いっぺんに色んな話を聞いて頭が破裂しそうだった。それと同時にある事に気付いた。

「…クロアは?」
「え?…あ、そう言えば…彼どうしてるの?適合者として此処に集められては居ないわよね?」
「凱瑠クロアだけじゃない、此処に居ない適合者はおそらく適合者覚醒のポイントを回避してる。」
「回避?」
「言魂を使う必要の無い、あるいは使えない状況って事だ。」
「連れて来るだけじゃ駄目なのか?」
「ん~…凱瑠クロアの覚醒ポイントは…ん?…ん~~?」

キーを叩く手を止めて首を捻りながら幾徒さんがモニターを凝視していた。

「ゼロ。」
「はい?」
「お前クロアに会った時の事思い出せるか?聖螺に会ったのと同じ日を差してるんだが…。」
「聖螺に会った日…ああ、何かいきなりラリアットされたな…。それが何か?」
「そこ行って来い。ああ、鈴々も。」
「…は…?」
「このインカムとスコープ付けて、えーっと聖螺、レイ、芽結三人はこっちで出力に専念、頼流は
 システムサポート頼む、ポイントと起源行動はこっちから指示するからなるべく人には
 接触しない様に。」
「ちょ、ちょっと待てって、いきなり意味解らない事を…。」

詰め寄るゼロさんを私はポカーンと見ていた。え?え?そこに行って来てって…私がゼロさんや聖螺ちゃんに会ったのって過去よね?って事は私もしかして、もしかしなくてもタイムスリップするの?!

「行く!私行きます!」
「良し!良い返事だ!見習え、ゼロ。」
「ちょ…お前っそんな簡単に…!」
「だって行かないとクロアは言魂使えないし、クロアが居ないとえっと…コア…さん?も助からないし
 流船君だって取り戻せないし…それから…私怒ってるの!」
「鈴々…?」
「だって、だって流船君消されちゃったんだよ?事情とか難しい事とか判んないけど、人が
 消されたんだよ?そんな事する権利誰にも無い…私…『脚本』打った奴に怒ってるの!」
「…鈴々さん…。」

芽結ちゃんは堪え切れなくなったらしい涙をポロポロ零していた。芽結ちゃんが泣き虫な事も、ぬいぐるみが大好きな事も、頑張り屋だけど強がりな事も、流船君が教えてくれた。自分だって重傷なのに私やクロアやヤクル君のお見舞いに来てくれた。短い間だけど私達は友達だった。

「はぁ…判ったよ。俺だって怒ってない訳じゃないからな。」
「ゼロさん…。」
「それで?指示通りに行動して行けば良いんだな?」
「ああ、座標計測を入力したら3人はゼロと鈴々に言魂を使用開始してくれ。ワードは…
 『時間跳躍』だ。」

インカムとスコープを付けるとゼロさんは小声で呟いた。

「大丈夫かよ…ったく。」
「貴重な体験って事で。」
「…前向きだな、羨ましいよ。」

『装填完了』

「よし…転送開始。」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

コトダマシ-69.貴重な体験-

ちょっと行ってみたい

閲覧数:67

投稿日:2010/12/08 22:49:42

文字数:1,155文字

カテゴリ:小説

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