＃４０



カイトとミクと反対方向に向かったメイコは、一人奮戦していた

メイコの叫びに共鳴するかのように【紅歌】が、バグを吹き飛ばしていく


「もう！しつこいのよ！！」


力任せにブンッと刀を振ると、衝撃で敵が海岸の波のようにサーッと吹き飛ぶ



しかし、次の瞬間だった

周囲のバグたちが、ぴたりと行動を止めた


「な、なに……？」


メイコは気を緩めずに刀を構える

ところが、たくさんいたバグたちは何もしていないのに全て崩れ落ちた


「どういうこと……」


メイコが不思議に思いながらも、刀を鞘に納めようとした……その時だった


目の前にあの例の黒い塊があらわれる

メイコが慌てて距離を取って、刀を構える


【また……会いましたね。メイコさん】


そして、その暗闇の中から一人の女の子があらわれた


「！？……あなた……ミクじゃないわね」


そこにあらわれたのは、ミクの姿形をした彼女だった


「いいえ……私はミクです」

「騙されないわ！そうやって私たちの関係を崩そうっていうなら、それは無意味よ！」


メイコが、どこからどうみても「ミク」と思われる彼女にそう叫ぶ


「…………」


無表情で何も答えない彼女


「あなたには、聞きたい事が山ほどあるわ」

「……なんでしょう。答えられる範囲でお答えします」


まさかの返答にメイコの警戒度がさらに上がる


「まず、あなたは誰？どうしてミクと同じ格好しているの！」

「……ですから、それは先ほど申した通り、私はミクなのです。見た目……どうしても気になるのでしたら、こうしましょうか？」


彼女はそういうと、自分の腰にぶら下げている刀を抜いて、長い髪をスパッと切り落とした

そして、メイコよりも少し長い位の髪の長さになった


「どうですか？これで同じ格好ではないですよね？」

「あなた……馬鹿にしているの？！」


メイコが彼女を睨む


「まだ納得できませんか？……では、名前もミクではなく、【シルル】とでも名乗りましょうか？」


彼女は無表情でそういった


「くっ……馬鹿にして……。じゃ、あなたの後ろにあるその黒い塊は何！」


メイコはイライラを隠せない


「これですか？……これは【ゲート】といいます。この世界のデータを歪ませて発生させるもので……そうですね……簡単にいうと【入口と出口】でしょうか？」


彼女は一切表情を変えずに淡々と話す


「人はもちろん、声や攻撃なんかも好きな場所に発生させることが可能です。よかったら、メイコさんも使ってみますか？」

「ふざけないで！」


メイコが怖い顔で彼女を見るが、彼女の表情は何も変わらない


「ふざけてませんよ。全て本当です。それにこれをつくったのは、元々……外の人間たちですから……」

「え？」


外の人間がつくった……

この時、メイコの中にあった外の人間に対する不信感が、徐々に大きくなりつつあった