今日の朝ごはんは、ネギ丼だった。
白いご飯の上に細かく刻まれたネギがまぶされていて、その上にはブツ切りにした長ネギが沢山のせられている。
ネギにネギを重ねただけのこれは、とても名前を付けていい物ではなかった。
基本が生ネギだからか、とてもネギ臭く、味付けは醤油が合っているようだ。

昨日のご飯も、ネギ丼だった。
食事の当番を彼女に任せたのがそもそも間違いだったのか。
しかしそれを言い始めたら、共同生活のなんたるかを、個人の趣味や嗜好を否定してしまうことになってしまう。
だから、出されたモノは手を合わせて、「いただきます」と言うのが正しいのだ。

正しいのだ……と、思いたい。
そう、重いたい。ネギ丼は重い痛い。もう食べたくない。


うっかり本音が出てしまったが、翌日もネギ丼だった。
彼女は今日も笑顔で、ネギを刻んでいる。緑髪の女の子。

自分は味覚にこだわりがある方でもないが、ネギに醤油をかけだだけのご飯は、栄養面でも色々と問題がある気がしていた。
ただ、自分の他にもそれを食べ(させられ)ているのが何人も居るのだが、他の皆は誰も文句を言わないのだ。
少し涙目になっている気もしたが、緑髪の彼女のことを気遣って、言わないのだろう。
なんて出来た後輩なんだろうか。


ネギ丼、ネギ丼、本当にずっとネギ丼だった。


……そんなある日、ついにネギだらけの日々に耐えられなくなって、俺はネギを焼こうとした。
もう生ネギは耐えられない。ネギ臭くて、正直勘弁して欲しかった。ネギを焼けば、少しは風味も効いて美味しいんじゃないかと思っていた。

だが、緑髪の彼女に「ネギがかわいそう!」と言われてしまい、泣かせてしまった。
泣かせるつもりではなかったが、ネギが可哀想と言われては、何も言えない。
食べ物を粗末にすることは、一番いけないことだ。

自分以外の者たちは、もはや魚の死んだような目をしながら口を動かしている。
きっと言いたいことも沢山あるんだろう。言いたいけど言えない、そんな世の中だ。

緑髪の彼女はネギ以外の食べ物をを知らないから、毎日ネギ丼なのだろうか。
ひょっとしたらネギより美味しい何かを用意すれば、きっと彼女は、その美味しいものにネギを足して、新しいネギ丼を作るに違いない。


最近は、ネギを見るだけで手が震えてきた。
誰か、彼女を止めてくれ。



END

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毎日ネギ丼 [短編小説]

ネギが大好きな子が、毎日ネギ丼ばっかり作るので、周りの人が大変だという話です。
*この短編小説は、コラボの企画案として書いたものです

閲覧数:40

投稿日:2011/02/20 06:04:39

文字数:993文字

カテゴリ:小説

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