何かを握り締め、走るその少年の瞳は、暗く、虚ろだった。
偽善をはたらき、罪を犯し、他を傷つけ、時に殺す。
全ては、生き残るために。彼は孤児で、薄汚れた裏道に住んでいた。
「また殺した」
少年はポツリと呟き、立ち止まって近くの壁にもたれかかった。右手に握り締めたものは、一週間は食事に困らないほどの金。空腹だったはずが、少年は食物ではない何か、穢れた何かが自分の中を満たしているような気がして、食欲がわかない。
今までも、生きるために人を殺してきた。殺すたびに、考える。
僕が生きるために、何人死んだ?
僕が死ねば、何人生きているんだ?
しかし、所詮虚言。これぽっちも後悔なんてしていない。現に僕は生きていて、奪った金でパンを買う。
溢れ出くる自らの涙さえ、少年には罪に汚れた黒に見えた。
「待て…何がほしいんだ…?」
「金だ」
少年が次に襲ったのは、町の小さな小さな骨董屋。老いぼれた男が、必死に両手を振り、命乞いをする。そんな光景を、少年は冷たい目で見下ろしていた。
手には、ナイフ。
震えながら、老人は立ち上がり、ひとつの棚の引き出しを開けた。
少年の期待は、一瞬で萎えた。老人の取り出したものは、金ではなかった。
それは、美しい飾りがほどこされた、金の鏡だった。
売ればそれなりの金額にはなるかもしれない。しかし少年はその手間が面倒でならない。
「現金は?」
老人は、黙っている。黙って、少年に鏡を差し出す。
その目はまるで、哀れむようで。
「現金を出せ。殺すよ?」
冷たいナイフを、老人の首下に突き立てる少年。すると、老人は、ゆっくりと口を開いた。
「鏡を御覧なさい…今の自分がどう写るか…」
「無駄口を叩くな」
「そして知りなさい、罪の哀しさと愚かしさを」
「黙れ」
「その罪を、背負って…生きる覚悟は…」
「黙れッッ!!!!」
夜の骨董屋に響く、少年の鋭い叫び声。その刹那、月明かりに光るナイフ。
老人が床に倒れ、少年は呟く。
「また、殺した」
去り際に、少年は老人が握っていた金の鏡を見る。
そして思い出す、老人の言葉を。
「今の自分がどう写るか」
鏡を拾い上げ、少年は骨董屋を走り去った。
酷く歪み醜く見える。少年は思った。
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