「退(の)いておくれよ 急ぐんだ」
丘の上へと続き道を 橙(だいだい)猫が駆けて行く
「どうしたんだよ ポストマン」
かかる声に居は尻尾を振った
「ようやくあの子に告白だ!」
黒い鞄に詰め込んだ
他人(ひと)の想いを繋ぐ道 橙猫が駆けて行く
「お待たせしました マドモアゼル!」
応える声に尻尾が揺れた
どうか上手く行きますように
近くの君へ 遠くの彼へ
溢れる心の籠もった手紙
近くの君と 遠くの彼と
繋げない手の代わりにしよう
古い鞄に籠められた
過去の想いを守る道 橙猫が駆けて行く
「いつもありがとう ポストマン」
笑顔の声に尻尾も笑う
どうか明日(あした)も聞けますように
夕日色の猫は言う
「僕に託してみませんか?
声にならない 言葉 ころり 転げ落ちてしまう前に」
近くの君へ 遠くの彼へ
零れた涙で湿った手紙
近くの君に 遠くの彼に
届かぬものと諦めないで
近くの君へ 遠くの彼へ
きっといつか 願いの手紙
近くの君と 遠くの君と
繋げない手の代わりにしよう
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