目の前にいた芽結を文字通り掻っ攫われた気分だった。鳥の様な速さでビルの屋上へ上ったミドリさんをひたすら追った。何なんだ?まさかまた暴走しておかしな事に?いや、それ以前に何で芽結を連れてく必要があるんだ?焦り一杯で屋上へのドアを開け放った。

「アミダで決めてどうすんだよ?!馬鹿じゃないのか?!」
「だーかーらー!!…あれ?流船?何やってんだ息切らして。」
「…幾徒…?」

何度か目をぱちくりとさせた。屋上には何故か幾徒とミドリさんの姿があった。アミダの紙と共に…。

「…無線繋がらないって鳴音さんが凄く心配してたけど…?」
「え?…おわっ?!無線割れてるし!メールで…あ、携帯中か…。」
「殴って良い?」
「何で?」

毎度毎度無事を素直に喜べないのは幾徒の性格とタイミングに問題が有る気がしてならなかった。と、誰かがトントンと肩を叩いた。

「芽結、無事だったか。」
「うん、私もよく解らないで連れて来られちゃって…。」
「芽結、誰になったー?」
「えっと…コアちゃんです。」

ふと見ると芽結の手に赤マジックが握られていた。そして適合者の名前が書かれたアミダの紙…よくよく見ると俺の名前が入ってない。解らないけど嫌な予感が足元から怒りと共にじわじわ湧き上がって来た。

「何これ?」
「ショートして認識機能が吹っ飛んだ。」
「はぁ。」
「そんでお前を集合体の器に出来なくなった。多分免疫出来ちゃって。」
「…で、このアミダは?」
「ラスボス役をアミダを決めてみました。因みに責任取って俺も入ってる。」

真顔で言い放った幾徒に呆れて最早言い返す気力が失せていた。皆を集めて話せば良い物を何を誤解を招くやり方で一々面倒にするんだろう…?もしかしなくても馬鹿なんじゃないだろうか?頭良い奴って大概変人だって言うけど言われれば確かにそうだよな。でも幾徒こんなんで既婚者なんだよな、しかも鳴音さん美人だし、世の中って不公平過ぎるだろ、オイコラ解ってんのか馬鹿野郎…。

「…目で語るのは止めて欲しいんだが…。」
「結局どうするの?」
「器を変更するだけだからやる事自体はそんなに変わらない。」
「えっ?!じゃあコアちゃん撃つんですか?!」

芽結が幾徒に詰め寄っていると、無線機からいきなり怒鳴り声が響いた。

「どう言う事だよウスラボケ!コア撃つとかふざけんじゃねぇぞ?!」
「わっ?!…え…?純…?」
「落ち着け、実弾撃ち込む訳じゃない。さっきの事故で弱った幎の器になって
 貰うだけだ。重傷を負う様な実害は特に無い。」
「知るかよ!そんな危ない事させられるか!」
「…なら、お前がやるか?」
「え?」

会った時から直感で解っている事がある。頭が良いのか馬鹿なのかは別として、幾徒が笑うとろくな事が無いんだ。

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コトダマシ-104.笑うとろくな事が無い-

閲覧数:83

投稿日:2011/05/23 11:56:43

文字数:1,158文字

カテゴリ:小説

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