あなたが自宅にいるまさにその時
電話は鳴り響く受話器を上げる
ガイダンスは何かを知らせる
ノイズ混じりの音声に無意識に承諾

「コレクトコールでありがとう
これからあなたの宝物を頂くわ」
理解するより前に電話は切れる
何が起こったか分からないまま

お金か財産か物か人かなんだろう
焦って走って処分と対策の限りを
警備も厳重に盗聴も万全に
そしてその時は必ずやってこない

「大切な時間を奪っただけだから」

相手が仕事をしているまさにその時
内線が鳴り響く受話器を上げる
アナウンスが何かを告げてる
エコーが酷くて切ろうとした瞬間

「コレクトコールでありがとう
何も問わなければ承諾と見なす」
認識する前に電話は切れてる
何を言っていたのか整理できずに

うろ覚えで朧気な記憶を辿る
「あなたの何もかも奪う準備中」
血の気が引いてすぐパニックになる
そしてその時は必ずやってこない

「大切な冷静さを奪っただけだから」

ターゲットが睡眠中でも容赦なく
スマホが爆音で叩き起こされる
加工音で誰かが喋ってる
イタズラかと切ろうと構えたら

「コレクトコールでありがとう
誰かに言ったら承諾とします」
判断する前に電話は切られた
自分の意志を立て直す前に

片言の声を並べ直してみる
「取り返しの付かない贈り物」
不穏な胸騒ぎ安全地帯へ退避
そしてその時は必ずやってこない

「大切な物が何か分かったから」

彼女の声は常に違って誰かに似てる
狙われたら最後予想だにしない標的
心理の闇突き周到な用意で
大切な物を奪い去っていく

そしていつしか呼ばれた通り名
「コレクトコールの魔女」

今日もどこかで鳴り響き
誰も知らない標的が消える