黄昏時の街の片隅
家路を急ぐ、娘が一人。
それを眺めて黒猫
ニタリ
「おいで」「おいで」
と、手招き誘う
奇妙奇天烈 驚天動地
今宵限りの見世物小屋は幕開け間近
「ほら、寄っといで」
老いも若きも
「そら、見ておいで」
鞭 振り 打つ
火の輪の鬼
花を散らし、潜る天女
玉 乗る 蛇
車輪廻し
天使穿つ、道化の舞
カナリア拍手でお出迎え
篝火揺らめく檻の中
ご用意しましょう、貴賓席
「心ゆくまで ご覧あれ」
月と太陽、傍ら添えて
一番星のジュースは如何?
「とっておきだよ?」
「誰にもヒミツ」
蠍はこそり 手招き誘う
正直者と天邪鬼
悪魔縛る、綱を渡る
ジャグリングで泣いた猿は
人魚の咽喉、吊し上げた
紫煙を燻らせ、夢 歌う
鎖の奥から眺め見る
景色はどうです、お姫様?
「心ゆくまで 楽しんで」
宙 飛び交う
驢馬がお辞儀
歓喜に沸く、テントの外
一番鶏が嘶いた
「とびら、しめろ」
「とけい、とめろ」
終幕。
合図が鳴り響く
「いやいや、仕舞はお預け!」
と、観客一同 アンコール
見世物一同 張り切って
鎖に隠れた 貴賓席
視線が集まる 檻の奥
お次は誰だと夢が問う
閉ざした瞼、焼く照明
カナリア拍手でお出迎え
「心ゆくまで 楽しんで」
―――――*―――――*―――――*―――――*―――――
たそがれどきの まちのかたすみ
いえじをいそぐ むすめがひとり
それをながめて くろねこにたり
おいでおいでと てまねきさそう
き(みょ)うきてれつ (きょ)うてんどうち
こよいかぎりの みせものごやは
まくあけまぢか ほらよっといで
おいもわかきも そらみておいで
むち ふり うつ ひのわ のおに
はなを ちらし くぐる てん(にょ)
たま のる へび (しゃ)りん まわし
てんし うがつ どうけ のまい
かなりあ はく(しゅ)で おでむかえ
かがりび ゆらめく おりのなか
ごようい しま(しょ)う きひんせき
◎こころ ゆくまで ごらんあれ
つきとたいよう かたわらそえて
いちばんぼしの (じゅ)ーすはいかが
とっておきだよ だれにもひみつ
さそりはこそり てまねきさそう
(しょ)う じき もの とあま の(じゃ)く
あくま しばる つなを わたる
(じゃ)ぐ りん ぐで ないた さるは
にん(ぎょ) ののど つるし あげた
しえんを くゆらせ ゆめうたう
くさりの おくから ながめみる
けしきは どうです おひめさま
◎こころ ゆくまで たのしんで
(ちゅ)う とび かう ろばが おじぎ
かんき にわく てんと のそと
いち ばん どり がいな ないた
とびら しめろ とけい とめろ
(しゅ)うまく あいずが なりひびく
いやいや しまいは おあずけと
かん(きゃ)く いちどう あんこーる
みせもの いちどう はりきって
くさりに かくれた きひんせき
しせんが あつまる おりのおく
おつぎは だれだと ゆめがとう
とざした まぶたを やくらいと
かなりあ はく(しゅ)で おでむかえ
◎こころ ゆくまで たのしんで
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