玄関に入ると、大きく、コウの声が響いているのがわかった。
…五月蝿い。
美鈴を置いてすたすたとリビングへ向かう。
帰ってきた事に気がついたらしいコウが一層騒ぐ。
五月蝿いぞコウ。

「み!」

精一杯に伸ばしてくる手は、はたしてどういう意味なのか。
黒ゴマKAITOがお帰りなさいですと頭を下げてきた。
同時にリビングに入ってきた美鈴が明るくただいまーと言った。
机の上で跳ねているコウを放置してとりあえず買ってきたものを片付ける。
アイスはその後だな。
あ、そういえば。
美鈴、スプーン使うか?

「あ~っと…じゃあお借りします」

食器棚からスプーンを二つ取り出し、美鈴に渡す。
お礼を言いながらアイスの蓋を開けるのを見届け片付けに戻ると、後ろから二人の会話が聞こえてきた。

「何ですかそれ?」
「白玉入り宇治抹茶アイス」
「…俺の分のアイスは?」
「ちょっと待って」

作業をしているので姿は見えない。
冷凍庫の中にアイスを詰めながら耳を傾ける。

「美味しいですか?」
「……………ゴマ、あげる」
「え!?それってよーするに美味しくなかったってことですか!?」
「私もう一個の抹茶食べるからこれゴマのね」
「いつもいつも興味本位で買って俺に押し付けるの止めて下さいよっ」
「だって気になるじゃん」
「じゃあ最後まで食べましょうよ!アイスが可哀相です」
「だからゴマにあげてんじゃん。美味しくないって思いながら食べたり、残したりしたら可哀相だし失礼だもんね」
「当然です!」
「じゃあいいじゃん。ほら早く食べないと溶けるよ」
「あ、はい」

…流石だな。
途中で論点がズレた事に黒ゴマKAITOは気付いていないようだ。
問題はアイスを食べる時の心ではなく、食べれないものに手を出すなと言うことだと思う。
黒ゴマKAITOはそれに文句を言っていたはずなのに、美鈴の発言に騙され、忘れてしまっている。

「みーっ」

コウの声。
姿は見えないのに表情が浮かぶ程不平がこもった声。
恐らく内容はアイスの要求だろう。
確かチョコミント…いやまて。
美鈴と黒ゴマKAITOはコウがアイスを食べると人格が変わる事を知らない。
ここは無難なアイスにしておくべきだろうか。
チョコミントが初対面だと悪い印象が付きそうだし。
この間チョコミント食べさせた時は大変だったからな…。
よし。
なるべくまともなやつにしよう。
モカと公平にするためにミルク以外のアイスを一つ取り、スプーンを二つ手にリビングに戻る。
コウよりも先に、驚いたような表情の美鈴と黒ゴマKAITOの姿が見えた。
視線の先には、緑色の生き物が跳ねていた。
……モカ、説明を頼む。

「…………抹茶アイス……」

食べたのか。
モカが肯定の意味で首を振った。


コウの事を説明するのに時間はかからなかった。
しかし疲れた。
どう言えば伝わるのか、とても悩んだ。

「…コウ君は面白いねー」
「……そうでしょうか?」

抹茶色に染まったコウは元気に跳ね回るわりには、やけに丁寧で落ち着いた口調だった。
この間カフェモカアイスを食べた時も思ったが、なんとも違和感を感じる。

「氷から育ったってだけでも珍しいのに」

これは互助会には内緒かなー、と美鈴は結んだ。
…互助会?

「KAITOの種互助会です。種KAITOマスターによって構成されてて、まだ謎が多い種KAITOについて、情報交換するんです。わからないこととか、他のマスターさんに聞いたり出来て結構色んな種KAITOマスターが入ってるんですよ」

そんなものがあるのか。
抹茶色のコウを捕まえて、手に持っていたスプーンを渡しながら聞く。
モカにも渡してアイスを開けてやると二人でつっつき始めた。
固いらしく苦戦しているが、いつもの事なのでほうっておく。
美鈴が笑う。

「コウ君もモカ君もまだ小さいから、今入るのはオススメ出来ないですけど。たまにお茶会みたいなのがあるんで、たらい回しにされちゃいますから」

口調から察するに、黒ゴマKAITOもたらい回しを経験しているようだ。
本人は困ったように笑って、ため息をついた。
大変だったみたいだな…。

「それはもう…マスター助けてくれなかったですし」
「あれは無理だって。こっちも会話でいっぱいいっぱいだったし」
「……お二人のお話し、お聞かせ願いたいです」

突然会話に入ってきたのは、スプーンを大事そうに抱えるコウ。
いつの時代の話し方だ。
モカもアイスを食べながら頷く。
おまえら…。散々遊んでもらって、まだ頼むのか。

「あ、大丈夫ですよ。こっちも楽しんでますから。んー、じゃあ昔話しでも」
「マスター、内容選んで下さいよ!?」

焦る黒ゴマKAITOに美鈴は意地悪そうな笑みを向けた。
モカとコウが机の上に座り込む。
…残っているアイスは冷凍庫に入れといてやるか。
ついでにお茶をいれよう。
色々話してくれるようだし。
アイスを手に冷凍庫に向かう。
後ろから美鈴の声がした。

「むかーし昔、ある所に……」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

KAITOの種21(亜種注意)

二人のマスター第三弾。これからよろしく。
どこらへんにそんな要素あったかって?雰囲気だよ雰囲気!
ちなみにこれでマスターシリーズ終了です。
美鈴に始まり美鈴に終わりましたw

人数多くて手におえてない自分……。

互助会でたよー。みんな入ってね。
入りたい人は勝手に入っていいよー。
種KAITO情報満載だよ!多分!!



本家様入らないかなー?←
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on


6月28日 4:34
えええええええwww
面白そうだけど…っ、面白そうだけど!
絶対難しいですって!!
元の話しを誰かが考えてー、そっから個別につじつまの合う様にキャラの裏設定作ってー、んでつじつまの合うように動かしてー…。
やってみたいけどー……うーむ………。

閲覧数:615

投稿日:2009/06/27 10:15:37

文字数:2,089文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • 霜降り五葉

    霜降り五葉

    ご意見・ご感想

    エメル様
    抹茶氷菓イトは謎なキャラしてましたねー。自分も書いていてわかりにくかったですw
    美鈴はさらりと人を騙しますww
    主にゴマイトが被害者です。やっぱり単純で騙しやすいみたいです。
    五人って久しぶりに書きました。
    中途半端な人数だなぁとつくづく思いますw

    閲覧&コメントありがとうございました!

    2009/07/15 00:00:54

  • エメル

    エメル

    ご意見・ご感想

    こんばんわ~です!
    やっと読み始めました(遅すぎ

    抹茶コウくんの古びた言い方が笑えました。はしゃいでるのに口調は大人しいとはwww
    美鈴さんはあいかわらず黒いですね。ゴマイトくんが単純なだけかもしれないけど。

    確かに今回は賑やかですね。5人・・・・・・・・うちじゃデフォだw
    今書いてるのは8人・・・死ねます。

    続きは明日読みますね~ではでは

    2009/07/14 21:35:12

  • 霜降り五葉

    霜降り五葉

    ご意見・ご感想

    ちはれ様
    わー!ちはれ様っ!こんば……おはようございます!!
    お元気でしょうかー?
    氷菓イトはお腹減ってたみたいですねー。
    確かに、アイスの話しばかりしてそうです。
    ちはれ様も互助会どうぞですー。
    ネットで検索すれば多分出てきますよwww
    大きな種KAITOも師匠さん駄目ですかねー?
    コラボ!今度ちはれ様をナンパするつもりですので、是非暇な時期を教えて下さいv

    閲覧&コメントありがとうございました!

    2009/06/28 04:28:51

  • ちはれ(花見酒P)

    ちはれ(花見酒P)

    ご意見・ご感想

    やっと追い付いたよこんにちは! お久しぶりすぎて何から言えばいいのかわからないちはれです(汗
    コウ君よっぽどアイスを待ち構えてたんでしょうねえw
    実は留守中アイスの話ばっかりしてたんじゃないでしょうか、種KAITOだけに。

    互助会登場しましたねー。これは種KAITOコラボフラグですか?ww
    双ダイトがたらい回しされまくる中、うちの師匠はいろんなサイズの種KAITOにひくって固まってそうです。

    2009/06/27 14:08:01

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