全て平らげて見せた。そうして、二人で笑いあった。


 あれから、レンの容態に関しての連絡は入ってこない。
 手術は成功したというが、いつごろになったら学校に復帰できるのか、こちら側に来ることができるのかなど、リンたちには情報が乏しい。あの事件から、既に一ヶ月ほどはたっている。五ヶ月ほどにも思える長い一ヶ月だった。
 また、レンのことを考えながら、通学路に着いた。―――と。
「リン、遅刻するぞ?」
 そこに立っていたのは、制服姿で紺色のスクールバックを持ったレン以外の何者でもなかった。
「レン!どうして?もう動いていいの?」
「まぁ、体育とかは無理だけど。普通に生活するには支障なしだってさ。驚異的な回復力だって解剖されそうになった。はは…」
 そういって笑うレンの後ろから、ランがひょっこりと顔を出した。何故かランもリンと同じ制服を着ていて、リュックも持っているし、ポケットには生徒手帳もおさまっていた。
「今日から、私も同級生だから、よろしくね!」
「いきなり!」
「私はいつでもよかったんだけどね。レンがリンさんに会いたいって、リハビリがんばってたの」
「ちょ…ちが…っ。あれはだな!病院なんかにいると気が滅入るし…その…」
「スキ?」
「はぁ?」
「私のこと、スキっ?」
 唐突なリンの問いに、レンは少し驚いたようだったが、答えに迷いはなかったらしい。
 ふっと微笑み、ランに目を瞑っておくようにいって、それから、
「勿論。俺がすきなのは、リンだけ」
 そう言って、額にキスをした。
 そのお返しといわんばかりに、リンはレンにキスをして見せた。
「大胆!」
「見んなっつっただろ!」
「見えちゃうよね。あーもう、邪魔者はさっさと退散しますか」
「ラン、違うから!!」
 そういってとめる声も聞かずにランは笑って歩き出した。それを追うように、リンとレンも歩き出した。その風景は、『いつもの風景』だった。

「でも、どうして木にあんな傷があったのかしら?」
「あぁ、家で買ってた鳥が逃げ出したんだ。『炎鳥』っていって、炎をまとう鳥だからね、それが巣でも作ろうとした傷じゃない?そうしたら火花が飛んで着火」
「そんなことなんですか」
「そんなことです」
 そのミリアムとカイトの会話も、じきに『いつもの風景』へと変わっていくのだった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

鏡の悪魔Ⅲ 26

こんばんは!リオンです。
おわったー!!
今テスト間近なんで、しばらく投稿が不規則になるかもしれません。
がんばって投稿すると思いますが。
今日の要約いってみましょう。
「Happy end!」
正しい要約だと思いますよ。このあとルカが買い物とかから帰ってきて、カイトと二人きりにされるんですよ。カイトはへらへら話すけど、ルカはダメなんですね、そういうの。きっと。
次はおまけなので、『鏡の悪魔Ⅲ 26.5』となると思います。
適当です。見ないほうがいいかも。
それじゃあ、また明日!!

閲覧数:800

投稿日:2009/08/31 22:08:52

文字数:2,714文字

カテゴリ:小説

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  • リオン

    リオン

    ご意見・ご感想

    おひさしぶりです、みずたまりさん!
    宿題…あ。私も今日の課題終わってないや。どうしよう…。まあいっか。
    今日が登校日ですかぁ。私なんか明後日が陸上競技大会です。つまり運動会ですよね。
    雨でも降って中止になればいいと思っています。
    なんということだ!!続きが思いつかなかったんだ!!開き直るしかないです。

    今、勉強放り出して、おまけかいてます。いいんだ。どうせできないもん。これも開き直りです。

    幸せな風景ですか…ありがとうございます!!
    今回はないですが、次回はレオンの変態行為に拍車がかかって登場しますんで。おまけは必見です。ミクはボケもいいですが、時々鋭いツッコミを入れてきそうです。じゃあ、今度ミクを送っておきます。ついでにプリマもついてきますけど。
    楽しみだなんて、本当にありがとうございます!!それでは、おまけで。

    2009/09/01 20:29:45

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