風も吹き荒れ、それにつられて雨も降り荒れるという最悪な天気模様のある日。
科音バンの研究所では、バンはもちろんのこと友達(バンいわく、恋人?)のアカイト、それと少し前から研究所に遊びに来るようになったモコと、アカイトに言わせれば、性悪猫のミンの4人が約束も交わさずに、集まっていた。
そして、今日も暇な一日になろうとしていた時・・・。

いきなり、ドンドンドンというドアを叩く音がした。

その物騒な物音に、モコは、
「な、なんなのですかっ!?も、もしかして、今流行りの抱擁男なのですかっ!!?」
と、叫ぶ。そんなモコに、
「今流行りの抱擁男って・・・そいつどんだけ変人なんだ」
アカイトは冷静に呆れつつ呟く。
「それに、抱擁男って何だ?」
「それを言うなら、包丁男だろう?アカイト」
首をかしげるアカイトに、バンは言った。
「?何だ、それ?」
すっかり「?」に、侵食されたアカイトはたずねる。
「それは文字通り、包丁を持って・・・」
そこで、意味ありげに言葉を切る。
「そ、それで?何なんだよ???」
「・・・料理をするんだ」
「・・・・・・は?」
しばらくして重々しく言われるバンの言葉に、アカイトはますます意味が分からなくなる。
「・・・まぁ、いい。分からないのなら、分からなくていいからな。無理に知ろうとするより、9割はましだ」
「えええええっ!!?いや、そこまで言ったんなら最後まで言えよっ!」
と、喚くアカイトを空気にし、バンは「開けるぞ」と前置きしてから、ドアを開けた。

そこに、立っていたのは・・・。

「あ、あの!・・・雨宿り、させて下さいっ!」
そこには眼鏡をかけて、天使のわっかを頭に乗せて背中には小さな羽根という非常に天使天使した17才ぐらいの女の子と、その後ろには黒色の髪に、服も黒のTシャツとい
うなんだか悪魔みたいな男がいた。年齢的には20才いくかいかないかの微妙な容姿だ。そんな天使と悪魔みたいな組み合わせに、さすがのバンも平常心でいられるかなと、アカイトは少しばかりの心配と共に場の成り行きを見守っていた。
「あ、やっぱりだめですか・・・。そうですよね、いきなり見ず知らずの人がたずねてきたら、そりゃびっくりしますよね・・・」
まだ返事もしてないのに、天使はがっくりと肩を落とす。
「でも、そこに『110番の家』って看板があるからいいんじゃねーのか?」
そんな天使を励ますかのように、悪魔は言った。
天使を励ます悪魔って、こりゃなんだかすごい画だなぁーっと感心していると、ふと疑問が湧き上がった。
「・・・看板?なにそれ?っていうか『110番の家』???」
またまた「?」だらけなアカイト。
「そうだ。最近、変質者なる者がいるからな・・・だから、そうやってしておけば助かるというものだろう?」
「・・・子供目当てか、このロリが」
「あ、でも、確かに助かりましたよねぇ?ミンさん」
「そうだにゃん。その看板があったからこそ、2人はずぶ濡れにならずに済んだんだからにゃん」
モコとミンの会話に、さすがのアカイトも口をつぐまざるをえなかった。
「えーと、それで・・・?」
話の流れがいまいち把握し辛いのか天子が言いにくそうに、口を挟んでくる。
「こんなところでよかったら、いくらでも雨宿りしてって下さい」
にこりと上辺で笑みをこぼすバン。他の3人もうんうんと頷く。
「あ、ありがとうございますっ!」
そう言って、なんとバンに抱きつく天使に、
「「なっ・・・」」
アカイトと悪魔が何故かハモったのだった。

一通り簡単な自己紹介をした後は思い思いに過ごす事となった。
「へぇ、それでこの世界に・・・大変ですね」
「そうなんですけど、この世界も楽しいんですよ、色々と」
「どんなところがですか?」
「えっと・・・マスターがすっごくお優しいところとかマスターが話してくれる話とかです」
「マスターが好きなんですね!私もです」
数分後にはモコと天使は打ち解けていた。
「だって、天使の名前がフワだからなぁ・・・モコとフワってなんだか似てるからな、バン?」
「そうだな。科学的には全くの別物だが、似てるといえば似ているな」
「・・・似てるならそれだけ言えよ、全く」
2人から少し離れたところにアカイトとバンはいつもどおりの会話をしていた。
一方の、ミンと悪魔は・・・。
「にゃあん?すると悪魔じゃにゃくてグルトっていう名前にゃんか?」
「そうだ。っていうか何で悪魔なんだよ」
「だって、黒ばっかりにゃもんだから・・・」
と、性悪猫と悪魔は至って普通の会話をしているのだった。

その後、バンの研究所の台所に存在していたクッキーとミルクティーを持ち出し、1つのテーブルに計6人が囲んでちょっとしたお茶会をすることにした。
「最初、ほんとに包丁男だったらどうしようかって、内心焦ってたんだぞ?バン」
「だからほとんど害はないから大丈夫だ。それに、もし包丁男が来たらおいしい料理が食べれるんだがな」
「えっ、それほんとか?!」
「ああ。もっとも、誰かさんが戸締りを徹底してしまえば、侵入もなにもないが」
「うっ・・・」
ミルクティーを飲んで誤魔化すアカイト。
「でもそういう変な人ってどこにでもいるんですね」
「と言うと、やっぱり天使の世界でも?」
アカイトが聞くと、天使もといフワは頷いた。
「天使の世界にも、そういう人は少数ながらも存在しています。でも、そういう人たちを取り締まる方たちがいらっしゃるので大丈夫といえば大丈夫です」
「ふーん。どこの世でも苦労は絶えぬってにゃー」
「そういうミンさんはどうなんですか?」
訳知り顔で呟くミンにモコは聞く。
「猫の世界でも抱きつ抱かれつはあるにゃーん」
「ちょ、おま、そんなことモコに言うんじゃねぇよ」
すかさず善ロリコン人のアカイトが口を挟んでくる。
「はいはい。分かったにゃんにゃん」
性悪猫は善ロリコン人を一蹴し、
「それよりも、さっきのバン抱きつき事件の方が重要じゃにゃいかにゃん?」
と問題提起する。
「・・・それ重要なのか」
とバンの呟きに対し、
「そりゃ、そうだろ」
「何よりも、重要だ」
ぴったしハモるアカイトと悪魔もといグルト。
「・・・ってなんで悪魔も言うんだ」
「悪魔じゃなくて、俺はグルトだ」
「名前はもうどうでもいい。それよりも、なんでお前が重要なのか教えて欲しいんだけどな」
そう言って、軽く睨むアカイト。
「それは・・・」
グルトは地味に口ごもり、黙り込むことを決めた。
「どうなんだ?・・・ん、もしかしてお前俺のバンを寝取ろうと」
「それはない。絶対だ」
きっぱりとあっさりと言い切るグルト。
「じゃあ、何でだ」
「・・・それは」
「もしかして、フワにゃんのことが好きにゃのかにゃん?」
「・・・っ!」
ミンの言葉に動揺グルト。
「え、あれ、そうなのか?なら、いいけど」
アカイトはバンが本命のためあっさりと引き下がる。
問題なのは、
「えっ・・・」
と瞳を揺らした後、一切の動作を止めてしまったフワと、グルト本人だった。
「にゃおん?違うんにゃら、違うと否定でもしたらいいにゃんけどにゃん?」
性悪猫の本領発揮とでもいうかのように瞳を輝かせるミン。
「くっ・・・」
グルトは、何かを覚悟したかのように、
「す、好きなんかじゃ・・・ない」
と言った後、
「あ、べ、別に恋愛として好きじゃないってだけで、その・・・友達としてなら、好き・・・だけど」
と慌てふためくように続けた。
「だってにゃん?フワにゃん」
ミンは今度はフワに話を振る。
「あ・・・そ、そうですね。・・・私も恋愛はちょっと分からないけど、でも、私も・・・・」
眼鏡の奥の瞳を揺らしつつ、
「・・・・今日初めて会ったし、それからここに来たから、あんまり分からないんですけど、でも・・・」
一度俯いて、それから顔を上げて、
「・・・友達としてなら、好きです」
と。にっこりとした笑顔がフワの表情に浮かんだ。
「よかったにゃん?グルトにゃん」
ミンは声をかけたけど、グルトは、
「お前のせいだろ」
軽く叩いたのだった。


気づけば、雨は上がり、綺麗な雨上がりという舞台にオレンジ色の光の粒子が舞い踊っていた。
「あら、もうこんな時間だにゃん。帰るにゃん、モコにゃん」
ミンは、くいくいとモコの服の裾を引っ張る。
「あ、そうですね。もう帰らないと、マスターに怒られます」
そう言って、モコは椅子から降りて、
「また明日、です」
みんなを見渡してにこりと笑ったあと、ミンと共に研究所をあとにした。
しばらくシンとなったあと、
「それでは私たちも帰ります。ね?グルト」
あれなんかフワの好感度が上がっている気がしたなと、感づくアカイト。
「そ、そうだな。い、一緒に、帰るか」
たどたどしく言うグルトに微笑ましさを感じるアカイト独り。
そうして天使と悪魔がいなくなった研究所には、アカイトとバンだけが残されたのだった。
「何か、急に寂しくなったな」
そうアカイトが言うと、
「そうだな。だけど、2人っきりになれたから、喜ばしいことじゃないか」
と返事が。
「・・・・・」
一気にアカイトは無口になる。・・・いや、ただ単に恥ずかしさを誤魔化すためなのだが。
「だけど」
バンが言う。
「みんながいると、思ったより、退屈しないな」
「・・・そうだろ。やっぱり、友達っていいよな」
そうして、夕焼け時は過ぎてゆくのであった。

一応、続く!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【コラボ】天音 フワとグルトの参上といつもながらの会話とやっぱりどたばたと少しの恋愛と【亜種】

こんにちは、もごもご犬です!
最初の抱擁男だの何だののくだりは、初期設定に斧男だったんですがそれじゃ普通だろうと私なりにアレンジを加えてみました!
なんて、どうでもいいことはさておき。
自作のミンとグルトと最初からいたアカイト以外の個性豊かな素敵すぎる亜種たちの出演を承諾してくれたマスターたちには感謝してます!ありがとうです!そしてこれからも温かく見守っていただけましたら嬉しいですよ!

さて、たくさん打ちすぎて疲れ果てていつもはあれ書こうこれ書こうと思い浮かんでいたことを書く気力がない・・・。
でも、楽しかったです。
人数も増えたし、会話とか書くのすっごい楽しいし。
ほんとに、亜種コラボ始めてよかったです。
これからも、続けていくのでお楽しみに!

閲覧数:176

投稿日:2010/03/24 13:19:58

文字数:3,894文字

カテゴリ:小説

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  • 壱枝ころ

    壱枝ころ

    ご意見・ご感想

    こんにちは!
    遅れませながら拝読させていただきました。

    フワを出していただけて嬉しいです!
    しかもなんともかわいい娘にしていただけてウハウハです~*><
    こんなに生き生きと描いていただけてフワは幸せものです!
    眼福ものでした。ありがとうございます・・・!

    これからも素敵なテキスト期待しています★

    2010/03/28 23:32:33

    • もごもご犬

      もごもご犬

      >壱枝ころさん

      こんにちはー!
      嬉しいと言っていただけて私も嬉しいですよ♪
      眼福ものwww
      初めてフワちゃんを登場させたのでキャラとか崩れてないかなーと、少し不安でしたがそう言って下さると安心しますよw
      これからも頑張りますよ!

      2010/03/29 13:39:18

  • しあ

    しあ

    ご意見・ご感想

    メッセージありがとうございます(^^)もごもご犬さんの書かれるバンは生き生きとしていて親として嬉しい限りです!いつも素敵な作品に出させていただいてありがとうございますっ(><)
    拙宅にはあと2人亜種がいますので、ネタに困ったらその子らも使ってやってください(^^)

    今後も頑張ってください!応援しています。

    2010/03/23 08:21:57

    • もごもご犬

      もごもご犬

      コメントありがとうですよ!すっごく嬉しいです!
      >しあさん

      生き生きしてると言っていただけてよかったですw
      いえいえ、バンくんあってこその物語なので今後共よろしくお願いします!
      2人の亜種さんにもこの後会いにいってみますね!
      応援されるとすごく励みになります♪
      これからも頑張ります!

      >るるさん

      光栄だなんてww
      むしろモコたんの出演を許可していただいたことが光栄ですよwww
      今回新たにフワちゃんと共演するにあたってぶっちゃけどうなることかと思いましたが無事仲良くできたのでよかったです!
      おぉ、和みましたか!確かにモコフワコラボは強力ですからね(笑)
      いえいえ、文章力は他の人たちに比べて皆無に近いです←
      ブクマありがとうございました!

      2010/03/24 13:38:41

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