Rafe a-ll-byss...
鏡に映った王の姿に


 城に戻ったら、迷うことなく彼女の病気について調べていた。時間があれば場内にある書庫で調べれる限りのことを調べたし、わたしのかかりつけの医者(勿論国王を見るのだから腕も信頼も確かだ)に調べてもらうよう遠まわしに頼む。そもそも、彼女は他の人間に命が短いなどいうことは一切言ってないのだ。本来なら、体の弱い歌姫の世話をする従者や家族のみが知るぐらいだろうと思う。それをわざわざ話してくれたのだ。だからこそ、秘密にしなくてはいけない。
(……それに)
 恋心を抱いてるなんて、そんなことまでばれてしまうかもしまったら。恥ずかしいのもあるが、女王の座を手に入れようとする者は邪魔な者として扱うだろう。小さな国といえど、賢帝の国として知名度はあるのだ。万が一に暗殺なんて事があったらと考えると、怒りが生まれた。どんなことがあっても犯人を見つけ出し、罰を与える。それでも足りないかもしれない。とにかく、そちらにも注意しなくてはならなかった。
 ひそやかに行われる調査は難航した。もとより、わたし自身が業務で忙しいのだ。さらに、空いた時間は、彼女の側ですごしたいと想ってしまう。また、と、約束した。だから、だからこそ、逢いたい。1日空くようなことは滅多にない。逢いに行けるほどの時間があるときは必ず行っていた。逢えないような短なひとときは、病気についてに徹(てっ)した。
 かかりつけの医者は知り合いをたどって歌姫の担当医に接触したらしい。容態を聞きだし、処方を思考しているようだった。定期健診で、彼女の病名症状と一緒にその内容も教えてくれた。
 全く、判らなかったらしい。
 …………………………………………使えぬ。
 言い換えれば、それだけの難病ということか。医師にすら判らないという病気。もちろん、治療法も判るわけがない。しかし、こうしている間にも進行は止まらない。
 逢いに行き、今調べてるからと、彼女に言った。それしか、言えなかった。
 返ってきたのは、ありがとうという言葉と礼だった。笑顔はなかった。優しくて静かな礼をしきったところで、ゴホッという音が耳に届いた。
 わたしは苦しかった。でももっと苦しいのは目の前の少女だ。
 願う。
 どうか、これ以上進まないでくれと。
 どんな方法でもしてみせるから、そんな顔をしないでほしい。
 でも、見つからない。それがたまらなく嫌で、顔を伏せた。
 どうしたら。どうすれば。
 答えはあった。初めの方は、そんなことをする必要もないだろうと思っていた。でももう、どうしようもなかった。誰にも知られずにするのはとても難しいだろう。故(ゆえ)に出来るだけしたくないとしていた考え。
 でも、そうしなければきっと救うことは出来ない。
 長考の上に出た結論を戻ってきた王室で、呟く。

「東の国へ連絡を」

 正しかった選択かは、わからない。


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或る詩謡い人形の記録 6 -賢帝の愛玩-

  ※この小説は青磁(即興電P)様の或る詩謡い人形の記録(http://tokusa.lix.jp/vocalo/menu.htm)を題材にした小説です。
 
ヤリタイホーダイ(http://blog.livedoor.jp/the_atogaki/)というブログでも同じものが公開されています。
こちらの方が多少公開が早いです。
 
 
始 http://piapro.jp/content/0ro2gtkntudm2ea8
前 http://piapro.jp/t/twLB
次 http://piapro.jp/t/N7Uj

閲覧数:58

投稿日:2011/03/01 01:12:49

文字数:1,258文字

カテゴリ:小説

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