双子は、とても暗いところで目を覚ましました。
「ねぇレン、ここってどこだろう」
「わからないよ……あれ?」
双子の男の子は、何かがおかしいことに気づきました。
「僕等、喋ってる?」
「ほんとだ、喋ったことなんてないのに…」
双子は、幼い頃の病のせいで出せなくなっていた声を出せるようになっていました。
「どうしてだろう……あっ」
双子の男の子は何かを指差しました。双子の男の子が指差した先には、月明かりに照らされた小さな鞄がありました。それは双子の女の子のものでした。双子の女の子は鞄のあるところへ駆けていきました。
「これ私のだよ。中身は……大丈夫みたい」
双子の女の子は鞄に入れていたガラスの小瓶を取り出しました。ヒビや傷のない、綺麗な小瓶でした。双子の女の子はこの小瓶が大好きでした。双子の女の子が月明かりの下で小瓶を見ていると、突然小瓶が光りだしました。その光は双子の進む道を照らしました。
「見て、これで帰れるよ」
双子の女の子は嬉しそうに言いました。
暗い夜道を、二つの影が動きます。
双子の男の子は歩きます。持つのが疲れた、と言われ双子の女の子に渡された小瓶を持って、道を進みます。
双子の女の子は歩きます。双子の男の子に小瓶を渡してしまって、退屈そうに進みます。
双子は小瓶の照らす道が正しいかどうかもわかりませんでしたが、ただただ歩きました。そして双子は、とうとうある家にたどり着きました。
「ここは…僕等にはわかる」
「あの、魔女の家」
双子はその家の扉をノックしました。すると間もなく、女がその扉を開きました。扉の外にいた双子の姿を見て、女は叫びました。何事かと思った男も双子の姿を見て、言葉を失いました。
双子の女の子は女に近づきます。女は逃げようとします。双子の女の子が近づくにつれ、女は燃えるかまどの前まで押しやられました。そして双子の女の子が女の胸を押しました。女は必死にかまどから出ようとしますが、双子の女の子はかまどの扉を閉めてしまいました。
双子の女の子と女を呆然と見ていた男は、近くにいた双子の男の子に気付きませんでした。双子の男の子は先程台所の上に置いていた包丁を握っていました。男は双子の男の子に気付き、そして赤ん坊を抱きかかえて逃げようとしました。しかし、椅子に引っ掛かって転んでしまいました。その拍子に、赤ん坊が泣き出しました。
「許してくれ、許してくれ」
そう叫ぶ男の胸を、双子の男の子は包丁で刺してしまいました。さらに双子の女の子は、赤ん坊の首を絞めました。
もはや、その家では火の燃える音しかしませんでした。
双子の女の子はかまどに向かって言いました。
「ねえ母さん、私をほめて。悪い魔女は倒したのよ」
双子の男の子は動かぬ男の体に向かってこう言いました。
「ねえ父さん、僕をほめて。魔女の子分も倒したんだ」
双子はとても悲しい顔をしていました。そして家の中を見回してこう言いました。
「それにしても、ここはとても落ち着く所だね」
「まるで昔から住んでいたような気がするね」
「でももうここには用はないんだ」
双子の男の子は、双子の女の子の手を取って、こう言いました。
「さあ本当の父さんと母さんに会いに行こう」
「うん、行こっか」
その次の瞬間、そこに双子の姿はありませんでした。あるのはかまどの中の女の体と、もう動かない男の体と、男の腕の中の赤ん坊と、そして双子が持っていた小さなガラスの小瓶だけでした。小さなガラスの小瓶は、ほんのりと赤い色の光を出したかと思うとその光は消え、そして割れてしまいました。
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