嘘つき。

約束したのに。

どうして。

あなたは、……。



















瑠花様へ



あなた様がこれを読んでいるときには、私はもうお傍にはいないことでしょう。
あなた様は私がいなくなったことを気にしておられないかもしれない。ですがどうして私がこの家を離れたか、それだけはどうしてもお伝えしたいのです。身勝手は承知の上、どうか聞いていただきたい。


まず、私があなた様の家に奉公していたのは、その昔、私がまだ10歳前後の少年だった頃、瑠花様のお父上に大変お世話になったからです。
今の世の中は、狂っています。国のお偉方は、皆、血の通わぬ化け物です。本来、国というものは、民と共に協力し合って未来を築いていくものです。しかし、油田や土地といった領土、鉱物や食糧等を売ることで得られる利益のために目が眩み、民の生活など頭にない。だから争い合うのです。

それは私の少年時代も同じでございました。若しかしたら今よりも少しだけ、ほんの少しだけましだったかもしれませんが、それでも酷い世の中でありました。
両親は共に感染病で亡くなり、私自身も病に侵される寸前でした。子どもが一人で生き抜くには希望がなさすぎる時代です。働き口は見つからず、ろくに食事もとれやせず、私は死を覚悟しました。

そこで行き倒れていた私を助けてくださったのがあなたのお父上です。前にも書いたように、なんとかして生きねばならない時代です。皆自分が食いつなぐことに精一杯で、他人のことなど気にしていられない。
なのに見ず知らずの死にかけの子どもを、旦那様は助けてください ました。しかも生まれて間もない赤ん坊の瑠花様がいるというのに、赤の他人に、大切な食糧を分け食べさせてくださいました。
あの時、旦那様が助けてくださらなかったら、私は乾ききった固い地面の上で、そのまま飢え死にしていたことでしょう。私はあなた様のお父上に、返しきれない恩があるのです。

その後、私は住み込みで働かせていただけることになりました。私が大人になってもあの家で働かせていただけたのは、旦那様のご厚意に違いありません。
仕事でお忙しい旦那様の代わりに、私は瑠花様の世話役を任されました。それから十数年、旦那様が赤紙を受け取った後も、私は瑠花様のご成長を見守っておりました。

それは私にとって幸せな時間でありました。元々、この場に存在しないはずだった私にとって、その後の人生はすべて奇跡で、幸運なことでした。 …いえ、正しくは「ほとんど」幸運なことですね。


実は私は、戦争に行くことになりました。旦那様と同じようにです。
ここで私の運は尽きが回ってきたようですから。

あなた様の未来を見届けていたかった。この手であなた様を、ずっとずっとお守りしたかった。
ですがそれはもうできません。

私はきっと、戻ってこれません。
でも旦那様に救っていただいたこの身で、人を殺めるということなど出来るはずもありません。
それでももう、あなた様の未来を知ることも許されません。そう決められているのですから。


一つだけ、身勝手なわがままをお許しください。
庭に、私が昔植えさせていただいた桜の木があります。私の知る限り、あれはまだ蕾をつけたこともありません。
あの花は、この戦争が終わる頃にきっと咲くでしょう。この桜の木があなた様を見守ってくれるでしょう。
ですからどうか、希望を失うことなく、強くあってほしい。
それが私の最後の願いです。


もう時間がありません。私はこれを最後に、二度とあなた様の前に姿を見せないでしょう。
瑠花様。どうかお元気でお過ごしください。
あなた様の幸せだけを、ずっとお祈りしています。



































ごめんなさい

わたし むりでした

家も 桜も すべて 空襲で 焼けてしまいました


こうして 遠く離れた地へ疎開しても

もう 敵の兵士が すぐそこまで追ってきています


ころされてみせしめになるくらいなら

この くらくふかい きれいなみずうみのそこに

みずから このみをなげて

わたしはじぶんで じぶんを




ゆるしてください

ゆるしてください


あまりにみがってな わがままで ごめんなさい

できるなら わたし

あなたのそばで いつまでも わらってくらしたかった

ごめんなさい

ごめんなさい









……ねえ

きこえているなら どうかひとつだけ こたえてください



どうして この みずのそこで

あかくそまった おくにのふくをきて

あなたはねむっているのですか

せんそうに いったんじゃ ないですか





あぁ そうか

あなたも わたしも

やくそく まもれなかったんですね



うそつき

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【がっくん誕】約束の地

仮タイトルはなぜか「麦味噌」でした。適当にもほどがある。
名もなき奉公人と少女のお話。

最近がくルカが書きたくて書きたくて。

閲覧数:795

投稿日:2014/07/29 22:20:04

文字数:2,043文字

カテゴリ:小説

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  • ayumin

    ayumin

    ご意見・ご感想

    うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(号泣

    がっくんもルカちゃんもすごいいい子ですねがっくんの人を殺せないのとこで第一次うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ期がですね(
    そして二人とも同じようなこと考えてたみたいなあたりで第二次うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ期がですね((

    やはり純情は最高ですね悲しい結末ですがとても好きですこういうの!!!

    2014/08/07 20:59:59

    • ゆるりー

      ゆるりー

      どぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(追撃

      第一次うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ期(2014)
      第二次うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ期(2014)
      設定では歳の差10歳ぐらいありますけどね…!


      私は基本こういうふうに書きます(`・ω・´)
      悲しい結末しか書けません助けてください((

      2014/08/07 22:04:33

  • Tea Cat

    Tea Cat

    ご意見・ご感想

    (´;ω;`)ブワッ




    (´;ω;`)ブワッ

    2014/07/30 16:09:10

    • ゆるりー

      ゆるりー

      ぶわああああああああああああああああ

      2014/07/30 18:31:59

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