・いろいろ捏造されています
・アドレ(ギャグ)の親世代設定です
・当然そういう繋がりになります


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語られずに済んだ後日談なんて、知らずにいた方がいい時もある。

あなたもやがてそれを知るでしょう。





<一人で遊んでろ!>





「・・・ふう」

私は重い桶を置いて溜息をついた。

王子は一命を取り留めたらしい。母さんや姉さんたちの会話からそれを知って、私はまた一人で泣いた。

よかった。
あの人が死ななくて、良かった。
ただ、その思いだけが私を安堵させた。

当然ながら王室警備隊は調査に乗り出した。王子の命を狙った犯人を見つけるために。
見つければきっと死刑なんだろう。だって相手は王子。次世代の王に対してナイフを振るった者なんて、許されるはずがない。


でも。


―――見つけて。



いつしか私はそう祈るようになっていた。

見つけて、相応の罰を下してください。
何の咎めもないなんて、私自身が耐えられない。

中の水を瓶に移し替え、一つ息をつく。何度やっても重さには慣れない、辛い作業。
また水を汲みに行かなければ、と振り返ったその時、兵士が私を取り囲むように立っているのに気付いた。
並の兵士じゃない。
ちらり、と視線を走らせればその所作に隙がないことがわかる。

「娘」

うち一人が淡々と声を出した。

「お前は王子の暗殺を企んだ、それに相異ないか」




あれ、もう気づかれたの?


意外だった。だって私に繋がるものなんて何一つ残していないはず。あの声の主が失策を犯すとは思えないもの。


「なんですか、突然何を根拠に!ふざけるのはおやめください!」

試しに語気を荒げみても、返ってきたのは無表情な反応だった。訓練はきちんとしているらしい。

「王子が覚えていらしたのだ、暗殺者の顔をな。直々に見つけてみせると意気込んでおられてね」

ぴくり、と肩が震えたのを感じた。
それが驚きから来たのか、喜びから来たのか、それは判断し難かったけれど。

「顔を覚えていた・・・!?」


そうか、私は全てをあの場所から消し切れたわけではなかったんだ。
唯一、彼の記憶だけは道しるべとなって私に続いていた。

道は、切れていなかったのね。



「王子!おっしゃっていた人相に似た娘を見つけました!」
「っ!」

私は焦った。だって顔なんてあの日のまま、王子に見られたらすぐに気付かれてしまう。でも焦りなんて表に出せない。表情に出すなんて私が犯人だと言うようなものだから。
そして、だからこそ兵達の行動を留めることはできない。

断罪は怖くない。寧ろ望んでいるもの。
でも王子に憎悪の視線で見られたら、私はとても傷ついてしまうだろう。
なんて身勝手な私の心。傷つけられたのは彼のほうだっていうのに。

「いかがでしょう、この娘ですが」

兵士の囲みを抜けた彼と視線がぶつかり、絡み合う。

かすかに王子が目を見開いた。


気付かれた。

私はそれを悟った。

王子はじっと私の顔を見つめる。
あの夜ならそれをどれだけ嬉しく感じられただろう。その目に私しか移っていない、あのダンスの時間がどれだけ素晴らしいものだったか忘れられるはずがない。
でも今、彼は私を断罪するために私を見つめている。あの優しかった瞳を鋭く輝かせながら、差異を見逃すまいとするかのように。
彼はゆっくりと、確かめるように私を見つめながらこちらへと歩み寄る。


「ああ、間違いない、彼女だ」

その言葉に周囲の衛兵がかすかに殺気を帯びた。
それは別に気にはならない。
でも。

「・・・あ、その・・・」

近づいてくる真剣な青い瞳に心が竦む。
どうしよう。怖い。
やっぱりこの人に憎まれるのは―――嫌。

怯えのまま半歩身を引くと、がし、と王子に両手を掴まれた。
彼はそのまま真剣な顔で口を開く。











「結婚してください!」











・・・・・はい!?







え、えーと。

今何て言ったの?聞き間違い、だよね?

その場の人間は王子以外もれなくフリーズした。
それはそうだ、だって予想外すぎる。
言葉を失った私に、彼は真剣なまま言葉を続けた。




「貴女が僕の運命の女性だ!」







・・・・

この人、大丈夫かなあ?

・・・じゃなくて!

「お、王子何言ってんですか!?」

ようやく口がきけるようになった部下が開口一番に悲鳴を上げる。

「この者はあなたの命を狙った、犯罪者なんですよ!」
「関係ない!」

びしぃ、と王子が言い放つ。


「僕は今まであんな貫かれるような恋をしたことはない!」



あったら怖い。本当に刺したんだから。



「あの時高鳴った鼓動が教えてくれた。これは恋!運命なんだと!」



拳を握る王子が・・・どうしてだろう、遠い。



知りたくなかった。何この勘違いくんは。
というかあれだけのことをされて恋だの何だの言えるかな普通!
そういえば今日の夕飯何にしよう。
ついに頭が現実逃避を始める。でも彼は容赦がなかった。


「お嬢さん」
「は、はい」
「今から式を挙げに行きましょう」
「はい・・・・って、はいっ!?」


え、今からってどういうこと?
まさか。
まさかまさか、
恐る恐るその顔を見つめると、彼はその綺麗な顔に輝くような笑顔を浮かべる。
やっぱり綺麗な人。

優しくて、綺麗で、純真で・・・理想、ではあるんだけど、


でも待って、ちょっと待って!


ぐい、と手を引かれて頬が引き攣る。
待って、何この展開。こんな終わり方なんてないでしょう、普通は。いや、確かに罰してほしかったけどでもこれはちょっと、というかこれは罰なの?あれに耐えたご褒美なの?




「さあ行きましょう、教会へ!」

「・・・い」



私は思わず絶叫した。
罰だろうが褒美だろうが、どっちにしろろくなものじゃないことは間違いない!








「いやあぁぁ――――――――――っ!?」









何と言うか、もっとしっかり刺しといても良かったかもしれない。







そしてサンドリヨンと王子は末永く幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。














「「いや、それはない」」

僕とリンはユニゾンで答えた。
目の前でお父さんが微妙な顔をするけど気にしたくない。いや、気にしてやるもんか。


とりあえずお父さんとお母さんの馴れ初めを聞いた僕の感想はこうだ。

―――何、その迷惑な人。

お母さんもよく離婚しなかったなあ、というかそんな衝撃的な過去は聞きたくなかった。お母さんも気になる立ち位置だけど、それを遥かに凌ぐお父さんのインパクト。もとからダメな人という印象のお父さんだったけど、これで評価は決定した。


どMの変人だ。


隣では話を振ったリンがかなり引いている。まあきっと童話みたいな恋を考えていたんだろうから予想の斜め上だったんだろうな・・・
今仲が良いところを見ると相性は良かったんだろうけど、結婚ってそんな衝動的にするものじゃないよね。常識的に考えて。
というか名前も知らないんじゃないかそれ。
名前も知らない相手と結婚とか、それはさすがにありえないよお父さん!?

「・・・えと、結婚してからどうだった?」

引き攣った顔で尋ねるリンに、お母さんは難しい顔で溜息をついた。

「世界が変わったわ」

でしょうね。

「恋は人を変えるものだからね」
「恋が私を変えた訳じゃないんだけど?」
「え、じゃあ何が?」


お前の性格が、だよ。あと地位。
多分全員がツッコミを入れて、でも誰も口には出さなかった。
えー、何が変えたの、何が?教えてよー、と年よりも遥かに幼い仕種をするお父さんを無視してリンとこそっと囁き合う。


「レンもあの血を引いてるんだよ」
「リンもね」
「やだ」
「僕もやだ」


はあー、と落とした溜息もユニゾンだった。以心伝心の一種なのかな。



とにかく、お母さん、お疲れ様でした。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

こんなサンドリヨンは嫌だ(後)

なんという変人

そして子世代もアブノーマルっちゃアブノーマル


ファミーユは個人的に良かったです。
アドレは結構サンドリヨンでなくカンタレラとも繋げられたりするけど、それもいいなあ。勿論それぞれ単独の世界がオフィシャルだと思ってますが。

まあ、こんな親世代。でもきっとうまくやってると思います。

閲覧数:2,506

投稿日:2009/11/22 01:06:02

文字数:3,356文字

カテゴリ:小説

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  • 翔破

    翔破

    ご意見・ご感想

    あれタグが増えている!?何が起きた!

    >Ж周Ж さん
    ラストまでシリアスだったらどうしようかと思いました!
    まあこのサンドリヨンはあくまで「あのアドレの親世代」のサンドリヨンなので、いつかもうちょっと真面目に書きたいです。
    友人と馬鹿なパロディばっかり考えていたらこんなことに。どうしてこうなった・・・?

    楽しんでいただけたなら何よりですw

    2009/11/22 20:21:25

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