何だか親切な変態さんのお陰でようやく携帯が生き返った。随分時間が経っちゃったからゼロも怒ってるかも知れない…。

「…はい。」
「あ、ゼロ?ねぇ今何処?ごめん、充電切れてて…。」
「中央病院…ごめん、ちょっと電話切る…。」
「え?ゼロ?もしもし?!」

冷たく言い放つとあっさりと電話は切られてしまった。

「どうかしたんですか?」
「…反抗期…?」

でも中央病院に居るって事は、事故にでも遭ったのかな?だったら行った方が良いわよね?

「中央病院に居るって言って切っちゃった。」
「事故か何かですか?早く行った方が…あ、駅まで送りますよ。そこからタクシー
 使った方が早いです。」
「うん…。」

辺りはすっかり暗くなってて、お酒や人の匂いが漂っていた。夜にこの辺りは通らない様にしてるので少し恐い。変態さんは歩き慣れているのかスタスタと進んで行く。私は取り敢えずぶつからない様に歩くのが精一杯だった。

「蕕音頼流様ですね?」
「え?」
「闇月家よりお迎えに上がりました。」

スーツ姿の人が数人で変態さんを囲んでる。え?警察?もしかして逮捕?本当に危ない人だったの?

「彼女を駅まで送ってからで良いですか?」
「判りました。」
「自首するなら早い方が良いと思うわよ。私なら一人で大丈夫だから…。」
「違いますよ。」

変態さんとスーツの人と一緒に物々しい雰囲気で駅に着いた。色々お世話になったしお礼は言った方が良いわよね。

「変態さん。」
「あの…変態じゃなくて頼流と言います。」
「変な名前…。」
「よく言われますよ…それじゃ、お気を付けて。」
「有難う頼流さん。」

タクシーに乗って中央病院に着いた。表の出入り口はもう閉まっていて、裏の救急に回るとそこでは医者や看護師が忙しなく動いていた。

「あ!…もしかして…レイさん?」
「え?…どちら様で?」
「えっと、ゼロさんのお姉さんですよね?双子だって言ってたからそうかなって。」
「ゼロに何があったの?病気?それとも怪我?ねぇ、ゼロは何処?」
「あのお兄さんは何とも無いよ。」
「クロア…聖螺ちゃんは?」
「打ち身と捻挫。頭と手足を数箇所切ったけど命に別状は無いって。」
「良かったぁ…。」

話が全く見えない。取り敢えずゼロは大丈夫みたいだけど…。

「レイ?」
「ゼロ!ねぇ、どうしたの?何があったの?」
「ごめん…先、帰ってて。」
「ゼロ…?」

真っ青な顔でゼロはまた廊下の奥に消えて行った。あんな顔、初めて見た…。

「あの…。」
「どう言う事?」
「俺達が説明するよ。判んない事だらけだけど…。」

神妙な面持ちの二人に促されて取り敢えずロビーに向かった。

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コトダマシ-18.自首するなら早い方が-

指名手配犯は自首しても罪が軽くならないらしい

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投稿日:2010/10/16 09:07:00

文字数:1,118文字

カテゴリ:小説

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