「……白紙だらけだ」

「ん、どうかした?」

「いや、別に……」

 そこで――ふとコノハは気づいた。

「あれ、先生。なんでこんなところにいるんです?」

 そこにいるのは化学の先生、名前は忘れてしまっている。覚えるほどでもなかったんだろうか。

「おお、コノハ。それに**。ちょっと忘れ物をしてだな」

「実験室は向こうじゃないですか」

 コノハが自分で考えたのではなく、記憶が勝手に喋り出す。

「ああ。そうだ。……まあ、ぶらぶらと、な。暇だし」

「そうなんですか」

 ――と、余裕をこいていたら。

 急に腹部に痛みを感じた。

「――……え?」

 コノハは驚いて――その場所を見る。

 血。

 血がついていた。

 そして――コノハの目がゆっくりと赤くなっていった。

「……成功だ」

 先生は笑っていた。

 コノハは何が起きたかは解らない。だが、これが記憶の中の出来事というのは理解していた。

 そして**は、何もできず怯えていた。

『逃げろ』

 コノハはその言葉を言おうとして――出来なかった。

「――!!」

 彼女は何かを言っているようだったが、まるで見えない壁に阻まれているようで、聞き取ることはできなかった。

 眩む視界の中――先生はぽつり呟いた。

「次は、君の番だ」

「……おい、コノハ」

 キドの言葉を聞いてようやくコノハは目を覚ました。どうやら、眠ってしまっていたらしい。

「ソファーに座ったまま寝ているとかな。お前らしい」

「……どれくらい眠っていた?」

「さあ、どれくらいだろうな」

 キドはそう言ってコノハの隣に座り、適当に机の上に乗せられた雑誌を手に取る。

「……絶対に、超えよう。メビウスの輪を」

 コノハは呟いたが、それがキドに聞こえることはなかった。





つづく。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

カゲロウプロジェクト 25話【二次創作】

『目に浮かぶ話』終わり。

――




この小説は以下の曲を原作としています。


カゲロウプロジェクト……http://www.nicovideo.jp/mylist/30497131

原作:じん(自然の敵P)様

『人造エネミー』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm13628080 
『メカクシコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm14595248
『カゲロウデイズ』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm15751190
『ヘッドフォンアクター』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16429826
『想像フォレスト』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm16846374
『コノハの世界事情』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763 
『エネの電脳紀行』
『透明アンサー』
『群青レイン』
『キミノメヲ』
『如月アテンション』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17930619
『チルドレンレコード』:http://www.nicovideo.jp/watch/sm18406343
ほか

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投稿日:2012/07/22 17:41:08

文字数:781文字

カテゴリ:小説

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