【小説】常識科学の魔法学12

投稿日:2016/10/20 13:48:37 | 文字数:1,703文字 | 閲覧数:107 | カテゴリ:小説

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TEXT
 

xx県xx市。
面積の大半を山と森に覆われたこの土地は、標高が高く、避暑地としてよく知られた土地だ。
アウトドアやゴルフといった自然を使った娯楽が盛んになっていて、別荘地としても人気は高い。
海のように広い湖。
木々に見え隠れする洋館などを見れば、まるでミステリー小説の一シーンのようで胸踊ることだろう。
ゴールデンウィークに差し掛かったタイミングで俺たちはそんな別荘地から少し離れた街のビジネスホテルに拠点を置いていた。
「え、なんで街?なんでビジホ?!」
達樹先輩は着いて早々からチェックインして部屋に着くなり、ようやくその一言を発した。
「仕方ないでしょ。お金ないもん。」
聖姉さんは先輩に対し冷ややかな目線を送った。
部屋は2部屋。当然男女で分かれている。
剥がれた跡のある壁紙に前時代的なコイン式テレビ。
禿げた畳の部屋はビジネスホテルとしても通用するか怪しい。お金ないにしてもこのチョイスはどうなんだろうと思ったが、車の運転からビジネスホテルの手続きと全てを聖姉さんに任せてしまっていた手前俺は何も言えずにいる。
「別荘地だよ?xx県xx市だよ?それがなんではめ殺しの窓なんだよ!」
「あ、先輩、隣雑居ビルなんで窓開けても壁ですよ。」
「そういうことじゃねぇんだよ!」
アバンチュールという言葉が遠くに行ってしまったのを嘆くが如く先輩は叫ぶ。
「おいうるせーぞ!」
隣の客のクレームが壁越しに聞こえてきた。
「ひぃ・・・す、すいません。」
ビジネスホテルと言うよりはボロアパートに近いという印象を受ける。
寮よりもさらに肩身の狭い思いをするとは全く考えていなかった。

「ここは本当にホテルなのです、か・・・?」
言い終えたところで、ウサジャージの血の気が引く。
うさジャージは剥がれた壁紙の縁を触ってさらに少しはがしてしまったのか、誤魔化すことに必死だ。
外は明るいのに裸電球を灯さないと暗くて見えない。
正直ここまでひどいとは思っていなかった。聖姉さんの性格上そういった事には几帳面で情報通の彼女は学生の卒業旅行の相談を受けることも多く、彼女が薦めたプランには学生達も皆、大満足として報告していからだ。
「聖姉さんにしては、なんというか斬新なチョイスですね。」
俺はこの先聖姉さんに不機嫌になってもらっても困るので、遠回しに話を振ることにした。
「あら、ここ選んだの私じゃないわよ?」
「・・・は?」
俺は思わず聞き返してしまった。
衝撃の事実というものは時として人の意図しない行動をさせるものだ。
「宿を探してたら、達っちゃんが『俺が金出せるとこにして』っていうからやすくていいとこ探したのに全部クレームつけるから私のアカウントわたしてじゃぁ『自分で探して』って・・・。」
さっきの『お金ないもん』は『達樹先輩のお金ないもん』ということか。
なんだか一気にオチが読めたようで脱力感が半端ではない。
「・・・名前がすげぇよかったんだよ。」
既に正座している先輩の前には『アバンチュール』と書かれたマッチ箱が置いてある。
なるほど、残念すぎるこの人。
「まぁ、こういうところの方が旅としては、面白いものよ。」
聖姉さんは珍しく先輩をフォローする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・珍しすぎないか?
いつもなら達樹先輩をひっぱたきながら全額達樹先輩に負担させて宿変えるくらいなのに。
不思議におもい、聖姉さんを観察すると、落ち着かない様子である一点を気にしているようである。
チラチラと聖姉さんの送る目線の先には畳の上にこれでもかと言わんばかりに場違い的に置かれたセミダブルのベッドが一つだけおいてあった。男子部屋と女子部屋の作りはほぼ同じ。
当然女子部屋もセミダブルのベッド。
聖姉さんの頭の中を鑑みるに、うさジャージと一緒に寝るのが嬉しいのだろう。

「おいおい俺がそっちに目覚めたらどうすんだよ」
追い討ちを掛けるように達樹先輩がそんな事をいい出した。
「宿、変えましょう!!」

俺はそう決心すると、嫌がる聖姉さんを引きずって、強制的にホテルからチェックアウトするのだった。

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