「あとはここだけだな。…ん?」
部屋を掃除していると、タンスの奥から懐かしい物が出てきた。
本だ。

掃除は休憩し、この本を読むことにした。
本といっても、おとぎ話とかだけど。
そういえば、昔よくグミに読んであげたっけ。
懐かしいなぁ。

内容はわかりきってるけど、まぁいいか。たまにはこういうの読みたいし。
そう思い、ページをめくった。














<<ボカロで童話やってみた【人魚姫】>>















昔々、とある海のお話。
そこには、たくさんの魚達が暮らしていた。

海の底の宮殿に住む人魚姫ことルカはぼうっと何かを眺めていた。

海の底の宮殿には、人魚の王と六人の子供が住んでいる。
そのうちの一人がルカだ。

人魚は二十歳の誕生日を迎えないと、海を自由に泳ぐことはできない。
ルカはそれが退屈だった。

ルカがぼうっとしているところで、六つ下の妹・リンがやってきた。


「ルカ姉。メイコ姉が呼んでるよ?」
「え?なんだろう」


ルカは長女のメイコのところへ行った。
メイコは言う。


「ルカ、今日から二十歳でしょ?海、泳いでいいよ」
「え!?いいの!?」
「いいともさ」


ルカはとても喜んだ。
あまりにも喜びすぎて近くの岩を壊しかけた。


「危ねぇよ!!」
「ごめんごめん。ちょっと泳いでくるね!」
「え、うん」


ルカはハイスピードで水上に上がっていった。




*




「おー…太陽が眩しい…」


ルカは初めて見る太陽に感動。
でもすぐに天候は悪くなり、大嵐がやってきた。


「ちょっと何!?さっきまで晴れてたのに何故イキナリ嵐が来るの!?」


ルカは思わず叫びそうになる。
というか叫んだ。

と、ふと見ると大きな船がすぐそこに。
いかにも難波してますってオーラが出ていた。
そしてめっちゃボロボロである。

そしてそのボロ船から、誰かが落下。


「なんだと!?」


ルカはいそいでその落下した人に近づく。
その人は気を失っていた。


「とりあえずほっといたらこの人死ぬよね!?」


と叫んだルカは助けることにした。
その人を抱え、岸に向かって泳ぐ。




*





「はぁ…はぁ…重かった…」


なんとか助けることに成功。


「…で、この人は誰?」


ルカはその人をマジマジと見る。
どう考えても風邪ひきそうな格好をしている。
だって和服だし。


「…!」


その時、ルカは今まで経験したこともない感情を覚えた。

そして近づく足音に気づいたルカは、近くの岩陰に隠れた。


「あれ?人が倒れてる」


近づいた人は女性のようだ。


「…あれ?びしょぬれ…おーい」


緑髪の女性は、倒れている男性に向かって呼びかける。


「反応しないなー…ロードローラーで轢いてみるか?」


それだけはやめてほしい。
もっと反応しなくなるだろ。
死ぬだろ、それは。


「むぅ…よし。ちょっとー?」


女性は男性に向かって飛び蹴りをした。
見事、鳩尾に命中。


「うおぉぉぉ!?」


あまりの痛さに飛び起きる男性。
ルカは「何この状況!?何あの起こし方!?」という目でその光景を見ていた。


「あ、起きました?」
「そら起きるよ!!」


ごもっともである。


「私はグミです。あなたは?」
「え?…あぁ、俺は神威、という者です」
「神威さん、ですか。あなたはここで倒れてたんです」
「そうですか…あなたが助けてくれたんですね、ありがとうございます!」


ルカは「違う!私が助けたんだゴルァ!おい何自分が助けたみたいな目してるんだこの野郎!」という顔でグミを岩陰から睨みつけていた。
神威は気づかない。


「そういや…ここどこだか分からないなー…帰る場所ないじゃん、俺」
「でしたら家泊まってきます?」
「いいんですか!?助けていただいた上に、そんなことは…」
「今は開いている兄の部屋があるんで。どうです?オセロでも」
「何故そこでオセロ」


ルカは「なんだとこの泥棒猫!」という目をして話を聞いていた。
グミはチラリとルカを見て、ニヤリと口の端を持ち上げた。


「!!」


ルカはどれだけムカついたことか。
グミは涼しい顔をして神威と歩いていった。



*



「うわーアイツまじムカつく!!」


ルカは近くの沈んだ流木にクギを打っていた。
無論、ワラ人形にクギを打っている。


「…ルカ姉。何やってんの?」
「レン、ワラ人形で憎い奴を呪う方法教えようか?」
「オイ!誰呪うつもりだよ!」


ルカはグミを呪う気でいる。
まぁあれだけムカつく行為をしたんだから仕方ない。


「てか、どうせなら直接嫌がらせしに行けばいいじゃん」
「私地上行くのは無理だよ?」
「魔女に頼めばいいだろ?」
「あ、そっか」


ひょんなことで、ルカは魔女の家に行った。


*



「はーいざぶとん全部持ってってちょうだい」
「…すいませーん」


ツインテールの魔女は暢気にテレビを見ていた。
来客に気づかなかった模様。


「あ、ごめーん。用件は?」


魔女・ミクはリモコンを操作して番組を録画し、ルカに向き直った。


「ちょっと頼みごとが」
「なに?」


ミクはせんべいとお茶をルカに出す。
なんかいい人オーラの魔女である。


「人間になりたいんですが…できますかね?」
「うん?そんなことだったら簡単にできるよ」
「ほんとですか!?」


せんべいを食べながらミクはあっさりといった。
ルカは喜ぶ。


「そのかわり、代償は頂くけどね」
「私は何を失ってもかまわない」
「じゃあねー…」


ミクは少し考えてから、ルカに告げる。


「じゃあ、代償はあんたの声。いいね?」
「じゃあ帰ろっと。お邪魔しましたー」
「オイちょっと待て」


ルカは帰ろうとした。


「あんたさっき『何を失ってもかまわない』って言ったよね?」
「だって声失ったらぁー歌えないしぃー」
「うわッうざッ」
「それにぃー」


ルカはせんべいを手に言う。


「声がないと、王子に言葉で呪うことができないじゃない…」
「グミじゃないのかい。てか王子呪うつもりだったんかい!」
「それに、怖い話で王子を恐怖に陥れることもできないし…王子を、あざ笑うこともできないじゃない…」
「…お前本当に人魚姫か?」
「もちろん冗談」
「…」
「呪うのはグミだから」


人魚姫は腹黒かった。
それはもう、恐ろしかった。


「てか、ちゃんとやってもらわんとこっちも商売にならないんすけど…」
「えぇー…声とか以外ならいいよぉー」
「えぇー…」




*




結局、長い髪を短くするという条件で人間になったルカは、海の暮らしを捨て地上に降り立った。
衣服はミクがくれた。すごくまともな服をくれた。(ブレザー…まとも…?)
瞬間。


「ッ!!」


足がとてつもない痛みに襲われた。
ルカはすぐに後悔した。
人間にならなければよかったと。

それでも憎きグミをこの手で呪うため、ルカはグミの家に駆けた。





ルカが窓からそっと中を窺うと、そこには神威と大富豪をしているグミの姿が。
ルカは気づかれないように中に入り、そっと後ろに立つ。
そしてごそごそとあるものを取り出し、


「動くな!」


神威の頭に拳銃を突きつけた。


「な!?ル、ルカ…」
「久しいわね、グミ」
「え!?誰!?」


神威はただ両手を上げることしかできなかった。


「まさか、あなたがこの国にいるなんて思わなかったわ…」
「あんたこそ、まさか人間になってるなんて思わなかった」
「え?何?何の話!?」


ルカとグミの間に、不穏な空気が流れる。


「指名手配のあんたを追っていたら、気づけば五年も経っていた」
「逃げ切れたと思ってたのに…」
「…あの、何の話してるんですか…?」


神威には何がなんだかわからない。


「あんたは竜宮城の織姫だというのに、毎日アニメばっか見て…」
「いいじゃんアニメぐらい」
「アニメ見すぎなの、あんたは。莫大な電気を使いすぎてテレビ禁止令まで出したじゃない。おかげでこっちはニコ動が見れなくなっちゃったわ」
「電気無くなっちゃったんだから仕方ないでしょ?」
「あんたが悪いんでしょ?だからあんたは指名手配になったのよ」


グミは竜宮城の織姫だった。
そしてわけわからない理由で指名手配って。


「でもまだ、戦いは終わってない…」
「ここで決着をつけましょうか」


わけがわからない上に危険を察知した神威は、こっそりと逃げた。
二人は気づいていない。

結局、二人がどうなったのかは誰にもわからなかった。






*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*






「…………ぬぁ?」


人魚姫って、こんな話だったっけ?
なんかえらく違う話のような気が…


「ん?がっくん、どうしたの?」
「なぁカイト…人魚姫って、織姫を追ってたのか?」
「はぁ?」


カイトは疑問符を浮かべ、俺から本を奪い取った。
そして、ページをぱらぱらめくり、


「そんな変な話なわけ…………ぬぁ?」


あ、なんか既視感(デジャブ)。


「がっくん…何これ?」
「わからん。俺にもさっぱり」
「てかもう人魚姫じゃないよねこれ…」
「あぁ…」



童話というものは…わからないものだ。
俺は心の中でそう呟いた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ボカロで童話やってみた【人魚姫】

なんか思いついたので。
こんな人魚姫は嫌…か…?

閲覧数:2,004

投稿日:2011/12/08 18:55:20

文字数:3,927文字

カテゴリ:小説

  • コメント5

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    こ、これが……世に名高い、ゆるりーのギャグセンス!!!
    まさか、これほどとは……「ゆるりーのギャグセンスは化け物か!!」

    いやはや……どうしよう……
    レベルの差をこうも感じると、人間はただ呆気にとられるしかないのだなぁ……

    2013/06/27 02:55:02

    • ゆるりー

      ゆるりー

      そんなに凄いものじゃないですよw
      いつも変なテンションで書いたらできあがるんですw

      しるるさんの作品を見て「凄いな…遠い人だな…」と画面の前で尊敬の眼差しを私はいつも送っています。

      2013/06/27 18:03:11

  • jyouban531

    jyouban531

    ご意見・ご感想

    ルカさんは日曜日の夕方にミクさんの家に行ったのですねw

    2012/05/13 21:09:13

    • ゆるりー

      ゆるりー

      日曜日の夕方なんですかw知りませんでしたww

      2012/05/14 00:07:59

  • 芙蓉

    芙蓉

    ご意見・ご感想

    どうも、sharlです。
    まさか人魚姫がこんな方だったとは…。知りませんでした。←

    ノリが軽いッスね、とてつもなくw

    二コ動が見れなく…!私にとってはピアプロの方が大事です!


    大罪シリーズ投稿してくださいねーノシ←なんか上から目線

    2011/12/11 23:48:00

    • ゆるりー

      ゆるりー

      sharlさん、メッセージありがとうございます。
      この話の人魚姫がこんな方になってるのは…とことん変な方向へもってっちゃえ☆ということです←

      皆さんノリが軽いんです本当に(ry

      私はどっちも大事です!

      大罪シリーズ…今たまっている小説が少しでも消化できたら書きます。
      ネタがつきてきましたが頑張ります。

      2011/12/12 16:05:26

  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    せんせールカさんの台詞の「呪う方法」が「乗ろう方法」になってますー(*´ω`*)ノ(ぇ

    Qなぜユーカの作品は毎回ウケるんですか。
    Aそれはユーカにはものすごい文才があるからです。((何

    ってかGUMIが織姫とかwwwごちそうさまでした(`・ω・´)キリッ
    人魚姫って警察!?ww

    ブクマもらうぜっ!ノシ

    2011/12/08 17:16:35

    • ゆるりー

      ゆるりー

      ごめんなー先生のミスで国語の問題文、間違えちゃったわー。皆に三点プラスするから((((
      今朝見直して気づきました。修正・少し加筆しました。


      メッセありがとうございます。


      Q.なぜ姉音香凛さんの作品は凄いんですか。
      A.それは姉音香凛さんの文才がもの凄いからです。
      Q.え?ユーカ先生、さっき…
      A.私なんか…文才なんて…そんなもの、一生手にすることがないですから…ううぅ…
      Q.先生…
      A.さぁ、君は帰りなさい。君には、文才という凄いものがあるだろう?ほら、行くんだ。
      Q.せ…せんせ――い!!!
      A.私は君を忘れないからなぁ!!そして…いつか、この星を君の文才で、明るくしてやってくれ…
      Q.先生!!せんせ――い!!…その目薬はなんですか!?

      …何がしたかったんでしょう。
      お答えします。私には文才はないです。姉音香凛さんの足元にもおよびません。


      意味不明な展開に持ってきたくてw
      警察…なんでしょうかねぇ。((

      読んでいただき、ありがとうございました。

      2011/12/08 19:09:10

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