【中世風小説】Papillon 8

投稿日:2010/02/05 16:13:07 | 文字数:2,714文字 | 閲覧数:213 | カテゴリ:小説

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実はテスト期間だったりします。前回から結構間あきましたねー。

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 君となら、どんな世界でも、生きていける気がしたよ。君と二人で生きていくために、いつかこの場所を離れるときのために……。

 ねぇ、僕を笑ってくれないか。そんな日は、最初から来るはずもなかったんだって……今の今まで気付かなかった、僕のことを。

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 酷い顔だな。鏡をのぞきこんで、溜息をつく。あたし、こんなにブスだったっけ。寝不足のせいかな。

「リン、顔色よくなったわね」

 マジですかルカ姉。これでよくなったって、あたしこれまでどんな顔してたの。

 あの事件から二週間。
 レンの体調も少しよくなって、会話くらいは普通に出来るようになったらしい。
 でも、あたしがレンのところに行ったのは、あの一回きり。別にどうしても嫌というほどじゃないのだけれど、なんとなく、今はあたしの顔を見られたくないから。

 結局、普通に謝ることは出来ていない。
 逃げているだけなんて、最低だ。そう分かっているのに、いざとなったら、かける言葉なんて思い浮かばなかった。

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 その日も夜になって、あたしはレンの部屋に行った。体内時計も少しは戻って、今は寝ているかもしれない。そう思ったけれど、あたしは思い立ったら動くタチだった。

 レンの部屋に行き、気付かれないように、起こさないように、そっと扉を開く。
 すると、中から突然大きな音がして、あたしは驚いた。何かをぶつけるような音。荒い息遣いの下から、押し殺した泣き声。
 呆然と立ち尽くしたまま、ベッドの方を見る。カーテンの隙間から、レンの姿が見えた。

「なんで……」

 まだ、身体を起こして大丈夫なはずないのに、レンは膝を抱えて泣いていた。
 突然、左手で掴んだ右腕を、柱に思い切りぶつける。また大きな音がして、あたしは身をすくめる。

「なんで動かねぇんだよ……っ!」

 ――あぁ。

 分かってしまった。レンが泣いている理由。あまりにも大きな傷のせいで、存在すら忘れられかけていた、右手の傷。

「動けよ! なんで……なんで……っ!」

 あたしに、ごめん、と言った彼。自分の傷なんて大丈夫だと言いたげだった彼。でも、本当は、全然大丈夫なんかじゃなかった。
 怪我したら従騎士としては終わりだと、カイトは言った。動かなくなってしまった右手。多分それは、痛みとかの問題ではなく、本当に動かないんだと思う。それはきっと、レンにとって、脇腹よりもずっと大きな痛み。騎士としての死。

「う……うぅ……」

 あとはもう、すすり泣きが聞こえるだけで。あたしはそこに立ち尽くしたまま、かける言葉もなく、メイコ姉の部屋に帰った。
 ベッドの中でまるくなって、耳をふさぐ。ずっと、耳の奥で、レンの泣き声がこだましていた。

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 あの事件から、一体どのくらいの時間が経ったのだろう。最初は意識が朦朧としていたし、カーテンの閉められたベッドの上で過ごす日々では、もう周りの状況もよく分からない。

 リンは一度だけ、他の奴らは毎日のようにここに来ていたと思う。
 ルカ姉は申し訳なさそうにしていたけれど、何も言わなかった。

 きっと、リンを襲った騎士たちは、今頃「第一王子側」の拷問を受けているだろう。もしかしたら、そろそろ口を割る頃かもしれない。誰の差し金なのか。
 でも、俺はそんなことに興味はない。
 俺をつけ狙っているのはお父様の妃で、それを分かっていて放置しているのはお父様。そこまではもう、この宮殿の中では暗黙の了解で、きっと一番つらいのは俺じゃなくてルカ姉だと思う。
 でも、ルカ姉はその素振りすら見せない。どうして、そんな風にいられるんだろう。俺もそのくらい強かったら、きっとリンを悲しませずに済んだのに。

 ようやく、ベッドから出る許可が出た。まだ、自由に歩いていいというわけではないけれど、わき腹の痛みもかなり軽くなった。まだ動けば痛むけれど、少し動いたくらいで悪化するほどじゃないと思う。
 身を起こして、カーテンを開け放ち、久々に日光を浴びた。

「外に出たいな……」

 ずっと見ていなかったせいか、その光が抗えないほど魅力的で、俺は窓の外へ身を乗り出した。
 真下に見える、緑の絨毯。美しい庭園、光る噴水。当たり前に、その中を駆け抜けていく、幼い自分と姉の幻影。

「あの頃に、戻りたいな……」

 でも、それはもう、出来ない。あの頃どころか、ほんの少し前の日常にすら、戻れない。

 日光を浴びて、部屋の中の何かが輝いている。
 俺は、それを疑問に思い、近づいた。金色の腕輪。ついこの間、リンが買ってくれたもの。
 おそろいの、と言っていたけれど、もうリンはあの腕輪をしていないかもしれない。

 左手で腕輪を持ち上げて、ベッドに座る。
 膝の上に腕輪をのせて、膝と左手を少しずつ動かしながら、左の手首に腕輪を巻きつけていく。あとは、留め具をつけるだけ。右手で留め具をつまもうとして、でも、妙に力だけが入った右手はろくに動かずに痙攣し、腕輪は床の上に落ちた。
 高い音が響いて、俺は呆然とそれを見る。俺がそれを左手で拾おうとすると、隣から伸びて来た白い手が、それをさらった。

「あたしが留めてあげる」

 俺が腕輪相手に四苦八苦している間に、リンが部屋に入ってきていたらしい。
 右手のこと、気付かれてしまったのだろうか。そう思うとこわくて、だけど自分ではどうしても口に出来そうにないことだったから、バレた方が気が楽だ、と思う自分もいた。

「留められなかったくせに」

「出来るよ、このくらい」

 言葉通り、リンは容易くその腕輪を留めてしまう。

「レンの手首、ものすごく細くなっちゃってるじゃん」

 金具の余っている部分を弄びながら、リンは笑う。どこか悲しげな笑顔だった。

「この腕輪、ゆるくなっちゃってるね。でも、その分、すっごく留めるの楽になったよ」

 リンが両手で出来なかったことを、俺は右手だけで出来た。
 あれから、どれくらいの時間が経ったのだろう。俺は、気付いていないだけで、ものすごく長い時間、寝てしまっていたのではないだろうか。
 それとも、これが現実なのだろうか。あの日、あの一瞬で、すべてが変わってしまったという現実。残酷な世界に生まれたという事実。

「ねぇ、レン」

 リンは、俺のベッドの上に膝をつき、ずいっと顔を近づけて来た。俺は驚いてのけぞり、その瞬間走った激痛にうめき声をあげる。それでもリンは構わずに、耳元でささやいた。

「一緒に、逃げよう」

 世界が、とまる音がした。

とりあえずいろんなことに手を出しまくってる鏡音廃です。巡音も買ったようです。

マイリス→http://www.nicovideo.jp/mylist/18736642

オリジナル曲の二次創作・派生作品等は、ボカロやPIAPROの規約の範囲内でご自由にどうぞー。

小説の更新が滞ってますが、プロットはちゃんと出来てますよ><

http://hozue.blog-fps.com/

http://sns.cv02.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=2229
http://v-nyappon.net/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=12234

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2010/2/17 追記
HNを秋穂(あきほ)から穂末(ほずえ)に変更しました!

2010/7/18 追記
ニコ公開三曲目となる「水鏡プリテンス」で、P名を頂いてしまいました(ありがとうございますっ)。

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一応、お仕事やコラボのことに関して書いておきますね。以下の文章は、状況によってコロコロ変わります。

現在、曲・絵の新規依頼は受け付けておりません。交流のある方(複数回のメッセージ交換が目安)からの依頼ならば検討しますのでご一報お願いします。
作詞ならば依頼を受け付けられますが、依頼理由はきちんとお書きください。

一つの作品を仕上げるまで根気強く手伝ってくださる(ここ重要)絵師さん、動画師さんは常に募集しています。
また、作品ごとにイラスト募集を(突発的・〆切あり)することがあります。

コラボはお互いに本気じゃないと自然消滅するだけですので、やるなら本気でやりましょう。一報したうえでの延期・降板は受け付けますので。

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